ステラレイド 終末のフォーリングスター -或る星の騎士達が迎えた“その刻”-
ゆたか@水音 豊
満開のまま茎枯れる白薔薇
セラ(紫色のコスモス/ブリンガー)
「前に言ってた“やな予感”って、こういう事かよ……」
女神達からの告知と、空を覆う不穏な色にシリルは顔を顰める。対してセラは「そうみたい」とあっさりと頷いた。
「そうみたいって……めっちゃ軽くないか?」
「んー。だって、この期に及んで慌てふためいたって仕方ないし」
それに、と。彼の方を真っ直ぐに見詰め、朗らかに微笑む。
「シリルが一緒でしょ?なら、私は大丈夫。世界だって、何とかなるから」
「……そーかい」
険しい顔をしていたシリルが、毒気を抜かれたように息を吐く。
ね? と小首を傾げ、その後少し表情を改めたセラが彼に手を向ける。その意図を察したシリルもまた、彼女に手を向けた。
「願いしものを」
「本物を」
差し出しあった手と、声を重ねる。
「「この手で掴みに往こう」」
そうして彼は消えて、彼女の姿が変わる。合わせ襟と細やかな刺繍が特徴的な民族調の装束にふわりと身を包み、彼を思わせる金色に変わった髪を靡かせる。
そこに挿した紫色の可憐な花に一度触れ、セラは一歩足を踏み出した。
*****
一条 狭霧(白色のバラ/シース(元エクリプス))
かつて女神達に立てた誓いは、この時の為のものだったのだろうか。
世界の危機に対して『戦わない』という選択肢は彼の中には存在しないのだと――上依知 白馬がそういう人物だという事は、狭霧が最もよく知っていた。
それならば、自分がすべき事は明白だった。仕えるべき相手である彼の意思を尊重し、その身を守る事、それ以外にはなかった。
「赴かれるのですね」
「勿論。この世界の守護する為に、戦えないなんて言えないだろう」
口調こそ柔らかいが、そこに滲む決意は決して揺るがない。改めてそれを察した狭霧に、白馬は真っ直ぐに向き直り、口を開いた。
「準備はいいかい? 狭霧」
白馬の問い掛けに、跪くように僅かに膝を折る。己の胸元――服の下に隠した、幼い頃に彼から贈られたそれに触れた。
「この身は貴方様のもの。どうかその御心のままに」
ほんの少し、何かを躊躇するかのように間が開く。けれど、狭霧は続く誓いの言葉を紡いだ。
「……白馬」
敬称のない呼称に応えるように、白馬は狭霧を抱き寄せる。
彼女の胸元に現れた一振りの剣を引き抜く。その瞬間に彼女の姿は光に消え、ただ一人を守るための衣装と為った。
白亜の騎士となった彼と、何処までも共に在る為に。
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