第65話 これが光の精霊

 トラウトナー伯爵邸の1室で机の上にザスキアから貰った銀の縁取りと真ん中に煌く光の宝石が付いている指輪を俺とクラウディアとレーナにコンちゃん…テオドールくん、それに フェリクスとヘンリックがぐるりと囲んで見ていた。


「殿下…女神様からセーレーとか言うのを頂いたとか?」

 とフェリクスが聞いた。


「うん、貰ったぞ…これからダモンに人々が脅かされていたり操られたりしているというエルネスタ公国とかいう小国に行けって女神指示が来てな…これを貰った」


「エルネスタ公国…北の小国ですね…。そんなことになっているとは…そちらへの調査を致しましょう…殿下いきなり突っ込んでは行けませんよ?」

 とフェリクスが言う、


「はい…」


「おい!早く精霊とやらを見せろ!」

 とコンちゃんが急かす。


「でもなぁ…万が一だけど…コンちゃんやハクちゃんみたいに全裸だったらどうすんだよ!」

 精霊…この世界の人間は精霊という存在を知らない。魔法を知らないのだから当然だ。魔法はよくライトノベルなんかでは精霊が力を貸していると聞く。だとするともしかしたら明日香には精霊も見えていたのか?

 一応念の為にレーナに聞いてみるが


「本では精霊なんか出てこんよ。あの女神レシリアの汚い裏技だろう?完全に逸脱してる状況だよ…この世界はもう完全にあの本とは別の未来を進んでるんだ…だから気にすんな」

 とコソっと言った。


「精霊が裸の女ならそれはそれでいいではないか!」

 とエロ狐が舌舐めずりして指輪を見た。

 やめてくれる?俺の精霊に変なセクハラしようとすんの!?まだ女って決まったわけじゃないし!イケメンかもしれないしっ!

 そう、ここは何がなんでも恋愛ジャンル世界なのだ!イケメンか美少女が出てくる確率が高い!!


「美少女なら嬉しいですねぇ」

 とヘンリックがにやけた。

 ゴンっとクラウディアがヘンリックの頭を叩いた。


「とにかく布も一応用意しましたし、すっ裸でしたらすぐかける用意を!」

 とクラウディアは指示する。もうこの手の奴等の登場シーンは布準備しかない。


「お姉様…ご安心を…お姉様以上の美少女などこの世にいませんよ!!」

 とテオドールくんが熱い視線でクラウディアを見るけど確かにそれは同意ーー!!


「そ…それじゃ…祈りを始めるからな!」

 と俺は指輪を手に取り祈り始めた。祈りの言葉が自然に出てくる。


「光の精霊よ…我の呼びかけに応え我が前にその姿を現したまへ…数多なるこの世界の光が我と共にあらんことを願う!」

 と祈りの言葉を捧げると指輪は眩く光始めて周囲が眩しくなりポンっとキラキラ光りながら何か出た!


 それは…銀髪の髪が肩まであり眼鏡をかけた真面目そうなインテリイケメンだったが…ちゃんと服着てる!良かった!

 …でも服が…スパンコールみたいにギラギラだし背中からニョッキリとトンボみたいな虹色羽が生えてるし身体全体が薄く発光する炎みたいなものに覆われていた!


「………光の精霊…ウィリアム・オル・ウィスパーデです!ウィルでいいです主様」

 とスパンコールギラギラウィルが俺にひざまづいた!!


「ぎゃあ!ま、まともだ!!こんなギラギラ野郎なのに礼儀正しい!!」


 ウィルは首を傾げた。


「どこかおかしいですか?主様!おかしかったら言ってください!直しますし!」

 ま、真面目!こいつ真面目だ!!服はこんなにギラギラなのに!!


「いやあの…眩しい!とりあえず眩しい!」


「…すみません…お初にお目にかかるので派手な格好で行かなければとコーディネートに拘ったのが失敗でしたでしょうか?ちょっと今からもう一度帰って他の服に着替えて来ていいですか?」

 神経質で几帳面すぎる!!


「い、いやもういいよ!次呼ぶときはもうちょっと控えめでよろしく」

 コンちゃんは男だったのでもう興味を示さずレーナに纏わり付き殴られていた。


 テオドールくんはウィルがイケメンなので


「お姉様!見ちゃダメです!怪しい光った服を着ています!目が潰れます!」

 とクラウディアの目を隠している!


「テオ離しなさい!!」

 とクラウディアが怒りやっと目でウィルを確認したクラウディア。ウィルはクラウディアを見た。ヤバイ!また惚れるかな?

 と思っていたらウィルは


「下がれ!人間共!主様に近づくでない!主様!こいつらは敵ですか!?なら私の【光輪刃】で真っ二つに!!」

 と手から必殺技みたいな光の輪っかを出して威嚇した!


「ま!待て待てやめろ!ここにいる人達敵じゃないから!!後クラウディアは俺の大切な婚約者だぞ!!手を出したら許さない!!」

 と言うとクラウディアは赤くなりもじもじした!


 ウィルは輪っかを収めて…


「なんと…敵ではなかったのですか…それは…失礼しました!しかも主様の婚約者様!?すみません!どうか私をお殴りください!」


「い、いえ!そんな…いいのですよ…」

 流石にクラウディアも引いた。


「それでは私の気が済みません!お詫びに皆さま手をかざしていただけますか?」


「え?手を?」


「はい!主様もどうぞ!」

 とりあえず皆手をかざしてみた。ウィルはパチンと指を鳴らすとなんと!爪がキラキラ光りだした!!


「爪を綺麗にしておきました!」

 と皆の爪がキラキラに輝いた!女性二人は喜んだが男性はコンちゃん以外微妙な顔つきになった。


「殿下…別に僕は爪が綺麗になってもなんとも思いませんのでこれやめてくれませんか?」

 テオドールくんがはっきり言ってウィルはショックを受けた!!


「え…き、気に入らなかった!?また失敗!?ああ…そんな…どうしよう…どうしようどうしよう!!」

 あれ?なんかやばい?凄くウィルが情緒不安定になり震えだしそして


「すみませええええええんんんん!!」

 と発光し光の玉がウィルの周りに出現して一斉に暴発した!


 それからようやく光が収まり目を開けるとウィルはいなくてその場の全員の髪が四方八方に広がっていた。これ…静電気だ!静電気で髪が爆発したみたいに広がっている!!


「うふふっ!皆さん凄い髪!!」

 クラウディアが堪らず笑い出した!


「クラウディア様も凄い広がってますよぉ」

 とレーナも広がった髪を何とかしようとしていた。


「あら!本当!うふふふ!」


「お姉様は髪が広がっても美しい!!」

 テオドールくん!君も広がってるからね!

 しばらく髪の広がりは治らないから俺が濡れタオルで髪に当てるようにと言うと皆それに従うと綺麗に治ったのでレーナと俺意外は驚いた。


「流石殿下!奇跡ですね!」


「いや…これ別に奇跡じゃねぇ」

 乾燥して起こるやつだし。


「うふふふ!」

 クラウディアはまだ思い出し笑いをしていた!相当ツボだったらしい。


「それでは…殿下…エルネスタ公国のことを王宮に帰り会議を致しましょう!エルネスタ公国を救うならば騎士団とも協力し遠征準備を整えなければなりません!」

 とフェリクスが言う。


「僕も行きましょう殿下!お姉様を危険な地に行かせることになりますし…戦力は多い方がいいでしょう!ダモンは強いでしょう…なんなら一族から精鋭を数人選び編成を組みますか?」

 とテオドールくんが言う。


「ありがとうテオ…」

 とクラウディアが言うとテオドールくんは


「お姉様の為なら!!」

 とひざまづく!それを見てレーナも


「なら私も行きますわ!戦力は多い方がよろしいのでしょ?テオドール様のお役に立てるなら本望!」

 と拳を握る。それにコンちゃんも


「ふむ!レーナが行くなら我も行く!準備が整うまでは王都の娼館にて力を蓄えてくる!」

 全員その力の蓄え方はどうなんだと思うが仕方ないか。


「…なら俺もハクちゃんに頼んで宝珠でレベル上げとかなきゃな…」


「我の宝珠でもいいぞ?」


「いやいい…」

 と即答した。


 話は纏まりとりあえず王宮に帰ることにした。

 その時…床が光り、魔法陣が浮かび上がった!


「何だ!?」

 ヘンリックが驚いて椅子の後ろに隠れた!

 この魔法陣は…


 すると魔法陣から人影が二つ現れた。

 漆黒のローブを纏う魔女明日香とボロボロになり倒れている男が現れて明日香が俺を見るなり叫んだ!


「ジークヴァルト!!この人を助けて!!」

 と…。

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