邯鄲(かんたん)のキス

勝利だギューちゃん

第1話

「突然ですが、私は天使です。あなたにキスをして差し上げます。」


目の前の、1人の少女が現れた。

歳の頃なら、20歳前後。

かなりの美少女だ。

ミニスカートから出た足は、細くで長い。


でも、あからさまに怪しい。


「謹んでお断りします。」

僕はおじぎをして、その場から去ろうとした。


「待って下さい」

腕を掴まれる。

「何なんですか?」

「お願いです。あなたにキスをしないと、私、卒業出来ないんです」

「何のですか?」

「天使学校です」


なんだそれは?


彼女の名前は、ピト。

天国にある、天使学校の生徒。

卒業試験として、下界の人間をひとり、幸せにするという任務が課せられた。

その対象が、僕になったのだが・・


「で、キスをするとどうなるんですか?」

彼女に尋ねた。


「それはですね・・・」

紙を広げた。


「アナログですか?」

「わかりやすいでしょ?」

そう言う問題では・・・


こう書かれていた。


おでこ:動物との会話

ほっぺ:瞬間移動

くちびる:未来予知


「どれがいいですか?」

彼女は問う。


「ピトでいいですよ」


「じゃあ、ほっぺで」

「はい。」


そう言うと、ピトは僕の左右の頬にキスをした。


「どうして、左右に?」

「往復分」

「なるほど・・・」

納得している場合ではない。


「じゃあ、改めて挨拶にくるね。ありがとう。君のおかげで卒業できそう。」

いきなりフランクな言葉遣いになった・・・


「なんなんだ・・・」


まあ、あんなかわいい女の子に2回もキスしてもらえるなんて、まあラッキーだな。


それから、数十年の時が経った。


僕は、ごく普通に卒業し、ごく普通に就職し、ごく普通に恋をし、ごく普通に結婚をし、

ごく普通に子供が生まれ、ごく普通に子育てをし、とにかく普通な人生を送った。


そして、今臨終の時を迎えようとしている。


「そういえば、あの時にもらった力は、使う事はなかった。まっいいや」

そして、家族に見守れながら、息を引き取った・・・


「あーっ、やっぱり使わなかった」


な・・・なんだ?


えっ、ここは・・・あの時の・・・


僕は、高校生で・・・目の前には・・・

ピト?


「君が力を、使わなかったから、私はいつまでも、卒業できないじゃない」

「そんなこと、僕に言われても・・・」

「いいから、今度こそ力を使いなさい」

「どうやって?」

ピトは答える。


「邯鄲(かんたん)のマクラって、知ってる?」

「ああ話には・・・」

「今のは、邯鄲のキス。君がどう使うのか見させてもらった」

「それで・・・」

「やはり君は、君だったね」


ピトは再度、僕の両頬にキスをした。


「今度の君の人生は、私がそばにいる。使うようにね」

「そんな殺生な・・・」

「だめ。つききっりで見てるから、協力してよね」


こうして、2度目の人生を歩む事となった。


今度は、普通ではないだろう。


でも、それも面白いかもしれない。


「大丈夫。私が幸せにしてあげるから」

「他力本願だな」

「夫婦でしょ?」

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邯鄲(かんたん)のキス 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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