≪曲名:語るなら未来を≫

 今日は結婚式の打ち合わせで衣装を決める大切な日。

 そんな日に、晶はどうしてか僕を怒らせたいようだ。

「ごめんってば、セナにタキシード着て見せてほしかっただけで、悪気はないんだよ?」

「それで、僕にタキシードを着せてどうしたいんだい? それとも何かい? 僕に胸がない事を馬鹿にしているんだろう?」

「セナ、僕にそんなつもりは毛頭ないんだ。ただね、セナに似合うと思ったから……ごめん」

「まぁ、披露宴の余興で僕らが着ている物がお互い逆なら面白いかもね? 僕がタキシードを、晶がドレスをってすれば、お互いがお互い楽しめるし、違和感もなさそうだし?」

 そこからはとんとん拍子で着る衣装が決まって、結婚式での僕はプリンセスラインのシルエットを持つシンプルなドレスを着る事になったけど、逆に晶は披露宴でエンパイアラインシルエットのパステルピンクカラードレスを着る事になった。

 そんなにふわふわしていなくてもいいと思ったんだけど、せっかくの記念だからと一切晶が譲らず、着せられることになった。

「式は何時にする? 定番的に6月?」

「えへへ、セナ。ありがとうね。時期はどうしようか……」

「晶の好きな時期と好きな日に合わせるよ。晶の方が忙しいし、ね?」

「ありがとう、でもこういう時ぐらいはセナの希望でもいいと思うよ?」

 僕らも忙しすぎて、プランナーの人も僕らに合わせて動いてくれたんだけど、流石にドレスとタキシードを決める時だけは二人で来ていただいて、決めてくださいと言われてしまった。

 ≪語るなら未来を≫をモットーに結婚式の様々な事柄を決めていきつつ、招待客リストの選別も始めなきゃっていう悩みが増えた。お互いがお互いアイドルをやっているために、人付き合いが増えて、呼ばないと失礼な人もいれば、呼んだら失礼の方も居るから暫くの頭痛の種になりそうだ。

「そういえば、セナは同業以外で何人ぐらい呼ぶの?」

「十人も居ないんじゃないかな? ほとんどこの仕事始めてからの知人だから。そういう晶は何人ぐらい呼ぶのさ?」

「うーん、僕も十人ぐらいじゃないかな?」

「なんだ、晶も僕と同じじゃないか、お互い一般の友人少ないねぇ」

「この馬鹿みたいに忙しくて不規則な生活に付き合ってくれる友人はやはり同業が多いからじゃないかな?」「さ、もうちょっとしたら僕は撮影行かなきゃならないから先行くね? 後で晶自分でこれかな? っていうウェディングドレスの試着した写真送ってね! じゃ、プランナーさん、ありがとうございました。また次揃う時迄に式の日決めて来ますねって、電話来ちゃった。晶またね! バイバイ!」

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