第441話 本白水の説得

「しかし師匠、クランの管理なんて、僕にはできません!」


「本白水君、何を言ってるんだ?君は御国台高校で生徒会長だったんだろう?それに比べたら、クランの人数なんてほんのわずかだ。できないはずがない。」


「しかし、人の命を預かる訳ですから、生徒会長とは勝手が全く違います!」


なおも食い下がる本白水君。


「・・・・それを言うなら皆一緒の条件だ。俺にクランをどうこうする能力があると思うか?単にレベルが一番高かったし、言いだしたのが俺だったからなっただけで、元々人の管理なんてできる器じゃないんだよ俺は。」


俺は一息ついてから、再び話し始める。


「それに、本白水君、君はよくやってくれていると思うよ。黒い奴を纏め、クランの皆の面倒を実質君が見ているだろう?本当は元々大人の教師がしないといけない事まで。正直教師だった連中には任せられない。生徒を孕ませ、もしくは自ら考え無しに妊娠・・・・まあ個人の勝手と言われればそうなんだが・・・・この建物に住む事になった以上はそうはいかないはずだったんだ。」



俺は元教師の面々に向かって言い放つ。


「な!そんないい方はないでしょう?」


きつめの目つきの教師が言う。


「こう言っては何だけど、士門さんの言う事は一理あるわ。貴女がどこかで男を作って妊娠しようがそれはどうでもいいのよ。だけどね、士門さんが問題視しているのは、貴女がこの場に居る事を選択したにもかかわらず、この3年何の努力もしてこなかったでしょう?私も妊娠し、子を授かったから人の事は言えないかもしれませんけどね。」


「だって・・・・仕方ないじゃない!こんな何も知らない分らない場所に突然追い込まれ、不安で仕方なかったのよ!」


「別にそれを責めてないわ。私だって不安だったもの。だけどね、貴女も私もずっとこの異世界で暮らさないといけないのよ?いつまでも施しは受けられないの。だから士門さんは貴女方皆に一人でも生きていけるようになってほしかったのよ?それが・・・・かえって貴女方の為にならなかったかしら?それならごめんなさい・・・・それなら、ここから出ていくのも一つの手よ?」



うわ・・・なにげにきつい事を言うな佐和。


「え?ここを出ていく?それは私達親子に死ねって言ってるの?」


「馬鹿仰い!」


佐和が怒った。・・・・正直こんな佐和は見た事ないな。


「そう言う事を言ってるんじゃないのよ?貴女も母親でしょう?何としてもその子を育て上げる、守っていくっていう決心は未だつかないの?」


「あんたに何が分かるっていうの?早々と力のある男をゲットし、私達も近づこうとしたけど、ブロックしてたじゃない!仕方なしに・・・・」


これ以上はやぶだな。


「佐和、それ以上はいいよ。あんたもこんな事何時までも喋っていたくないだろう?俺自身もそんなに時間はないしな。御国台の召喚者は、別にここに留まる必要はないんだよ。事実独立していった連中もいるし、俺の領地で働いてる人もいる。まあ何もせずにこの場に留まり続けるのもありなんだけどさ。でも、それは何か違わないか?別に何がどうとかは敢えて言わないけど。人それぞれの生き方があるだろうし。何はともあれ、俺達はここを出ていく。もうクランとは直接関わる事はないだろう。そうは言っても、ここにも俺の店がある。それにクランと敵対するわけじゃないからな。どうしても必要なら力にはなる事もあるだろう。なので・・・・俺達は今日を最後にここを去る。まあ、まだ色々手続きもあるから、何度か足は運ぶが。」


一気にしゃべりすぎたな。でも言わないといけないからなあ。


「それと、あんたらが心配してる事の一つは、金の返済とここの建物の事だろうが・・・・もはや俺には必要が無い。金は、本当はあんたらの為には全額返済してほしかったが、無理というなら別に返さなくてもいい。俺が言いたい意味は分かるよな?それと、この建物はそのままクランの拠点として使っていいよ。本白水君に引き継いでもらう。まあ、その後本白水君がどう活用するかは・・・・そこまで面倒は見れないけど。」


ここまで言い終わったとき、イベッテがやってきた。


「あ、もしかしてまだ早かった?ギルドへ手続きしてきたし、アイテム持ってきたからクランの更新等は私が今から出来るから。」



ちょうどいいタイミングで来てくれたイベッテ。


ギルドへは勿論元々一緒に働いていた仲間がいて、久しぶりに会いたいから行っていたんだが、クランの手続きも頼んでおいたんだよ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る