第2話
私はキョロキョロと
あちこち見回したけれど、
誰もいない。
「…誰かいるの?」
「いるよ」
参道の中央付近にある、
大きな桜の木の方角から
はっきり返事が返って来た。
「…?」
よく響く、綺麗な鈴の音の様な
男の子の声。
「ここだよ!」
ヒュン!!
空気を切り裂く音が鳴る。
突然、
桜の木のてっぺんから
しなやかで美しい男の子の体が、
私の目の前に降ってきた。
「さくら」
目が合った。
彼は笑ってこちらを見ている。
「はい」
…どうして、私の名前…?
…あ!
白い装束だけを身に纏った彼。
この顔、見覚えがある!
「…大地?」
懐かしいピンク色の髪。
力強い存在感。
「久しぶり」
私を見つめている彼は、
楽しそうに微笑んでいる。
「大地……本物?」
信じられない!
「本物。見りゃわかるだろ」
また、涙が出てきそう。
「会えて嬉しい?さくら」
まさか今日、姿を現してくれるなんて!
「…嬉しい!」
昔と全然変わらない。
大地は不思議な幼なじみ。
「…でもどうして?」
岩時神社の夏祭りの時にしか現れない。
だから、年に一度しか会えなかった。
「今は春だよ」
彼は大きくて澄んだ瞳に、
威厳のある輝き宿している。
「さくらに会いたくなったから」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます