第36話 レフィの音指
「すっごいのだああああ!!」
「……アライクンさん、本当に強いんですね」
「おーい、疑ってたのか、ニト。ナメんなよ?」
おじさんは自慢げに笑いながら、今しがた吹き飛ばした岩の残った面を示す。
「ほら、お嬢ちゃんの爪跡だ。ここまで届いてる」
「おお! ほんとなのだ」
「初めてでこれだからなあ……、ったく」
でも、すごい威力だったのだ。いやいや初めてでこれだけできる方が。
ふたりは上機嫌にお互いを褒めあい、アライクンさんはまた羅漢の構えを取ったりして、クーに細かいコツみたいなものを語っている。外に一緒について来てくれて試し撃ちまで見てもらえるのかと驚いたけれど、おじさんもこれが目的のひとつだったのかもしれない。
「レフィ、レフィもアレ見せてくれないか」
「アレ? あれってなんです?」
しばらく時間が掛かりそうなふたりは放っておいて、俺はレフィに話しかける。
「アレだよアレ。俺様の超最……」
「トーテキですね? トーテキって言ってください」
「なんだ。恥ずかしいのか?」
「恥ずかしいに決まってるじゃないですか」
「……またまたあ」
「なんで冗談だと思ってるんです? 本気で恥ずかしいんですケド」
「もう恥ずかしがるような歳でもないでしょうに」
「いまが一番恥ずかしいですう!! なんですか! なんですかあ!? ヒトを何歳だと思ってるんです!?」
「先々月くらいでしたっけ? ひ孫さんが生まれたんですよね?」
「キムスメですうっ!! 言わせないでください恥ずかしい!!」
「今度お祝いの品を贈りますね」
「……蹴っていいです?」
「…………そうだな、あの辺の木を狙って石を投げてみてくれ」
「わたしは蹴っていいのかを尋ねています」
「その辺の石でいいぞ」
「蹴ってもいいんですね?」
「良くない!!」
「な、だ、だったら謝ってくださいよ!」
「ごめん!!」
「……なんでしょう、なんでしょうか。すごく納得できないのですが……」
俺が再び拝み倒すと、レフィは渋々といった様子で近くにあった石を拾い上げた。
そのまま滑らかに投げる動作に移る。無駄な力の抜けた投擲姿勢がやけに様になっている。もうすでに“入って”いるのだろうか。
ひゅん、と山なりに放り投げられたそれはすぐに小さくなって、コンという鈍い音を残す。命中したのは確かだけれど、技を発動したという感覚がほとんどなかった。こんなものだろうか。
「……これで合ってるんですよね?」とレフィが首を傾げた。
「合ってるんじゃないか?」
「なんだか不安なんです。他の魔法みたいに待ってる時間もないですし、ほんとにちゃんと出来てるのかなって」
「単純な技ほど発動は早いからな。クーの羅漢も構えているだけの時間なんてほとんどなかっただろう? たぶん投擲もその類の技なんだろう」
「でも、でも他の技は……」
「ハヤサゴもサモクもどっちかというと魔法寄りの技だからな。覚えるときのクリスタルの消費量でも目安になったりするぞ」
「どういうことです?」
「何もないところから傷を治すなんてのはどう考えてもおかしいだろう? 相当の開発期間と構造構築が必要だったはずだ。それはもちろん、発動のときも然りだ。複雑なコトが起きる魔法や技ほど、覚えるのに必要なクリスタルが多くなるんだ。だけどハヤサゴもサモクも、すでに存在してるものを変化させるだけだから、覚えるのにもそこまでクリスタルは必要なかった。だからあのとき一度に三つも覚えられたんだよな」
「そういえば、そうでしたね」
「投擲なんてそれこそ、マナが働くのかどうかもわからないくらい普通の動作だから本人でも分かりづらいんだろうな。でも実際はマナが助けてくれてて、技も発動してるはずだから、練習すればするほど強くなるはずだ」
「どれくらいになるんですかね?」
手をにぎにぎと動かすレフィに、俺は記憶を辿る。
「……雷の魔法ほどじゃなかった気はするけど」
「ええっ!? これって速くなるんです?」
「どれくらい極めたらそうなるかはわからないけど、すごい速度で投げられることは知ってる。魔法ほどの隙もないし、前衛に近づかなくても手助けができたり、直接相手の魔法役に投げつけて詠唱を邪魔したり、使い勝手はいい」
「そうなんですね……、でも石なんかで邪魔になるんですかね?」
「実際に投げるのは石じゃないけど、それはそのときがきたら説明する。いまは速度が上げられるように練習しておいてくれ」
「わかりました」
「おーい、ニト!」
アライクンさんの呼ぶ声にそちらへ向かうと、まだおじさんとクーは会話の途中のようだった。
「どうしたんですか?」
「いやすまんな。お嬢ちゃんに見込みがありそうだったから、今後どうするつもりなのかどうしても気になってな」
「今後ですか?」
「あんまり口を出すべきじゃないとは思うんだが、これだけ将来が期待できそうだと、どうしてもな」
「気持ちはわかりますよ」
なんせクーの
アライクンさんも協会に勤める前はきっと
様々な戦場を経験しているおじさんだからこそ、昔の血が騒ぐのかもしれない。
「羅漢を覚えるってこたあ、魔法役にはしないつもりなんだろう?」
「うーん、僕の一存では決められないですけどね」
「いやあ、お嬢ちゃんが、その辺はぜんぶニトに任せてるっていうからさ」
「まかせるのだ」
さも当然と言った顔つきのクーに力が抜ける。
これだけ戦士の才能があって丸投げというのも、確かにおじさんも心配になるはずだ。
「下手に何かを覚えるよりも、お嬢ちゃんなら単純な力を磨いたほうがいいんじゃねえかなあ、とは思っちまうんだけど」
「僕もそのつもりですよ。クーにはあとスレイジングだけ覚えて欲しいくらいで、それ以外のクリスタルは全部身体能力に充てるのがいいかなと思っています」
「スレイジング? ……まあ、悪かねえとは思うが、そんなに必要か?」
「クーになら辿り付けるかもしれない世界があると思っているので」
「……なんか企んでるな?」
「ええ、まあ」
何かを察したように笑うおじさんへ、俺もニヤりと悪い笑みを返す。
俺とおじさんを交互に眺めていたクーが口を挟んだ。
「すれーじんぐってどんな技なのだ? たしか止まる技なのだ?」
「ああ、止まる技だな」とおじさんが答える。
「止まるって言うより、“掴む”感じだって、スレイジングの使い手から聞いたことがある」
「つかむのだ?」
「空気を掴むんだ。正確には空気中のマナを掴むんだろうな。全身でマナを掴んで、一瞬で停止する。普通に考えれば壁にぶつかったのと同じはずだから大ケガするか、もしくは内臓でも痛めそうなもんだが、スレイジングはその衝撃も軽減できるらしい。使い手に実演してもらったことがあるけど、気持ち悪いぞ? さっきまで全力疾走してたやつがいきなりその場に直立してやがるんだ。ありゃヒトの動きじゃねえ」
「すごい技なのだ!?」
「いやあ、まあ、使い方次第だろうなあ。そんなに人気の技でもねえし、覚えようとする奴がそもそも少ないから研究も進んでない。俺の率直な意見を言わせてもらうと、クリスタルの消費量に見合うかというと微妙だなと思う。覚えるのに2エリア分は必要だからな」
「2えりあ? それって多いのだ?」
「ああ、お嬢ちゃんはまだその辺を知らないんだな。たったひとつの技に2エリアは多すぎる。できれば身体の強さに換えたいところだ、が、でもそれだけの価値がスレイジングにあるとニトは踏んでるんだろう?」
「……そうですね、クーには特に」
アライクンさんの薄い色の瞳を真っ直ぐ見つめ返すと、おじさんは小さく頷いた。
「迷いがねえなら大丈夫だ。そのままニトに任せておきな」
「わかったのだ」
軽い調子で語るおじさんに、クーは深く頷いた。
* * *
「ふぬうっ!!」
鋭い風切り音に、妖精の羽が無残に散った。
クーは以前とまったく変わらない様子で花畑を転がり回っているけれど、その成果は歴然だった。目測を誤ろうと、狙う場所が拙かろうと、多少のズレであれば羅漢の切り裂く範囲が十分にそれをカバーしていた。
ふわふわした妖精は相変わらずクーの手を避けようと動いているけれど、そこから間合いが伸びるのだから無理もない。
「……嬉しそうですね」と、レフィも安心したような声を出す。
「攻撃が当たるようになったからなあ。……それより問題はこっちだぞレフィ」
「わ、わかってますケド、どうすればいいんです? 何か特別な練習をするんですよね?」
「そんなに大したことじゃない。レフィは実はもう音指を扱える状態だから、それを確認するだけだ」
「えっ!? わたし、出来ないですよ?」
「まだ出来ないと思ってるだろう? 違うんだなあこれが」
俺は大したことじゃないという風に笑ってみせる。
ここからは教え方が重要だ。
「
「い、いしきです? 何をいしきするんです?」
「『自分の声には、他のヒトに影響を与えるような効果がある』ってことを意識するだけだ。ほら、目を閉じて」
「え、え?」
「真っ直ぐ顔を上げて、あごを引く!」
「はっ、はい!」
「レフィの声は、すでにヒトに影響を与える力がある。俺やノーヴィンさんが出していたような空間の震えを思い出せ。あれが、自分の口から出るぞ。『音指が出る。ヒトを動かす』。これをまずは十回言ってみよう」
「も、もうそれが音指になるんです?」
「これは唱えるだけだ。音指はその後に出す。いまはこれを復唱してくれ。『わたしは音指を出す。ヒトを動かす』
「わたしは音指をだす。ヒトをうごかす」
「一回深呼吸をして、もう一回」
「……、ふー……。わたしは音指を出す。ヒトを動かす」
「うん。いいよ。もう一回、深呼吸」
だんだんと口調がゆっくりになっていく。
俺も次第に声を落ち着かせて、彼女自身の言葉を彼女の中に落としこんでいく。
「わたしは、音指を、だす。ヒトを、うごかす」
「……よし。準備はできた。目は閉じたまま、前方にクーがいることを想像してくれ」
「……しました」
「音指がいまから出るぞ。やってみな。『走れ』」
「走れ!」
空間に放られた言葉は、いつものようにただ虚空に消えていく。
まあ仕方がない。予定通りではある。
「……ほら、もう出来た」と俺は笑い声を作る。
「え、え? いまできてました!?」
「一発だったな。気付かなかったか?」
「め、目を開けてもいいです!?」
「まだだめだ。成功はしたけど、安定するまで続けたほうがいい。ほら、『走れ』だ」
「はい! ……走れ!」
ほんのわずかに響きが変わっただろうか。
まだ誤差の範囲だろう。
「さっきよりも良くなってる。さすがに飲み込みが早いな」
「ほ、ほんとです!? できてます!?」
「ほぼ完成してる。次で完璧になるかもしれない」
「い、いきます――――」
『――――走れ!』
遠くのクーがぴたりと動きを止めた。
振り返った彼女に俺は手のひらを突き出して制止する。俺の表情から察したのか、クーは不思議そうな顔をしながらも狩りに戻っていった。いい子だ。
「あ、あれ? いま、いまなんか空気が……?」とレフィが戸惑う。
「ん? なんか変わったか?」
「あれ、気のせいです?」
「ほら、もう出来てるけど、安定させないと」
「そ、そうですね! いきます!」
走れ、走れ。
レフィの声は花畑をくわんと揺らす。毎度毎度クーが動きを止めてこちらを見るのが面白い。狩りの邪魔になっているかもしれないけれど、いまは我慢してくれ。
『走れ!』
レフィも完全にコツを掴んだようだ。声に自信がある。
目を閉じたままの表情もどことなく落ち着いているように見える。
「よし、いいぞ。今度は目を開けてやってみよう」
「はい!」
久しぶりの日光にレフィは目をぱちぱちさせて、そしてむんと顔に気合を入れた。
走れ。走れ。声は木霊する。ひりひりと肌に感じる振動まで楽しむかのように、レフィはいい表情でそれを何度も続ける。完全に安定した。
よし。よかった。
「こんなもんだ。な、簡単だろう?」
「……そうですね、ちょっと驚いてしまいました」
拍子抜けしたような顔に、本当は最初はまったく出来ていなかったことを伝えようか迷い、とりあえずやめておいた。
音指は思い込みが大事だ。
できると本気で思わなければできない。他の新米の司令たちがどうやって訓練しているのかはわからないけれど、俺にはこんな方法しか思いつかなかった。少しばかりレフィを騙す形になってしまうけれど、一度成功してしまえばこっちのものだ。
あとは実戦がどうなるか。
「クー! ちょっと手伝ってくれるかー!」
俺が声を張り上げると、クーは耳をピンと立てて、なんなのだーと走ってくる。
俺は半分ほどクリスタルで埋まった袋を担ぎ上げる。
「またクリスタルを集めてくるから、クーはレフィの練習に付き合ってやってくれ」
「れんしゅーなのだ? なにするのだ?」
「音指でたくさん走らせてもらえるぞ」
「おっ!? そうなのだ? ほんとなのだレフィ?」
「え、え?」
「あとは任せるから、クーの気が済むまでレフィに付き合ってやれ」
「よしきたのだ!」
「あの、えっと」
俺は少しばかりの緊張を悟られないように、何食わぬ顔で花畑へ向かう。
クーがレフィに詰め寄るような声と、レフィの弱った悲鳴が聞こえる。とりあえずリラックスはできているようだ。
俺は背中と耳に集中しながら、当たり前のような顔でクリスタルを拾っていく。俺の不安が伝わっては、レフィまで不安になるかもしれない。
疑問に思ってはいけない。憂いがあっては失敗する。そうでなくても、実際にやろうとすれば「本当にうまくいくのだろうか」と考えてしまうのが普通だろうから。
辺りがしんと静まる。
おそらく準備が出来たのだろう。
俺は目の前に落ちているクリスタルを拾う振りをして、息を止めた。
『走れ!』
その響きに振り向くと、誰かさんが巻き上げた土埃が一直線に伸びていた。
俺は人知れずに拳をぎゅうと握りしめた。
「はい、今日の成果を報告しまーす」
「はーい」
「のだー!」
羅漢の扱いに慣れ始めたクーの狩りは妖精の脆さも相まって驚異的な速度で終わり、日没前にはクリスタルも十分な小ささになっていた。
昼までのボリアに引き続き妖精まで狩り終えてしまったけれど、クーはまだ活き活きとした表情をしている。レフィは少し眠そうだ。
「今日はクーのボリア狩りと妖精狩りが一気に終わりました。ボリアの分が少しと、この妖精のクリスタルの分があるので、明日エイスキューかハウジールドを狩ってしまえばスレイジングが覚えられます。羅漢も扱えるようになって、改めてチューニングも済ませて、いろいろ頑張ってくれたクーに拍手~」
「はくしゅー」
「しゅー」
俺とレフィがまばらに手を叩き、クーが遅れてその真似をした。
「はい、そしてレフィは昨日のうちにボリアを終わらせて、今日は疾砂でボリアをたくさん捕まえて、クーの手助けをしてくれましたー。さらには記念すべき初の音指ということで、司令としてもデビューを果たしました。頑張ってくれたレフィにも拍手~」
「は、はーい」
「のだー」
レフィが少し照れながら控えめに手を叩いた。
そしてその手をそっと上に上げた。
「はい、ニトさん、質問です」
「はいなんでしょー、レフィさん」
「これは一体なんですか?」
「今日から始まった報告会です。どうぞよろしく」
「唐突ですね? ……でも今日は、たしかに、そんなに頑張ったんですね」
「明日からはもっと忙しくなるので、よしなに」
「えっ!? 今日よりもです!?」
「ひとまずの目標が決まったから、ちょっと本気出すぞ」
俺の言葉にレフィとクーが顔を見合わせ、またこちらを見た。
「ニトさん、目標って?」
「よくぞ聞いた」
俺はまた調合器具の細い棒を取り出して、地面にしゃがみ込む。
「クーはノーヴィンさんに名前を売りたい。クーは世界で一番足が速くなりたい。これはもちろん素晴らしい目標だけれど、少し遠すぎる。ここに向かって全力疾走したところいずれ息切れを起こすに決まってる。とてもじゃないが走りきれない」
「クーは走れるのだ」
「そうだな。で、身近な目標として、俺が言っていた拠点だな。いまはクーのあの場所を使わせてもらえてすごく助かっているし、不満もない。だけどこれからいろいろなエリアを回ることを考えると、毎回毎回あのほら穴から出発したんじゃあ、夜になっても着かないくらいの場所もある。ってことで、しっかりした家だな。それを新たな場所に構えたい。活動範囲を広げて行きたい」
俺は要点をまとめてガリガリと地面に描く。
「だけど最速で家を手に入れるにしても、お金も土地もない。建てるにしてもノウハウがない。まあ新しくほら穴を見つけるなんて方法もあるかもしれないけれど、そうそう運よくあんなに都合のいいほら穴がいくつもあるとは思えない。……ということで、コレを使う決断をしようと思う。意見をくれ」
俺は細長い筒から一枚の紙を取り出し、手元に広げる。
クーとレフィが覗き込むように近くへ座り込んだ。
「……レフィ、なんて書いてあるのだ?」
「自分で読んでくださいよ……、えっと、いかのれふぃんだーとぼるだーを、ぎるど、ごのーでぃすにすいせんすることをここにしるします。れふぃんだー、にと、ぼるだー、れりふぇと。――――あらいくん・らばん。アライクンさんの字です? ギルドって、これ、どういうことなんですか?」
「アライクンさんが知り合いのツテで、俺達をあるギルドに紹介してくれたんだ」
「ええっ? そうなんです?」
「ぎるどってなんなのだ?」
「ギルドっていうのはクーよりも足の速い奴がたくさんいるところだ」
「なぬうっ!? 聞き捨てならないのだ!! どこなのだそれは!!」
「ゴノーディスっていうギルドだ。レフィは聞き覚えないか?」
「ごのーでぃす? ……ゴノーディス。なんだかどこかで聞いたような」
「なんでもいいのだ! すぐにそこに行って全員追い抜いて見せるのだ!」
「ちょっとクー、静かにしてください。なんだか思い出せそうな……」
鼻息を荒くするクーの隣でレフィは腕を組み、うんうんと唸る。
しばらく眺めていると、レフィがぽんと手を合わせた。
「ぼるくれつお! ボルクレツオとゴノーディスって言ってました!」
「お、ボルクレツオも知ってるのか」
「リーダ……、ええっと、前の司令のヒトが言ってました。いずれはボルクレツオかゴノーディスに入ってやるんだって。すごいギルドなんです?」
「西のボルクレツオ、東のゴノーディスって言われてるくらい有名なギルドだな」
「どこらへんのヒトたちなんですか? 首都とかです?」
「いや、だから、この国の西と東だ」
「国!?」
「そうだ、国だ。世界地図なんかはどこかで見たことないか?」
「地図は、ぜんぜんわからないですケド……」
「わかった。描いてやる」
「え?」
俺は棒でがりがりとまん丸な円を大きく描き、その中に中心を合わせて小さめの円を描いた。大きな円と小さな円で二重の丸が出来上がる。
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