C8H7N3O2-luminol(ルミノール)ー

天翔 凪咲

★Prologue-プロローグ-

 廃ビルの屋上から見下ろすのは、四つの瞳。

 闇夜に下まで見通せる視力の持ち主たちは、ちょうど雲間から覗いた月の光を反射させたかのように瞳を輝かせている。


 風に煽られた その髪が、頬にかかるのも気にしていない様子だ。


 男A「綺麗だなぁ……。殺したい念に駆られるよ」(以下A)

 男B「だめだよ」(以下B)

 A「オレの飾物ものにしたいんだ」

 B「それは僕もそうだよ。でも彼女はだめだ」

 A「……?」

 理由を問うように隣に視線を流す。

 B「彼女は、からこそ、より価値があるのだから」



 ふたりの視線の先にひとりの少女。

 自分の命に関するり取りがどこかでされているなんて、露ほどにも知らない。


 平凡で、日常の些末な幸せで十分満足できるような、目立たない存在。



 でも、いつだって、ストーリーは、何かしらの変化から始まる。




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