第31話 魔道具を作ります。
あの一件があった翌日、御影は魔法石を何個か買ってきて部屋に籠もっていた。
「御影さん、もう一日部屋から出て来ませんけど何をしてるんでしょうか?」
クラリスが執事のロイクさんに尋ねていた。
「魔道具をお作りになられるとおっしゃっておりました。ああなられた旦那様は魔道具が完成するまで出て来ませんよ」
「魔道具って作れるものなんですか? 普通は既製品を買うのでは?」
「何しろ新しい魔道具を開発するとか仰っておりましたよ。本当に凄い方ですよ。私がお仕えする旦那様は」
「そうですね」
クラリスとロイクは優しく笑った。
御影は魔法石を削り出し、魔術式をプログラムしようとしていた。
「うーん、これじゃ効果がイマイチだよなぁ」
通信機のようなものを作ろうとしているのだが、これがなかなか難しい。
何をどうプログラムすれば良いものやら。
「御影さん、本当に出て来ませんね」
あれから更に一日、御影は魔道具開発に格闘していた。
メイド長のアネットが持って来てくれたサンドイッチを片手に作業を再開している。
「出来た……やっと完成だ」
プログラムが終わったものを御影は指輪とイヤリングに加工した。
「みんな! ちょっと集まってくれ!」
御影は勢いよく部屋から飛び出した。
「あ、やっと出てきた。完成したんですか?」
「うん、杏のストーカー事件があって考えたんだけど、通信魔法を簡易化した魔道具を作ってみたんだ」
「通信魔法を簡易化!?そんな事が出来たんですか!?」
杏が驚いた顔をした。
「まあ、まだ試作品くらいの段階だけどね。数も多くは作れなかっし」
そう言って、杏とクラリスにイヤリングに加工した魔法石を渡した。
「これは?」
「それが通信機の役割を果たす。とりあえず、耳に付けてみて」
二人はイアリングをつけた。
御影も指輪に加工した魔法石を自分の人差し指にはめた。
「じゃあ、まず杏、魔法石に触れて少し魔力を流してみて」
すると杏のイアリングと御影の指輪に付いた魔法が光り始めた。
そして、御影も指輪に魔力を少し流した。
「あー、あー、どう? 聞こえる?」
「き、聞こえます! 凄いですこれ!」
杏は凄く驚いていた。
次にクラリスとも同様にしてちゃんと通信できるか確かめた。
「まぁ、これの難点としては、俺にしか連絡出来ない事なんだよね」
「それでも十分過ぎますよ! これ、貰っていいんですか?」
「もちろん。後でメイドカフェの従業員の分も作るからね」
「ありがとうございます! でも、何で魔道具を作ろうと思ったんですか?」
杏が尋ねてきた。
「あのストーカー事件の事があったから、いつでも俺と連絡を取れる魔道具があったらと思ってね。苦労して作ったよ」
「なるほど。大切に使いますね!」
そして、御影は残りのメイドさんたちに渡す分を作る為、また部屋に篭もり出す。
翌日、メイドさん全員分が完成した。
「みんな、これを持っていてくれ。通信魔法を簡易化した魔道具だ。これでいつでも俺と連絡できる」
他のメイドさんたちにはネックレス型のものをプレゼントした。
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