売春婦は男爵令嬢になって復讐する
克全
第1話
私は地獄のような世の中を配ずり回って生きてきた。
実父は領主に無理矢理徴兵され、戦場で死んだと聞く。
母は私を育てるために再婚したが、養父が最悪だった。
私にはろくに食事を与えず、酒ばかり飲んでいた。
今から思えば、その酒も母に身体を売らせて手に入れていた。
何かあれば殴られた。
蹴り飛ばして転がる私を見て笑っていた。
かばおうとした母も殴られていた。
そのうち母の目に光がなくなった。
私をかばってくれなくなった。
今思えば心をなくしたのだろう。
ただ養父が連れてくる客に身体を開くだけの存在だった。
弟がいた気がする。
何人だったかは思い出せない。
養父が殴り殺したのだけは思い出せる。
顔の定かでない弟が、養父に殴り殺されるのだけが、鮮明に思い出せるのだ。
弟の父親が誰かも分からない。
実父の子だったのか?
養父の子だったのか?
それとも客との間にできた子だったのか?
確かなのは、私だけは殺されなかった事だ。
殴られ蹴られたが、殺されはしなかった。
最初から客を取らせる心算だったのだろう。
幼い子を抱くのが趣味の客を探してきた。
私は逃げた。
初めて家の近くから離れた。
だが養父は追いかけてきた。
追い付かれ、殺されると思ったが、助けてくれる人がいた。
養父はその男に殺された。
母は、どうなったか分からない。
なぜなら、私は助けてくれた男に売られたからだ。
だが怨んでいる訳ではない。
男が私を売った場所は、売春宿だったからだ。
身体を売るのは同じだが、少なくとも飢えない程度には食事が与えられた。
寝る時にもワラを与えてくれた。
身体を売るようになってから少しして、御腹一杯食事が食べられるようになった。
冷たい水で身体を清めなければいけなかったが、シーツをかぶせたワラベットで寝る事ができた。
身体を売っているうちにバスタブが使えるようになり、毛皮が敷かれたベットで眠れるようになった。
努力して色々な技を覚えたら、美しい服や装飾品が与えられた。
バスタブ一杯の熱いお湯が使えるようになり、絹の布団が敷かれたベットで眠れるようになった。
いつの間にか売春宿の店主が私に媚びるようになった。
私は立場が逆転した事を知った。
だからもっと努力して、色の技だけではなく、言葉使いも作法も踊りも学んだ。
表も裏も区別なく、売春宿で学べる全てを学んだ。
店主は拒まなかった。
むしろ私の価値が上がると喜んだ。
私は客からも学んだ。
私には色んな馴染み客がいた。
裏の世界に生きる者も多かった。
そんな者たちから、毒や暗器、暗殺術も学んだ。
虐げられ殺される側から、虐げ殺す側に回るとと決めたのだ。
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