第43話

 コンコン。ノックの音。


 ドアが開き、レニとシキミが入って来た。


「みんなからの贈り物です」


 レニは私に白やピンクの花でできた、可愛いブーケを差し出した。


「ありがとう…!」


 黒蛇カシャと一緒にいた時は、喋らなかったシキミ。人間の姿をして私を見つめ、今は何か言いたそうにしている。


 私は彼女に話しかけた。


「『シキミ』って、白い花の名前なの。…これに似てる」


「……え?」


 ブーケの花のひとつを、私は指差した。


「素敵な名前ね。いい香りだし…」


 毒はあるけどその清らかな香りで、邪気を打ち消してくれる花。


「……あなたの方が素敵です」


 ……!


「ごめんなさい。…母があんなひどい事を言うなんて」



 シキミは悲しそうに一粒、涙を零した。



「……あなたが謝らなくていいよ、大丈夫。結婚式に出てくれる?シキミ」



「…………いいんですか?」



「もちろん!」



 シキミは、嬉しそうに笑ってくれた。



 大地は彼女に話しかけた。


「ここを、好きでいてくれたんだな」


 シキミは憧れの眼差しで大地を見た。


「大地先生、私は人間の世界に行ってみたいです」


 彼女は考え方が、母親とは全然違うんだ。



 私はシキミの手を握った。



「いつか私達の世界にある『シキミ』の花を、見に来てね」



 彼女は嬉しそうに頷き、私に微笑んでくれた。



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