第23話

「……」


「……結婚?」


 我々は言葉を失った。


「まだ娘は、1歳になる前です。結婚など…」


 娘の結婚など、当時は

 遠い未来の出来事だと思っていた。


「薄緑に輝く瞳は、永遠の愛を誓った証。赤ん坊のうちにこうなるのは、とても珍しい事です」


「…!」


「私の名は久遠といいます。約束していただかなければ、彼女を助ける事は出来ません」


「……そんな!」


「……お願いします、どうか…」


「…なら、約束してくださいますか?」


「息子の望みを、叶えてはくれませんか?」


 奥様は続けて、こう言った。


「この子はどの世界、どの種族にも属せません。自分で選んだ伴侶と共に、未来を作っていくしか無いんです」


「……その男の子は、人間なのですか?」


 久遠様は首を横に振った。


「いいえ。ドラゴンの私と人間の彼女の間に生まれました」


 久遠様は続けた。


「この子は、そのお嬢さんを全力で幸せにします。…それは保証できる」


 私たちは目を見合わせた。


「…どうする?」


「…さくらが、幸せに生きていられるなら。このまま死んでしまうくらいなら…」


 この男の子と婚約させるべきなのだろうか。


 我々は目を見合わせて頷き、決断した。


「約束します」


「どうか娘を、よろしくお願いします」


 我々が頭を下げると、久遠様と奥様は嬉しそうに頷いた。



「契約成立ですね」

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