第12話 黒い狼


 

「止まってください!!」

 

 振り返りながらも歩みを進めていた俺は、彼女のあまりの形相と必死な声に思わず足を止めた。

 やりすぎた、と。咄嗟に思ったのはそんなことだった。楽しさにかまけて、思いのままにレフィで遊びすぎてしまったのだと。度が過ぎてしまったのだと。あるいは、彼女が我慢を重ねてきたものがついに耐え切れなくなったのだと、そう直感した。直感するだけの材料も持ち合わせていたし、現状証拠も十分で、何の言い訳もできないことがなにより情けなく、冗談を冗談と思わせられなかった自分の拙さを後悔し、体の各所からぶわりと冷や汗が噴き出すまで、それまでが、本当に一瞬の出来事だった。

 

 そして、そんな男一人の懺悔もむなしく。

 彼女が見ていたのは俺ではなかった。

 

「な、なにか、来ます」

 

 動揺に震える声。俺は彼女から正面に振り返る。

 

 赤が弾んでいた。

 二つの赤色が空中に浮かび、まるで玉が地面に弾むような緩急で、トントンとこちらに跳ねてくる。

 照明石だと思った。それは俺とレフィがつい今しがたそんな遊びをしていたからこその発想だったのだろう。誰かが大きな照明石を両手に高く掲げて走ってきているのかもしれないと、そう思った。そう思いたかった。それがこちらに近づくほど、頭の大部分が俺を置いて勝手に理解を始めているのに、それをわかりたくがないために、現実をわかってしまいたくないからこそ、まだ、あれは照明石なのではないか、なんて、希望的観測をしている間にも。

 ありえない、そんな大きさは。

 それがもし生き物の目だとしたならば、その赤い二つの光りが魔物の瞳なのだとしたら。聴こえてくる小刻みな息遣いも、四速歩行の魔物が小走りするような独特のリズムも。ありえない。そんな位置に目があるとしたら、そんな高さに眼があるとしたら。その全貌は、体長は。

 目には輪郭があった。

 輪郭には黒い体毛があった。

 体毛はやけに湿っぽかった。

 

 それは、俺たちの目の前で立ち止まった。

 照明石だと思いたかったものは、どうしても照明石ではなく。

 

 あまりにも巨大な、黒い狼だった。

 

 月の光に浮き出る前足は、筋肉の塊のようにも見え。小刻みに呼吸をする大きな顎には、鋭利に過ぎる白色が並んでいる。

 目を離せなかった。

 すぐ次の瞬間に、目で終えない程の何かが俺の体を走り抜け、ただの肉隗になった俺の一部が地面に崩れ落ちるかもしれなかった。

 足が動かなかった。

 視界に光る二つの赤色だけだった。その景色だけだった。それが俺だった。俺に手はなかった。足はなかった。ただ、俺を見ている狼を、真正面で見ている。それが俺の全てだった。

 言葉が出なかった。

 

 すぐ目の前に、隣に、素肌に張り付くように提示された“死”に。

 俺はただ恐怖した。

 怖かった。

 なにも出来なかった。

 ただ圧倒的なソレに気圧されて。

 何かが起こるのを待っていた。

 

「に、ニトさん」

 

 袖が引かれた。

 引っ張られた服が、汗ばんだ肌に引っかかり、俺に体があることがわかった。それがわかった。

 ああ、そうか。

 

 ああ、そうだ。

 

 俺は足で歩くことが出来て、手を動かすことが出来て、後ろにはレフィがいて。

 息ができて、声も出せる。

 そうか、そうだ。俺は俺だ。俺に何ができる。俺にできることは。

 なく、はない。ある。こんなヤツに効くかはわからないけれど、一か八かできることはある。

 

 片腕で後ろにいるレフィを制止する。小さく息を呑む音が聴こえ、彼女は俺の腕を押しのけようとする。悪手だったことを知る。レフィの戦士としての覚悟を甘く見ていた。

 俺は目の前を見据えたまま、抱きかかえるように無理やりレフィを止める。

 

「待て、レフィ、いい」

 

 声が出た。かすかすの情けない声だったけれど、それでも発声はできた。

 ヤツ動きは無い。刃物を見せたりして刺激しない方がいい。

 戦闘になったらどうせ勝ち目は無い。

 

 気付かれないように、肺に目一杯の空気を取り込む。意図せず深呼吸のようになったその行為は、新しい空気を体の中に循環させた。息が浅くなっていること、心臓がうるさいこと、全身に汗をかいていること。狼が姿勢を低くしないこと、飛びかかる予備動作にはまだ入っていないこと、なにか液体が地面に垂れていること、それが狼の顔を濡らしているものと同じであろうということ。

 真っ黒な糊を詰められたかのようにギチギチに固まっていた頭が、すこしずつ回りだす。

 情報が見えてくる。

 

 突然、狼が歩みを始める。

 

 喉まで出掛かった言葉が寸前で止まる。狼は横を通り過ぎるでもなく、来た道を戻るでもなく、脇に生い茂る雑草の中へと消えていった。

 物音が消えるまで、脅威が確実に無くなるまで、自分の命が助かったことが確定するまで。俺とレフィは狼の消えていった方向をただただ見つめていた。

 

 

 

「に、ニトさん!?」

「は、は、悪い、腰が抜けた」

 

 あはは、ふっはははははは。

 自分の情けなさにどうしようもなく笑いが込み上げてくる。

 地べたに崩れ落ちた俺は、立ち上がろうと足を動かすけれど、普段どおりに動かしているつもりの足が微動だにしない。まるで寝起きに腕が痺れているときのように、脳の指示を一切受け付けてくれない。笑いながら顔を覆うその手が震えている。汗だらけのデコのぬめりを軽く切る。手を払う。

 

 怖かった。

 

 死ぬのが怖かった。

 いつ死んだっていいような命だと思っていた自分は、いざ目に見えるような死が迫ってきたら、足がすくんでしまった。

 死への恐怖と痛みへの恐怖は別物だと、そう言い訳をすることはできるかもしれないけれど、いざ死ぬとなれば真顔でそれを受け入れられると思っていた俺はいま、地面に立つことすらできなくなっている。

 何が司令をやってやる、だ。

 先に動くことができたのはレフィだ。俺に声をかけたのはレフィだ。

 曲がりなりにも現場を、狩り場を見てきた少女と、調合室で引きこもっていた男では経験値が違いすぎる。なにが、妖精を狩る覚悟はありますか、だ。温室育ちは俺の方じゃないか。

 

「はっはは、……思ったより、死にたくはないものですね」

「な、何を言ってるんですか。当たり前じゃないですか」

 

 そうだ、当たり前だ。

 俺はどれだけ格好つけたって、斜に構えたって、死にたくはないんだ。

 情けなくも、生きていたいんだ。

 

「ケガ、してましたね……」

「え?」

「見なかったです?」

 

 俺より幾分は平気そうなレフィは、さきほど狼が立っていた場所に近づいてしゃがみこんだ。

 そして地面を指差す。

 

 地面に黒いシミがあった。おそらくそれは狼の顔から滴り落ちていたものだった。

 ここからではよく見えないけれど、血、なのだろう。俺とは違い、狼がケガをしていたことまで気付いていたレフィが言うのだから間違いない。手負いのバカでかい狼が、こんなところで一体何をしていたのか。そもそもなぜケガをしているのか。あんなバケモノに手傷を負わせるほどの更なるバケモノが近くにいるのだろうか。

 

 俺は自分の頬を思い切り両手で叩き、無理やりに腰を起こす。

 平衡感覚に注意しながらゆっくりレフィに近づくと、狼が去っていった方向にも点々と黒い跡が残っている。

 

 あれが噂の黒い狼、で間違いはないのだろう。

 討伐依頼などではなく噂で済んでいるのは、おそらくまだ被害がないからだ。けが人、死人が出ればそれは噂などではなく事件だ。そうなれば街が厳戒態勢を敷いているだろうし、あれ程のバケモノなら騎士団が出張ってくる可能性すらある。そんな話を一切聞かないのは、今回のように狼が誰も襲わずに去ってしまうからではないだろうか。

 

「噂通りですね」とレフィがつぶやいた。

 

 俺の反応がいまひとつなのを見て、彼女は続ける。

 

「ほら、額に傷があるとか、襲ってこないとか」

「……そんなこと言ってましたっけ」

「言いましたよ。あのときニトさんは寝不足か何かでぼろぼろだったので、覚えてないかもしれないですけど」

「あはあ、面目ない」

「ほんとです」

 

 なるほど。その情報があるからこそレフィはすぐに噂の狼だと判断して、襲ってこない可能性にたどり着けたのかもしれない。せっかく共有した情報を頭に入れられてないとは、はやくも司令失格かもしれない。助かったからこそ笑い話になるけれど、意外と罪の重いミスだ。最悪の場合、俺がパニックを起こしていた可能性もある。なんなら腰も抜かしているし。

 

「いちおう……」とレフィは恐る恐るといった様子でこちらを見上げる。

「アレの素性を調べられれば報酬がもらえますが」

「馬鹿言わないでくださいよレフィさん」

「ですよね」

 

 狼の消えていった方を二人でしばらく眺め、そして同じタイミングでため息を吐いてから、街へと向かった。

 

 

 

 集めたツキガクレは俺がまったく期待していなかった部分もあり、いざ報酬にしてみればなかなかどうして、悪くない金額になった。

 

「だはら、ほれはレフィさんのおはねでもあるんへふってば」

「……よくわふぁりまへん」

「んぐ、わかってください」

 

 ホルステッドのミルクを使っているらしい新作のパンはやけに甘味があってふわふわしている。レフィにせがまれなければ列に並ぶこともなかっただろうけれど、確かにこれは並んででも買う価値のある味かもしれない。

 昼の大通りということもあって、目の前を行きかうヒトの群れにも活気が溢れていた。俺とレフィは脇にある建物の壁を背にしながら、買ったばかりのパンをはもはもしている。

 

「ふふぁりでやっはしおとなんえすから」

「はんふぇいいあした?」

「んん? はんへふは?」

「あはあ、いあ、あんふぇいっはんへふか?」

「…………さひにはべふぁいまひょう」

「あい」

 

 俺とレフィは向き合うのをやめ、正面のヒトの流れを眺めながら、無言で口を動かす。飲み込んでしまえばまともに会話ができることはお互いにわかっているけれど、この味を堪能するほうがいまは大事であることも、やはりお互いに同じらしい。

 口の中のものが少なくなり、しゃべれるタイミングがあっても迷わずに次の一口にかぶりつき、お互いにそれを咎めることもせずにもぐもぐしている。あまりに平和すぎて、唐突に込み上げてくるくすぐったさを隠すために俺は適当に言葉を発しておく。


「……うまいへふね」

「……おいひーへふ」

 

 俺が報酬を受け取るのをレフィは当たり前のような顔で眺めていた。

 

 だからこそ、これは二人で手に入れたお金ですよと話したらなぜか不思議そうな顔をされてしまったのだ。レフィ自身に依頼をこなしたという実感が薄いのかもしれないし、もしかしたら元のパーティでの感覚が抜け切らないのかもしれない。確かに俺が提案して、俺がやり方を教えて、ついでのばかりに集めただけの仕事だったのでレフィが自発的に行ったとは言いがたいかもしれないけれど、それでも二人で行った作業に違いなかった。だからこそお金は受け取って欲しかった。

 まあどうしても受け取るつもりがないなら、今回の報酬の半分はレフィの装備の分に充てればいいと思う。

 

「食べ終わりました?」と俺はたずねる。

「おいしかったです」とレフィは満足げに息を吐いた。

「おいしかったですね。それで、さっきはなんて言ったんですか?」

「はい? ああ、なんて言いましたかって聞きましたね」

「そうです、なんて言ったんですか?」

「……? あの、だから、なんて言ったんですかって聞きました」

「だからそう聞いてます」

「ニトさんは何を言ってるんですか?」

「うん? 何を言っていたのかを聞いてるんです」

「だから、何て言いました? って」

「……この世にはわからないことがまだまだたくさん溢れているのかもしれません」

「そうみたいですね」

 

 なにがなんだかわからない。そんな俺に、レフィはなぜか呆れたような顔を向けてくる。

 まるで俺が馬鹿みたいじゃないか。心外だ。

 

「報酬、ほんとにいらないんですか?」

「だってニトさんが教えてくれたことです。ニトさんが道具も用意してくれました。わたし何もしてないです」

「何もしてなかったらあんなに集まってないですよ。もらえるお金はちゃんともらっておかないと装備のお金返せないですよ?」

「うぐ、それはそうですが、それはそうですが……。い、いいんです! そうなったら返せるまでいくらでも働きますから、言いつけてください。なんでもやりますから!」

「なんでも?」

「なんでも! です!」

「ほほう」

 

 俺はレフィの柔らかそうな髪と、ここ数日でずいぶん毛並みのよくなった耳を眺める。

 レフィは慌てたように両手で耳を抑えて、俺から一歩離れた。

 

「な、なんか変なこと考えてます!?」

「そうですね、いま僕は変なことを考えています」

「正直すぎませんか!? 少しは隠すか、否定してくださいっ!!」

「なんでもするんですよね?」

「いざとなったら! です!! いまはさせません!!」

 

 “させません”という表現が、なんとも、俺が彼女に労働とは別の何かを求めていることをよく理解していると思う。相互理解は非常に重要だ。大変結構。

 しかしそうか、金銭的に追い詰めればいつかさせてくれるのか。

 なるほどね。なるほど、なるほどな?

 

「ちょっと、なに笑ってるんですか」

「いえ別に。ところでレフィさん、これでおなかいっぱいになったかと思いますが、……例えば、例えばの話ですよ?」

「……なんですか?」

「そんな目で見ないでくださいよ。例えば、レフィさんがお腹が空いて空いて、もう倒れそうなときに、目の前に豪華なごちそうを置かれて、だけど食べさせてはもらえずに、ずーっとおあずけするようなヒトがいたらどうしますか?」

「なんですかその話。ヒトとして最低じゃないですか」

「ですよねえ」

「……?」

 

 相変わらず疑わしそうにこちらを見ているレフィを尻目に、俺は壁から背を離した。

 協会に行ってレフィのエリア認定。あと狼のことを少し聞き込みしたら、ランキョクさんの村に出発だ。

 

 


   *   *   *

 



「う~……」

「なにを羽虫でも飲み込んだような顔してるんですか、レフィさん」

「ニトさんは気楽でいいですよね……」

 

 レフィのエリアは問題なく認定され、狼の噂には真新しいものはなかった。

 狼の、あの額の傷が街の兵などによるものだったならその戦闘について話題になっているはずだが、そういった様子も見られなかった。だとしたらあの傷はいったい何なのだろうか。目撃されるたびにケガをしているとすれば、完治せずに永遠と血を垂れ流していることになる。この街で初めて噂を聞いてからもう数日は経っているのだから、さすがに出血多量で死ぬだろう。

 

「いないですか? いないですよね?」

「僕にもわからないですよ」

 

 うちの勇敢な戦士様は俺の後ろに勇ましく隠れ、村の様子をびくびくしながら見ている。まるで飼いはじめの小動物のようだ。

 この村には足しげく通った時期もあり、ヒトとあまり交流してこなかった俺でも見知った顔がちらほらいる。あまり他の街と関わり合いのない閉鎖的な村ではあるけれど、俺からすればホームグラウンドに近い。俺を見つけて軽く声を上げた有翼種の男性に挨拶を返すと、後ろのちびっ子がびくりとした。

 

「いないですよね!?」

「いませんよ、まだ」

 

 たった一泊の間にレフィの天敵(?)として認識されたらしいスズちゃんとコチョウちゃんは、この時間、あまり村の中をぶらついていることはない。たいてい治療所のランキョクさんを手伝っているか、魔物の出ない村の周辺で薬草を採っている。村の中で見かけても何かを運んでいたり、どこかへ急いでいたりと、根っからの働き者だ。若者が少ないこの村で二人の存在はとても大きい。労働力もさることながら、あの若いエネルギーが年寄りの多いこの村のヒトたちに活力を与えている。そう、俺は思っている。

 二人とも、田舎住まいで終わるような器量ではないと思うのだが、これも余計なお世話なのだろう。親心というか、兄心と言うか、老婆心というか。もし妹がいるならこんな感じなのだろうか、などとたわけたことを考えてしまう俺にとっても、二人の行く末は少し気に掛かる。

 それこそ、二人が指を咥えてランキョクさんの後ろに隠れていた頃から知っているのだから。

 

「着きましたよ」

 

 治療所の入り口の前で、俺は後ろの小動物に声を掛けた。

 

「……着いてません」

「どんな否定の仕方ですか。現実をみてください」

「ニトさんが見えます。治療所なんてないです」

「レフィさん、世の中には忍耐という言葉もあってですね」

「ないです」

「あるんですよそれが、その無茶な否定やめてくれませんか」

 

 俺は構わずに入り口の戸を開けた。

 とたんに広がる薬品の香りに気分よく息を吸い込むと、慣れ親しんだ匂いが胸に充満していく。パロームおばさんの調合室ほどの強い匂いではないけれど、もはや香りで薬品の種類までわかる俺にとっては、なんとも懐かしく、落ち着く空間だった。

 

「……」

 

 奥に座っているランキョクさんは、どうやら診察中らしい。俺と一瞬だけ目が合うと小さく頷いて、目の前の患者の背中に回り、服の上から手を当てた。その右手にほんわりとした魔法の光りを纏い、空いている左手には別の光が漂っている。見慣れた光景を眺めていると、無事に治療は完了したのだろう、ランキョクさんは再び患者さんの正面に置かれた椅子へ腰掛けた。

 

「ああ、楽になった。ありがとねえ」

「いえいえ、お大事になさってください」

 

 美しく、気品のある笑みは、良くも悪くもこの村からは浮いている。

 普段からランキョクさんとともに生活している村のヒトからすれば、慣れ親しんだ笑顔なのかもしれないけれど、パロームおばさんのお使いでしかこの村に来たことがない俺としては、なぜこんな綺麗なヒトがこんなところにいるのだろうと、心底不思議に思っていた。それはいまも変わらない。

 診察が終わるや否や、さあ本題とばかりに始まった患者の女性の世間話はどうやら長くなりそうだった。俺が静かに外へ出ようとすると、レフィが顔だけでこちらを覗き込んでいる。耳が横向きにへたれているのを見るに、相当警戒しているらしい。

 

 入り口を出てそっと戸を閉めると、レフィは形容しがたい表情で俺を見上げた。

 

「……いなかったですよ、大丈夫です」と俺は軽く手をぶらぶらさせる。

「います」

「いや、だから中にはいなかったですって。匂いでもしましたか?」

「わからないです。でもいます」

「頑なですね」

「この世界のどこかにはいるんです」

「それは諦めるよりほかにないですね」

 

 俺はため息をついて体から力を抜いた。

 患者さんが治療所を出てきたのはそれからしばらく経った頃だった。

 

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