第574話 10名の女魔術師

貴族と先に会おうと思ったが、意外と10名の女魔術師が素早くやって来た。


「マスター、お連れしました。」


クシーさんがそう言うが、早すぎだ?

何処か近くにいたのか?


「ゲートですわ。」


それだけじゃないだろうと思ったが、

「私の情報網を駆使致しました。彼女らの居場所がゲートの設置場所から近かったのが幸いしました。」


成る程、この10名はゲートの設置してある場所の近くにいたのか。

まあ、バルトサール預かりだったからな。彼のいる場所はゲートが近いから・・・・って館の近くにいたのか?


すると、10名のうちの代表?が一歩前に出る。

「ご領主さま、本日は何か私達に御用がおありとお聞きし、取り急ぎ参りました。それと・・・・遅まきながら、私達を解放していただき、感謝いたします。」

俺はその女性を真っすぐ見る。

嘘偽りのない目・・・・だと思う。

「まあそれはいいんだ。あのまま敵対されていてもな。それに、あの2人と共に、洗脳させられていたのだろう?」


俺は代表の女と話す。


「ですがご領主さま、私達は取り返しのつかない大罪を犯してしまいました。人を沢山・・・・殺めました。」

「・・・・兵士以外も殺したのか?」

「いえ・・・・私達は敵対した軍と戦いはしましたが、民衆には手を出しませんでした。何せ、魔力を温存しておく必要があり・・・・その、言いにくいのですが・・・・”民衆如きに貴重な魔力を使うな!”と言明されており・・・・結果虐殺には至らなかったのでございます。」


俺は一応その事は聞かされていたが、念のため確認する。

他の女の魔術師もうなずいている。

「・・・・まあそれに関しても、今はいい。バルトサールに任せてるからな。そこでという訳じゃないが、君らを呼び立てたのはな、君らの今後の身の振り方なのだよ。」


「身の振り方・・・・ですか?私達は戦犯として処理されるか、パースメース帝国へ強制送還されるものと思っておりました。」

「それは考えたんだがな、君らは洗脳させられ、自らの意思とは無関係に争いに巻き込まれた。だが、家族や身内を殺された人はそんな事は関係ない。このままパースメース帝国へ戻しても、結果は良くならないだろう。憎しみを増す結果になるだけだ。」

困惑する表情をする女性。


「それに、君らをこのまま遊ばせる訳にはいかなくてね、どうするか色々考えたのだが・・・・」

「はい・・・・奴隷でしょうか?」

いや、奴隷にはしないぞ?

「・・・・俺の妻には、元奴隷商もいるから、それもありなのだろうが、それでは意味が無いと思っている。」

「奴隷ではない・・・・何か労働でしょうか?御覧の通り、私達は女性ですので、その、鉱山などのきつい労働は、身体が耐えられないと思います・・・・ですがその・・・・娼館でしょうか?あまり見た目と言いますか、スタイルには自信がありませんし、全員経験済みなので・・・・」

そうなのだ。全員知見寺と木滝に・・・・らしい。

「いや、そんな事は・・・・したい人がいるなら止めはしないが・・・・」


全員首を横に振る。そりゃあ避けたいだろうな。

「ではどうなさるおつもりでしょうか?」

「・・・・君らは攻撃魔法が得意と聞く。その特性を生かし・・・・知見寺達を中心とした2パーティのダンジョン潜りをしてもらおうと思ってね。」

「・・・・ダンジョン、でございますか?」

「ああ・・・・素材を集めてもらいたい。」

ますます困惑する10名の女性。

きっと厳しい沙汰があると思ってやって来たのだろうな。

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