翡翠鉢

旅商人が藩に滞在している間 ――

姫は、旅商人に懐き。

旅商人も、姫に懐いた。

姫は、何度も、せがんでは、旅商人から話を聴き。

旅商人も姫に訊いた。


姫は、岩絵具を使った絵の描き方も、教わった。


旅商人曰く、

「石のタネと、薬剤調合の技をもってすれば、

 草木や花と同じように、石も育てられる」

のだという。


嘘臭い。


が、姫は早速、植木鉢を集め。

土を敷き詰め。翡翠石を植えて。

毎日、水をやった。


石だから、水をヤリ過ぎる、という事もあるまい。

姫は、まるで、築城でもし終えたかのように、

腕組みしたまま、翡翠の鉢々を見下ろし、フンッと鼻を鳴らした。

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