言灯詩編
我妻 伈之介 慚愧
恋しい人よ
帰り道の電車の中だけ
一席分の距離を空けて君は居る
いつしか、その距離が煩わしくなって
隣においでよと呟いていた
聞きつけて隣に座る君に
何も話せない私は、ただ、胸の高鳴りを覚えた
苦しいほどの胸の鼓動と逡巡が
私を悩ませた
話したいことは山ほどあるはずなのに
出てこない言葉は積もってゆく
行き来する電車を硝子の向こうに見て
小さな液晶と見つめ合う互いがもどかしい
1月の寒さが暖かさに変わる頃
きっと君は去ってゆく
変わらないものはないはずだから
今、君をこの手に入れなければ
永遠に失う気がして
ただし、私にはある人の愛という重枷があって
苦しいほどの胸の鼓動と逡巡が
私を悩ませた
思い通りにならない人生に
もっと早く出会えていたらという思い
その思いと君に囚われた私の苦悩は
硝子の向こうの闇よりも深い
背中に消える言葉
去り際に話しかけて引き留める君が
愛おしい
帰り道の電車の中だけの恋
拳一つ分の距離を空けて君は居るのに
今、この距離は何よりも遠い
もっと、君と居たいという思いだけ
過ごした月日の分降り積もる
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