第12話

 大地は私の方を見た。


「さくら、まだコンノに言いたい事があんだろ」


「……えっと」


 私は、玄関を背に立つ紺野君を見た。


「私、急にみんなで会えなくなったから、その…寂しくて」


 紺野君は頷き、笑ってくれた。


「僕も。またみんなで会える日が来るといいね」


 副委員長をしてくれた紺野君は、いつだって真面目で、とても優しかった。


「いつも本を貸してもらってたのに連絡先知らなくて。…良かったら」


「今、連絡先教えるよ」


 紺野君はスマホを取り出し、私と連絡先を交換した。


「この本、シリーズの1作目なんだ。続きを貸してあげるから、読み終わったら連絡して。急がなくていいから」


 私は嬉しくなって頷いた。


「ありがとう」


「うん。別々の大学になっちゃうけど、時々情報交換しようよ。凌太達とも会いたいし」


 大地は急に紺野君と私の手を取り、強引に握手をさせた。



「……!」



「……?!」



「なんか、こういうのが足りないんだろ?お前ら」


 紺野君と繋いだ手をじっと見る。


「確かに、そうかも」


 紺野君は照れた様に頷き、少し話をしてから本の続きを持って来てくれた。


 ウイルスの感染が怖い状況下、友達と会って握手をする大切さなど、すっかり忘れていた。




「またいつか、みんなで集まろうね」




 私は紺野君に改めてお礼を言って、彼の家を後にした。


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