第16話 最強賢者の休日。

 翌日、昼過ぎに目を覚ました。


「うわ、気持ち悪い。頭痛い」


完全なる二日酔いだ。

昨日、調子に乗って呑み過ぎた。


「大丈夫ですか? 御影さん」


フラフラ歩いていた御影をクラリスが支えてくれる。

クラリスと杏は御影の屋敷に住んでいる。

恐らく彼女たちが御影を連れて帰ってくれたのだろう。


「全く覚えてない」


御影は昨日の夜の記憶がぶっ飛んでいた。

朝食(もう昼食だが)にありつこうとした時、執事のロイクがやってきた。


「旦那様、王宮よりお手紙が届いております」

「またかよ」


御影はため息をついた。


「こっちは引退したというのに、頼り過ぎなんじゃないか?」


内容としては、明日、王宮へ来いとの内容であった。

明日はちょうど店は定休日だ。

あの王様狙いやがったな。


「杏はどうした?」

「すでに出勤してますよ」


クラリスが答える。


「あぁ、今日は杏と天音が出勤してるのか」


あの二人なら仲もいいし、しっかりしてるから問題無いだろう。

そそろそろ新しい人員と店舗拡大をしたいところである。

 その後、なんやかんや経営について見直しなどをしていたら夜になっていた。


「そろそろ寝るか」


御影はベットの中に潜り込み、やがて意識を手放した。

 翌朝、早々に起き出した。


「久々にこんなに早く目が覚めたな」


今日はメイドカフェは定休日の為、クラリスも杏も寝ているのだろう。


「おや、旦那様。おはようございます。今日はお早いのですね」


執事のロイクと御影の世話係のメイドは早朝から屋敷の掃除や朝食の準備をしていた。


「今日はなぜか目が覚めちゃってね。ロイクこそ早いんだね」

「早起きは良い事でございます。私どもは旦那様にお仕えする身です故、旦那様方より先に起きねばなりませぬ」


さすがはうちの完璧執事だ。

そんなことを話していると杏とクラリスも起きてきた。


「おはよう」


御影が自分たちより早く起きている事に二人は少し驚いた顔をした。


「おはようございます。今日は早いですね?」


クラリスはまだ眠そうな顔をしている。

それでもちゃんと起きてくるのは凄い。

御影なら二度寝、三度寝は当たり前だ。

 皆で朝食を囲み、今後の店について話したりした。


「さて、着替えるか」

「もう、行くのですか?」


杏がこっちを見ながら聞いてきた。

王様との約束までにはまだ時間がある。


「うん。せっかく早く起きたからその辺を散歩しながら行こうと思ってね」

「それはいいと思いますよ。御影さん、最近、寝てばかりでしたから」


痛い所を突かれたが、御影はいつものスーツに袖を通す。

御影は基本的にはスーツ姿だ。

着替えを選ぶのも面倒なので、これはこれで楽でいい。


「「いってらっしゃいませ。お気をつけて」」


ロイクとメイドに見送られ、繁華街へと足を進めた。

普段なら杏やクラリスも付いて来ると言うのだが、今日は二人ともお疲れのご様子だ。


「ここも久々に来たなぁ」


繁華街は冒険者や商人、一般客で賑わっていた。

冒険者の中には御影の姿に気づいた者も居たようだが、流石に話しかけるほどの勇気は無いようだった。

御影はしばらくこの街並みを楽しむのであった。

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