第4話 令嬢と陛下のお茶会


 エメロードとイリアは、を想定して幾つかは対策を立てた。

 役に立つかは別だが・・・。それでも無いよりは、ましだ。


 そこへ再び来客を告げるノックが。

 エメロードから目配せを受けたイリアがすかさず取り次ぐ。

 現れたのは、正真正銘エメロードを面倒な事に巻き込んだ人。

 アルコバレーノ・マリン・グラナート、グラナート国王その人である。


 実はエメロード、国王とは面識がある。

 小さい時はよくいろいろな話を聞かせてくれた。

 為になる話も、子供ながらにそんなことまで話して良いのか?と思う話も。


「久しいな、エメロード」


 その言葉に、淑女の手本の様にエメロードはお辞儀をした。


「国王陛下におかれましても、ご健勝のようで何よりでございます」


「あー・・・今日は、堅苦しい挨拶は抜きにしよう。前みたいに呼んではくれぬか?エメロード」


「わかりました。アルコ小父様」


 そう言い、二人でフフッと笑った。


(小さい頃に戻ったみたい・・・。もう間違っても外で『アルコ小父様』なんて呼べないもの)


 そう思った所で、未だに来客に席を進めずもせず、立ち話をしていたことを思い出した。

 アルコバレーノに席を進め、イリアにお茶を淹れる指示を出すと、自分もアルコバレーノの向かいに腰を下ろした。


「さて、今回エメロードに送った手紙の事だが・・・・その・・・ノレッジの反応はどうだった?」


「・・・・お父様のことですか?手紙には、大変驚いていました。ただそれだけで、私がここに来ることに関しては何も」


 そう、何も言わなかったのだ。

 心配していたことも、私が王太子殿下に無理やり結婚を迫られたら・・・・と言った事だ。

 こちらで危険があるかもしれないから・・・とかでは決してない。


「そうか。ノレッジの事だ、エメロードに何かあったら私の暗殺でもと思っているのだろう?暗殺については困るが、まぁ何も起こらないので問題はない」


「あの・・・それは・・・・」


 ・・・・問題あると思う。

 私について何かあった時の対処法は分かっているようだし、仕方がないと思っていてくれるなら、エメロードが途中で放り投げても良いのだろうか?と疑問に思ってしまう。


(そういう事なら私は喜んで帰りたいのだけれど・・・)


「と、まぁそれについては置いておいて、本題に入ろう。エメロードにわざわざ来て貰ったのは、手紙でも書いてあった通り『王太子の教育係』をして欲しい」


「それについてなのですが、小父様。王太子殿下に私が教育と言ったことを、出来る事がないと思うのですが?」


「うむ、それについてなのだがな、なんと言うか・・・・スフェールは世を知らないのだ。あれは王妃が早くに亡くなったばかりか、唯一の王太子としてチヤホヤされてきた。だが本人にも周りが持ち上げている事も分かってはいたから、次期国王として恥ずかしくないように・・・と努力をしていたことも私は知っている。ただ・・・その・・・」


「その・・・なんですか?」


 なんとも歯切れが悪い、アルコバレーノに続きを促すが、何度も言いかけては、口を閉ざす事を数回繰り返しやっと話すことを決心したらしい。


「あまり家庭内が上手くいっていないのだ。いや・・・あまりではないな、全くだ。私も国王としての立場があり、忙しい毎日を過ごしておったし、決してスフェールを蔑ろにしていたわけではないのだ。それでも王妃の代わりに・・・とまでは見てやってはおらなんだ。なので・・・その、スフェールは遅い反抗期に入ってしまったようなんだ」

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