第50回「この思い、決して忘れるな」/魂

 関連企業全てを上げて行う追悼式典の帰り道、ご飯を食べて帰ろうかと相談してたらふいにWWIIの話に戻る。

「ねえ、晶。今年で戦後何年なの?毎年うちは社を上げて追悼式してるけど、詳しい事知らないんだよね。学校で習う範囲と、うちの会社の新人教育で習う事しか」

「あー、今年で七十年を超えてるらしい、僕もそんなに詳しい訳じゃないからさ、新人教育も学校の教える範囲もそんなに変わらないよね、そういえばさ、セナさんや、この会社って創業何年なの?」

「何年なんだろう、一応会社の年表には江戸時代には前身の問屋が有ったみたいだけど、そこから色々とあって今の形に落ち着いたのはこの昭和初期みたいだよ」

 何気なく、二人共うちの会社についてそこまで詳しくない事が発覚し、今度姉貴に聞こう、そう決めて、話は戻る。

「戦前からある上に、江戸時代には前身の問屋がある。それってさ、創業百年超えてるんじゃ?」

「あー、そうかもしれないね。戦後の度々あった大恐慌期に経営危機に陥ったことがないうちの会社、何気に凄いんじゃ?」

「それは、この会社を守ってくれた魂が居たから経営危機に陥らなかったんじゃ?」

 オカルトを信じるわけではないが何故か戦後の反動恐慌で落ち目に合わず、岩戸景気で大企業に名乗りを上げ東証二部から一部に昇格し、バブル崩壊時に土地の投機でダメージを軽くして、生き抜いてきた。

 偶然の連続なのかも知れない、だけどうちの会社の廊下では不思議な事が度々起こるっていう噂も流れてる。

「決して好景気とは言えないこの時勢に年商が常に右肩上がりなのは、此処を守ってくれている魂のおかげなんだね」

「そうだね、『この思い、決して忘れるな』って経営理念にあるだけあるよね」

「あれ、誰が決めたんだろうね?」

「姉貴が調べたらしいけど、いつの間にか経営理念の額の中に入ってたらしい」

「これもオカルトか、それとも……」

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