転生したら魔王後継者!?
かぼちゃパイ
プロローグ 暗闇と始まり
私の名前は白音、日本に住んでいた高校一年生だ。
お父さんもお母さんも優しくて、三人で平和な日々を送っていた。
だけど、家族で出かけた帰りにそれは起きた。
前日まで降り続いていた大雨の影響で崖が崩れ、ちょうど通りかかった私達の車はその土砂の下敷きになってしまった。
幸い、土砂崩れが起きた現場の近くの住人が見回りに来て、病院に運んでくれたおかげで命は助かった。
しかし、生き残ったのは私だけだった。
私自身も重傷で、大きな病院へドクターヘリで運ばれ手術を受けた。
その結果、私は足の自由を失い、寝たきりになった。
そんな私を厄介に思ったのか、親戚は退院後の受け入れを拒否した。
最終的に、世間の目が気になったらしく、親戚の間で話し合い、表向きは母方の祖母にお世話になるという事になった。
だけど実際は、入院と18歳になるまで自動養護施設に入れるために掛かる費用を親戚が頭割りすることで話がまとまったらしい。
その結果だけを見回りの看護師さんから気のどくな目で伝えられた。
それからはただ孤独だった。
誰もお見舞いなんて来ない病室。命の代わりに足の自由を失ったことで外に出る気力もなくした。
退院の前日、私は足を引きずって病院の屋上から飛び降りた。
(生まれてきたのが間違いだったのかな...。)
地面に激突するまでの数秒。走馬灯のようなものが見えた。
入院した最初の日にだけ顔を出した親戚が見せた軽蔑の目。
看護師さんに向けられた痛々しい視線。
そんなことばかりが頭の中でスローモーションのように流れていく。視界は徐々に闇に包まれていった。
『そんなことはない』
闇の中で確かに聞こえた声。
『お前が生まれてきたことに意味がなかっただと?』
「な...に...」
落下する恐怖から意識はもうろうとしている。
『自分の人生に不満があるのならやり直せばよい。機会を与えてやる。』
視界が完全に闇に変わる瞬間、最後に聞こえた。
『我がお前の人生に意味を作ってやろう』
そして私は頭から地面に落ちて死んだ。
・・・
そう、私は確かに死んだ、死んだはず。なのに...。
「どうして...まだ生きてるの?」
痛みはなかった。すごく怖かったけど。
頭から落ちたから即死したんだと思う。
視界が闇に染まり意識が完全にとんだ次の瞬間、私はここにいた。
レンガでつくられた壁が薄暗く光るロウソクの光に照らされる地下室のような場所。
滞留するよどんだ空気の中で、私は目覚めた。
「ここ...どこ?」
こんな状況になったら誰だってそう思う。誰かに聞いたわけじゃない。
独り言を口にした。
「ここはレイン。魔族の国だ」
どこからか回答が返ってきた。
少しずつ目が闇に慣れてきた。見えたのはマントを被った二メートル近い大男の姿だった。
「どうやら成功したようだな」
「あなたは...だれ?」
大きなマントを翻し、その男は言った。
「我は魔王」
「ま...魔王?ここは、私は...確かに死んだのに」
混乱した私は目の前にいる魔王を名乗る大男に質問をし続けた。
「落ち着け。見せたほうが早い、ついてこい」
そう言って魔王は歩き出した。
私は魔王を追いかけようと立ち上がろうとした。
「きゃ!」
自身の足が不自由なのを忘れていて、案の定その場で倒れた。
目に涙がにじんだ。
痛いから。
違う。また置いて行かれると思ったからだ。
「すまない、足が不自由だったのを忘れていた、気にかけてやれなくてすまない」
だけど魔王は私を置いていきはしなかった。
魔王はマントの中から黒い表紙の大きな本を取り出した。
『水の巫女・風の妖精・癒しの風を束ね・この者に再生のそよ風を吹かせ』
魔王の持っていた本が風に吹かれ、ページが捲めくれていく。風が止み本の隙間から光があふれだした。
「ディープ・リカバリー」
あふれだした光が私の足を包み、まぶしい光で目眩がし、同時に衝撃が走った。
光が収まると足に感覚が戻っているのを感じた。足に力を入れて立ち上がった。
久しぶりの感覚だった。地面を踏んでいるという感覚が足から脳に伝わり、また足に帰っていく。そんな感じがして、心地良い。
「それじゃあ行こうか」
「待ってください!」
再び歩き出そうとした魔王を呼び止めて聞いた。
「なんで私を、自死した私を生き返らせたり、足を直してくれたり...」
魔王は足を止め、にこっと笑って答えた。
「我がお前の人生に意味を作ってやる。お前を、私の後継、つまり、魔王の後継者とするために転生させたのだ」
...。
「えっ...えぇー!?」
この日から私の魔王後継者としての過酷で、楽しい魔王との生活が始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます