第61話 女神の高笑い

 その夜俺たちはトラウトナー伯爵邸に泊まることとなった。夕食時も俺がクラウディアと談笑しているとテオドールくんに睨まれ、そのテオドールくんに熱い視線を向けるレーナ嬢にそのレーナにむず痒い顔をするコンちゃんがいる。

 コンちゃんは通りすがりのメイドの尻を手慣れた手つきで自然に触り堂々と痴漢しとるし!


 お前レーナに惚れとるんじゃないんかい!と後で問い詰めたら


「それはそれ!これはこれ!何日も骨折で動けなかったのでもはや頭より身体が求めておる!レーナは気になるがお前のレベル上げの為に宝珠も作らなきゃならんだろ?」

 と手をわきわきさせながら…あ、こいつダメだわ。気になる子がいるのに娼館また行く気だわ。根っからのエロ狐は中々治らないんだ…。


「俺はハクちゃんの宝珠のがまだいいわ。ローマンには悪いけど」


「そ、そんな!我よりハクリュウの宝珠の方がいいと言うのか!?このっ浮気者め!」


「圧倒的にあっちのがまだいいわ!額から出るし!お前のはもう汚いし!後俺を愛人みたいに言うな!!」

 コンちゃんは腕を組み


「なんか…我を敬う気持ち減っていないか?一応神獣だぞ我?」


「え?敬って欲しかったらもっと誠実に生きたら?」

 と言っておいた。


 俺の部屋に戻る途中にクラウディアの部屋があるがテオドールくんが天井に忍者みたいに張り付いているのを見てビビった!!


「な、何してんだー!そんなとこで!!」

 そんで髪の毛がギュルリと口を塞いだ!!


「殿下…お静かに!お姉様が湯浴みをなさっているので警備しているだけです!」

 お前それ何聞いてんだよ!!ていうかクラウディアの湯浴みってー!


「あのな、いくら弟でもそう言うのは辞めろよ…」


「では殿下は湯浴み中に敵が侵入したらどうしますか?無防備な姉を襲う輩がいたら!?」

 いや…その賊はきっとクラウディアが八つ裂きにするだろうよ…

 と思ったがギラギラした目で睨まれるだけだった!


 その時ガチャリと部屋の戸が開き、お風呂上がりの濡れた髪のクラウディアが顔を覗かせて俺とテオドールくんを交互に見た。

 俺は口を塞がれており喋れないのをいいことに

 テオドールくんが


「殿下がお姉様の湯浴みを覗こうとしていたのでつい」

 俺はもちろん首を振った。

 この野郎!俺は超誠実な男だぞ!そんなんするかあ!お前のがむしろいやらしいわ!!


「テオ!今すぐに離しなさい!」

 とクラウディアが怒り髪の毛を外される。


「お姉様…でも…」


「嘘つき!テオ!私は貴方の姉ですよ!貴方が嘘をつく時はいつも天井に張り付いてるじゃないの!」

 どんな癖だよ!?お前どんだけ昔から天井に張り付くストーカーしてんだよ!!こえええよ!やっぱりこいつこええええ!


「さっさと部屋に戻って寝なさい!!」

 するとテオドールくんは俺に睨みチッと言い


「解りましたお姉様!お休みなさいませ!」

 と天井から降りてスタスタと普通に歩いて自分の部屋へ入った。


「…ごめんなさい弟が不審な行為を…」

 うん、凄く不審な奴だよね!

 それよりクラウディアとてもとてもその夜着がそのぉ…ヤバイ!!


「それじゃディアもお休み!よく休むんだぞ!?」

 と頭を撫でようとして腕を掴まれ部屋に引きずり込まれた。


 えっ!?

 いやダメだよ!結婚するまではっ!!

 一人で悶えるがクラウディアが


「ジーク…私女神様があの後どうなったか知りたいのです!!」


「あ…」

 そう言えばあれから行ってなかったか?レシリアどうなったんだろ。ザスキアも…クラウディアに髪の毛に不死のアスカを斬れる力を授けたらしいが…。御礼くらい言いにいかなきゃと思ってたが。すっかり忘れてた。


「それじゃあ一緒に行こうか?ディア…」


「はいジーク…」

 とクラウディアがベッドへ連れて行こうとしてドキリとする!


「ままま!待った!ソファーでいいよ!これから女神界に行くとこっちの時間朝までかかるかもしれないしさ!もしテオドールくんに見つかったら俺殺されるかもしれない!」

 ベッドで二人して寝ていたら絶対に勘違いされるし殺される!


「ジーク…私達は婚約者同士だしそんなことしたら私がテオを殺して私も天国に行きジークと共にいます!」

 くっ!!可愛い!!


「それにジークはとても紳士ですもの!結婚するまで手は出さないでしょう?」


「うっ!!」

 そりゃそうですけどね!こんな美少女と添い寝とか鼻血出そうだし寝れるか!?俺を何だと思ってるんだ!!

 クラウディアはもはや信用してます!みたいな空気出だし…流石に俺はもはや仏になろうと無心で横になり手を繋ぎ羊を数え始めた。


「お休みなさい…ジーク…ごめんなさいね?」

 と彼女は髪をハンマーにしてゴツンと俺は気絶した。


 *

 目を開くとはい、いつもの神殿とクラウディアがいて


「ごめんなさいジーク!痛かった?」

 とさっきのことを謝罪した。


「いや、痛み感じる前に気絶したから大丈夫だよ」

 と微笑むと赤くなるクラウディア可愛いい!!

 もうずっとここにいたーい!


 するといつもの神殿からザスキアが出てきた。

 その…衣装が!!グレースーツから普通の女神っぽい衣装になってる!!?

 しかも脇には双子の付き人がいる!


「おーほほほほほほほ!!!」

 ザスキアはいきなり高笑いした!


「女神ザスキア様!一体どうされたのです?あれから…」

 とクラウディアが聞くとザスキアは


「レシリアの悪事を上司にパワハラ相談したらレシリアは他の世界に移動が決まったの!実は私だけでなく何人かの女神も彼女からの嫌がらせやパワハラを受けててね!その子達と協力して訴えました!はい!今回アスカを不死者にした不祥事もとうとう社長にまでバレて奇跡の王子を助ける為仕方なくクラウディアに力を与えた私はなんとお咎め無しで逆に昇進したのです!!はい!」


「パワハラ?シャチョー!?」

 クラウディアはもはや判らなかった。

 にしても社長って…ほんと会社かよ!!


「社長は神ですね、はい!まぁともかく昇進じゃああ!いっくどーー!」

 とザスキアが両手を上に上げた。すると神殿が光り普通の白壁石だったものが銀に代わりピカピカになった!!


「す、凄え!!銀の神殿になった!!」


「うおーほほほほほ!ジークヴァルト!お前の奇跡の力も特別ボーナスでまたちょっと良いものをあげましょう!!」

 とザスキアは俺に指輪を渡した。


「なんだこれ?」


「お前の精霊です!祈れば出てきますからね!属性はもちろん光属性です!お前戦闘力ゼロやし?コイツを盾にして命令し闘ってもらえや、はい!」

 と女神は言った!


「せ…精霊!!おおお!なんか知らんが凄いぞ!!」


「凄いですの?セーレーとは?一体?」

 クラウディアも早く見たいようだ。

 また楽しみが増えたぞ。


「クラウディア…ジークヴァルト…よく頑張りましたね…まだ、あなたたちの世界では魔物が蔓延っている汚れた国が多数存在します、はい…差し当たってヤバイのは魔物が進化した国エルネスタ公国です。小国ですが多くのダモンに人々は脅かされております、はい。ダモンが人間を操っている噂もある…ということでそこへ行って闘ったりキスして救っておいで!はい!」


 といつもみたいに視界は白くなり俺は目覚めた。丁度夜明け前だ。目の前の美少女も目を覚ました。俺の指に女神から貰った指輪がついていた。


「…おはようございますジーク…」


「お、おはようディア…」

 何というか素晴らしく綺麗だ。気付くと俺はクラウディアの額におはようのキスをした。

 クラウディアは白い頰を染めて朝食が終わったら精霊を見せてくださいとねだった。

 ああ、もう可愛過ぎて死にそう!!

 俺が了承し部屋から出ると…


 赤髪の男が隈を作りながら恐ろしい顔付きで天井にへばりついていた!ぶっ殺す!みたいな殺気まで感じて恐ろし過ぎて死にそう!!


「ぎゃ…」

 と言おうとしてまた口を髪で塞がれて


「どういうことですか!?結婚前に!殿下は最低ですね!しかも部屋が僕の力でも開かなかった!!何をしたのです!?お姉様に!!」


「なっ!何もしてません!女神の所へ行ってた!!だからほらー、俺の奇跡の力も強まっててさー…部屋が結界的な役割で気絶中は開かなかったのかなぁーー??」

 知らんけどなっ!!たぶんそんなかんじだろ!!?

 と俺は冷汗を垂らしたのだった。

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