じゅうねん

傷だらけの十年


杜の中から、遠くを見た


それさながらに巡る雲


光陰の隙間に頬そよぐ風があった


梢と右手の幹


巌のようにそこにあった


獣道の先に開けた眼下のラサよ


遠く遠く、世界を見た


海原の先は、けぶるように見えなかった


縦に遠く、水平線に遠く


この先など、見えるわけもなかった


というのに、少年は飽く事もなく


この先に魅入っていた


杜の出口


山々の突端


今に至る道すがら


見たもの感じたもの


この眼と掌と魂と


今は星空の代わりに


街の夜景を


木々の静けさの代わりに


鼓動を


獣たちの気配の代わりに


幼子の喚声を




垂れるものも木枯らして


進むかな


足跡は


傷だらけの十年

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