第192話 冒険者の怪我

「それにしても・・・・派手にやられているなあ?」


 俺は馬車?の残骸に対してそう呟いた。

 馬車の男が反応する。


「あ?あああ!ああああああ!ど、ど、どどどどうしたらいいいんだああ?!」


 どうやら混乱しているようだ。こいつは放っとこう。

 俺は冒険者のリーダーっぽい奴に話しかける。


「なあ、あんた等全員生きているのか?」


 そう聞くと、冒険者のリーダっぽい奴は、


「あ、ああ、辛うじて死人は出ていない。だが、大怪我をしている奴が2人程いてな、身動きが取れないんだ。」


 見ると、残骸の向こうで寝かされてる人が2人いる。

 2人は女性だ。


「君等は護衛か何かだったのか?」

「ああ。最近この辺りで商人がよく襲われているらしく、ギルドから護衛の依頼が出ていてな、たまたまその依頼を受けたんだが・・・・」


 見ると男性3人、女性3人のパーティーらしく、倒れた女性をもう1人の女性が介護していた。


「血は止めたんだがな、骨が折れてしまってるのはどうにもならん。1人は両足をやられてな、さらに悪い事にもう1人は腰の骨がな・・・・最初にワイバーンにやられたんだが・・・・」


 ・・・・魔法で治るのか?


「君等の中で回復魔法を使える奴はいないのか?」

「はあ?冗談言うなよ?いる訳ないだろう、そんな奴。」

「何?何でいないんだ?」

「あんた大丈夫か?そんな貴重なスキル持ち、滅多にいねえよ!」

「そうなのか?」

「あんた知らないのか?そもそも回復魔法持ちなんて滅多にいないうえに、いたらいたで大方教会に引き取られ、そこで僧侶なんかになっちまって、冒険者にはならねえよ。」

「そうだったのか・・・・」


 俺は考える。

 俺の回復魔法は・・・・女神からのミッションコンプリートとか言うので貰ったやつだからな・・・・確か。


「わかった・・・・因みにその骨が折れた2人、骨の位置は元に戻っているのか?」

「ああ・・・・一応折れた足は真っすぐにして添え木しているし、腰の方も同様にしている。」


 ・・・・少し考えて・・・・


「シビル、ちょっといいか?」



「な・・・・何かな?」


 俺はシビルと内緒話をする。



「・・・・別にあいつらが死のうが生きようが関係ないが、そんな事してどうするの?」


 一応話し方が元に戻ってるな。


「このまま放っておけないだろう?」


「はあ?そのうち騎士団なりが駆けつけるだろう?」


「その間に強い魔物に襲われたらどうするんだ?」


「それはその、こいつらの運がなかったという事じゃないの?」


 ・・・・うーん・・・・何か価値観が違うのか?ドライな反応だな。


「まあいい、俺は回復魔法を使う。その間無防備になるから、俺を護っていてくれないか?」


「わ・・・・私が・・・・しもんさんを・・・・護る?」


「ああ、キミにしか頼めない・・・・駄目か?」


「い・・・・いや?そうか・・・・私にしか頼めないのか・・・・仕方が無いな、護ってあげるわよ!」


 うん?何かツンデレさんになったぞ?



「ありがとう・・・・じゃあちょっと回復させるよ。」


 俺はそう言って・・・・冒険者の元に戻った。


「なあ、俺が・・・・もし回復魔法を使えると言ったらどうする?」


 冒険者のリーダーが俺をまじまじと見る。


「あ?あんたが持ってるって?冗談言うなよ?!・・・・というか・・・・ワイバーンをあっさり仕留めてるし・・・・本当か?」



「ああ。だが、問題がないわけじゃあない・・・・俺はあまり回復魔法を使った事が無くってな、その・・・・患部に衣服があると駄目なんだ。つまり・・・・」


「服を脱がさないといけないってか?」


「まあそうなる。」



 ・・・・

 ・・・・

 ・・・・


 ・・・・

 ・・・・



 暫らく見つめ合う2人。いや・・・・野郎と見つめ合っていたくはないんだが。


「ちょっと待っていてくれ。」


 そう言って女性の方に戻るリーダー。

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