第62話 ローマンとハクちゃんの恋愛1
王都の南側…王宮に比較的近い位置にエーレンフェスト公爵邸が有る。これはトラウトナー伯爵邸にコンちゃんの治療に行く少し前の出来事だ。
「着いてきてくれ、ジーク」
「お前…何歳になる?」
「17だよ」
あっ…ローマン一応歳上だったのか!?見た目俺とあんまり変わんないから同い年かと思った。
「お前成人も近いのに両親の挨拶くらい1人で行けよ!!」
と俺は断ったが
「いやあ、もしかしたらうちの両親ほら、ハクとの結婚に反対する可能性あるじゃん?なっ!?」
「お前は結婚したいのかしたくないのか!?」
「いやあ………そりゃするけどぉ…神獣だよ?ハク…どう説明したらいいんだ!?だからっ着いてきてくれよぉおお!ジーク頼むよおおおお!」
と泣きながら言うので
「判ったよ…その代わりハクちゃんの宝珠くれよ?」
「うっ…いや…お前…それは…婚前前の男女がそんなことしちゃダメだろ!もしも両親がオッケー出してもハクにはこれから厳しい花嫁修行があるんだ!そういうのダメだから!」
「じゃあ1人で行けよ」
「おまっ!このっ…くく…くそう…別に今すぐ必要じゃないだろ!?」
ローマン…お前チャラチャラしてるように見えてほんとに乙女かよ!まぁ俺も従兄弟だけあって多少判るしなぁ…。
「うーん、判った…でも必要になったらくれよ?新月とか満月の前でいいから」
「…判った…」
*
そんなわけでハクちゃんとローマンと俺とクラウディアはエーレンフェスト公爵邸へ行った。
充分大きい公爵邸はちょっとした城と同じような造りだ。
「あら!ジークヴァルト殿下お久しぶりね。ローマンがいつもお世話になっていますわ」
とローマンの母、リカルダ公爵夫人が言う。
「クラウディア嬢も元気そうで何よりだ!ところで見慣れないその美しい人はどなたかな?」
とローベルト・エーレンフェスト公爵が聞いた。
ローマンがもごもご呻きどう言おうか悩んでいるところハクちゃんは
「初にお目にかかる!ローマンの親よ!我はアルデン国から来た神獣ドラグーのハクリュウなり!今は人型である!ローマンと結婚して子を残す為に挨拶に来たぞ!!」
と言った!!
ポカーンとした公爵夫妻。そりゃする!!
「…えっ!?神獣?えっ!?」
流石に公爵もついていけてない。
「あら…結婚?えっ!?神獣様と??えっ!?ローマンどうなってるの?」
「う、うんあの…そう言うこと…かな?おかしいよねぇ?だって神獣だもんねぇ?ははっ!」
とローマンが言うと
「ジーク…これは使い物にならんからちゃんと説明してくれるか?」
と公爵の叔父さんが言う。
「あ、はい…実は…」
と俺は今までのことを説明した。その間ローマンはキョロキョロ落ち着かない。
「なるほど…そう言うことか…」
とローベルト叔父さんがふむとうなづいた。
「まぁ…ではローマンと結婚すればこのブッシュバウムにも富の繁栄が!!?ではもうするしかないわね」
それにローマンが嘘っ!!?って顔をした。
「そりゃ繁栄は嬉しいことですが!神獣ですよ!?いいんですかっ!?産まれた時ドラグー姿とかだったら!!」
「…ふむ、それはそれで逆に見たいがな!?だって神獣の赤ちゃんだろ?滅多に見れんじゃないか!」
と叔父さんが言った!
確かにその通りだった!ドラグーの赤ちゃんか!?興味湧いてきた!
「そうね…もしかしたら卵で孵るのかしら?」
リカルダ夫人も興味深々だった。
「いや…俺普通の赤ちゃん見たい…」
ローマンは青ざめた。
「まぁローマンは後少しで成人だしその時までハクチャーン様がうちで花嫁修行となりますね。大丈夫ですかな?人間のしきたりで申し訳ないですが、うちも公爵家なので一応」
「うむ!その為に来た!神獣である我も人間のしきたりに従おう!ローマンの妻となる為に!」
とハクちゃんが胸を張る。
「なんと素晴らしい御心!ローマン!お前もしっかりしなさい!いずれ公爵を継ぐ身だろう!?ハクチャーン様がいなければどこぞの令嬢との見合い話は山程あったのだぞ!?これから断るのに大変だ」
とローベルト叔父さんがため息を吐いた。
「ううっ…俺もっとほんとは1人を満喫したかったなぁ…」
「全くこの子は!女遊びもしないのにどうして恋愛や結婚に興味がないのかしらね!子供なんだから!いつまでも!」
とリカルダ夫人もローマンを睨んだ。
「…はい、すみません…」
ローマンはしおらしくなった。結果的に両親も大喜びでハクちゃんも講師をつけられて実に真面目に花嫁修行をすることになった。
ローマンは庭で1人雑草をむしっていた。
俺は声をかけた。
「ローマン…本当に結婚したいのか?したくないのか?」
「…そりゃするよ…ハクのことは…その…好きだから…いい…その辺の令嬢よりかは余程いい」
「じゃあドラグーの赤ちゃん産むのが嫌なのか?」
「…判らん…そもそも産まれて俺どうしたらいいの?ハクの様子だとすぐに子供を作りたいだろうし、親たちも皆乗り気じゃん…俺…恋愛肯定すっ飛ばしてるじゃん…今まで興味なかったしなぁ…その…いきなりいろいろ奪われたしなぁ…流されたしなぁ…だって神獣様に強く言えないしなぁ」
とブツブツと草を摘みながら言う。
「なるほど…つまりローマンはこのスピード婚についていけず、恋愛がしたいんだ!?」
「そうだよ!ジーク!お前が羨ましいわ!クラウディアちゃんと初々しくやってるじゃないか!俺もそういう初めからちゃんと段階踏んでみたかったの!!」
とまた泣いた!!
「うーん…俺も判るよ?そうだよなローマン…。俺がローマンの立場だったらそうなるかもな」
「流石俺の従兄弟!考え方似てるな」
「おう!だが、もう花嫁修行段階だしな…今から恋愛ごっこを始めるわけ?」
「別にごっこじゃないだろ!一応俺だってハクのことは好きだ…でもどうしたらいいんだ…さっきも言った通り神獣様なんだよ!大きく出られない!」
「そんな気にすることないだろ?コンちゃんなんか見てみろよ?あれを尊敬する気にはなれんわ」
「あれは…まぁそういうことしか頭にないんだろ?」
とコンちゃんはダメだと二人してうなづいた。
「とりあえず優しく接していけば?プレゼントを贈ったり…甘い言葉を囁いたり…手を繋いだり、デートしたり…まだ結婚まで時間あるし、ハクちゃんの花嫁修行もかねてハクちゃんにとりあえず謙虚さを身に付けさせてみるとか」
「…ジーク…お前こそクラウディアちゃんにプレゼントや甘い言葉囁いたりしたの?凄えな!」
俺はカッと赤くなった!
「うううるせえな!俺のことはいいんだよ!」
「あはは照れた!!俺も大概だがお前もだ!似た者同士だよなぁ俺たち!まぁ以前のお前は違ったろうけど今のお前は親友程度には好きだな」
とローマンは笑った。
ローマンの遅れた恋愛が上手くいけばいいなと思った。そりゃ段階すっ飛ばしてるからなぁ。
ローマンと別れてバルコニーにクラウディアが見えて俺は手を振ってクラウディアに報告しに行った。
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