第44話

「親と子は、別なんだよな」


 大地と私以外の全員が部屋から出て行くと、彼は小さなため息をついた。


「俺は、シキミを絶対に諦めてはいけなかったんだ。もう二度と、あの子に人の姿では会えないと思ってたのに」


 彼は私の方へと歩み寄り、


「……お前には、教えられる事ばかりだな、さくら。お前のおかげであの子と話せた」


 私の肩に、そっと自分の手を乗せた。


「………」



「力が強いだけで、人間より愚かな神もたくさんいる。黒蛇カシャが、その代表だ」



 大地は私を、じっと見つめた。



「俺は、死ぬまでお前と一緒にいる」


 その目には、固い意思を宿していた。



「………大地」



「お互いにまだ、知らない事ばかりだけど。…ゆっくり俺に教えてくれよ、お前の事」



 私は笑って頷いた。



「私にも大地の事、たくさん教えてね。夏祭りの時しか話をした事、無かったし」



 彼は優しく、私の髪を撫でた。



「…うん」



 心臓が、どきんと鳴った。



「…赤くなった」



 真剣な眼差しで、じっと彼に見つめられている。



「……急に、私、大地と結婚するんだなって、思って…」



「今更?」



 彼は照れた様に笑いながら、


 

「俺は人間になって、早くお前と暮らしたい」



 私のおでこに、自分のおでこをくっつけた。




「…俺は人間を尊敬してるし、大好きだから」




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