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ふいに、胡桃さんとの先程のやり取りが思い出される。


よく考えたら、傘を握らされたとき胡桃さんとの距離がとても近かった。

一瞬だけど相合い傘をしてしまったし。


アラサーの私。

恥ずかしながらそういうことに簡単にときめいてしまう。

男性経験が少ないっていうのもあるけど、男の人に優しくされた記憶もあまりないから、ちょっと優しくされただけでドキドキしてしまうのだ。


しかも、相合い傘なんて夢のまた夢だった。

背の高い男の人が背の低い女の子に、傘を少し傾けて自分の傘の中に入れる。

なんてときめくシチュエーション。


今までの人生、背の高い私にそんなときめくシチュエーションは訪れず。

憧れだけで諦めていたのに、まさか、そんな。


私はベッドに転がって枕にぎゅーっと顔を埋める。


夢みたいな体験だったなぁ。

この夢が、覚めなければいいのに。


私はジタバタしながら、しばらく余韻に浸った。

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