氷帝と呼ばれた男

荒場荒荒(あらばこうこう)

始まりの街ビギン

一話 流行に乗った男

2030年、意識を仮想世界へと入り込ませる技術がアメリカにて作りだされた。その技術がゲームへと転用され、世界中でVRMMO と呼ばれるジャンルが大流行した。絶大な人気を誇るVRMMO「リアルリアライズ」。販売からもう少しで一年経とうとしているこのゲームは今時珍しい一切課金不可、つまり己の努力のみで強くなるしかない。そんな世界で「氷帝」と呼ばれ、多くのプレイヤーに畏れられた男がいた…………





俺の名前は碓氷(うすい)涼介。どこにでもいる普通の大学一年生である。ずっとまわりに流されて生きてきた。広く浅くの人間関係を築き、人に好かれることも嫌われることもなく生きてきた。それが普通だと思いながら。そんな俺は世の中の流行にも流された。発売から一年経った今も絶大な人気を誇るVRMMO「リアルリアライズ」である。これはスキーゴーグル型のゲーム機本体とSDカードほどの大きさのソフトを買いさえすればあとは一切お金がかからない。しかもこのゲームの恐ろしいところは完全コードレスなことである。つまりゲーム機本体の充電さえしておけばいつでもどこでもプレイが可能である。これによる飲食店での長時間の場所占拠がちょっとした社会問題になっていたりもするがそれはまた別のお話………


「準備はできたし、早速始めるか!」

そういって電源を入れるとすぐに目の前に真っ白な空間が広がった。すると今度は目の前にタッチパネルのようなものが浮かんでいる。ここはキャラメイクができる場所のようだ。そして、そのタッチパネルの中には「おまかせ」と書かれたボタンが。

「よし、これだな。」

タッチすると同時にアバターが生成された。どうやらリアルの見た目をもとに作られたようだ。リアルより若干つり目になり、髪色は灰色がかった白である。そして、瞳の色は藍色である。なんだか厨二病っぽい感じにされてしまった。

「次は職業か。」

職業は大きく3つあり、直接物理攻撃がメインでどんな武器でも扱うことができ、自分で自分を強化できる「戦士」、弓や短剣を使い、なおかつ素早さもあり、薬物を生成できる「狩人」、そして今作で魔法で臨機応変に攻撃から回復までこなせるがゆえに成長させるのが一番大変で難しいとされる「導師」。もし、ソロプレイヤーとして活動するつもりであるならば「導師」は厳しいとされている。理由は単純、他の職に比べて体力と防御力、素早さが低い。他の職が使えない魔法が使えるためにステータスが低く設定されている。

「俺はソロで活動するけど、やっぱり魔法は使いたいからなぁ、やっぱり「導師」1択だな。」

職業を選んだところで最後にプレイヤー名を決める。

「自分の名前からとる必要もないだろうし、せっかく厨二病な見た目なら名前もそんなテイストにしようかな。」

悩んだ結果、<ヴァイス>という名前にした。ドイツ語で<白>という意味である。厨二病な雰囲気を醸し出している原因である髪色からとった。

「よし、設定は全部終わったし、さっそく戦ってみたいなぁ。できればすぐにでも魔法を使ってみたい!」

俺の冒険はとても大学生とは思えない少年チックな願望を抱きながら始まった。

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