帝国の聖女

第40話 奇跡の国爆誕

 はぁはぁ…。


 と息を切らしながら俺は早朝宮廷ランニングをしていた。

 あの豚王子と入れ替わってた時にあいつはだらだらまた菓子ばっかり食っていたらしいし、その後コンちゃんによりなんと15日くらい飲まず食わずで死んだように眠っていたと聞き身体に異常がないか一応調べたが大丈夫だった。

 …が念の為健康管理しておこうと早朝ランニングをすることにした!


 それからセレドニオに餌やりと朝食…剣の訓練が終わると豚王子が踏んづけたという人形の修復や例の奇跡の光を見たという他国からの応対に、夕方はちょっと教会に顔出して足腰の弱い老人の治療で帰って夕食して………って!


 やること多いわあああ!!


「いや…セレドニオの餌やりとか減らせば?」

 とユリウスくんが朝食の席で言うが…


「何を言うんだ!それじゃ俺の愛馬に会えないだろがっ!!毎日会わないとね、たまに来た時あんた誰ですか?みたいに完全に忘れられるんだからねっ!!」


「そなたの愛人か?その馬は…」

 と艶艶したコンちゃんが普通に食卓についている。


「コンちゃん…何でまだいるの?しかも王宮に!山に帰れよ」

 と俺が言うと


「酷いっ!我は主を救う為に日夜励んで宝珠を集めておったのに!15日も眠らせるのは宝珠を結構使ったんだぞ?あれには食事や排泄をしなくとも栄養が取れるようになっていたんだぞ?

 感謝するが良い!そして!」

 うげあっ…あの気持ち悪い宝珠から栄養素出てたとか…知りたくなかった…なんか嫌だ。そりゃ生きてたことには感謝するが。


「…そして…何?」


「この国の娼館は最高である!」


「だからっ!ユリウスくん達の前で言うなあああ!この汚れた神獣め!!」


「コンチャーン様はすっかり都会に染まってしまわれたのですね」

 とユリウスくんがジト目で見る。最初はあんなに興味深々だったけど流石にユリウスくんも先日コンちゃんがローゼちゃんに


「ほう?其方は男装をしておるな?なんと勿体ないことか!磨けば光るというのに…今から良い育ちになるよう我が手解きをしてやろうか?」

 とナンパしていたのでユリウスくんが恐ろしいオーラを出して流石の神獣も手を引っ込めたのだ。それからユリウスくんは


「やっぱり神獣と言えば最強なのはドラグーですよね!!」

 ともはやコンちゃんに微塵も興味を示さなくなったし、汚いモノでも見るような目で接していた。唾を吐かないだけマシだ。俺もドラグーがまともであることを祈る。


「失礼します殿下!」

 とフェリクスが入ってきて報告した。


「どうしたの?フェリクス…?」


「はい、先程調査に行っていた騎士団が戻りました。やはり…あの奇跡の光の夜以降に森等からブッシュバウム国にいた魔物や邪悪なモノが全て跡形も無く消えています!!森は物凄い綺麗で空気も澄み、水は綺麗で動物も棲みやすくなっているとのことです!」


「えっ…そうなの?魔物がいなくなったのか…」

 フェリクスはさらに続けた。


「それに…治安がかなり良くなりました!人々は困っている人に手を貸し助け合い、街にいるゴロツキ供がボランティアまでやり出す始末です!!」


「ほ…ほうそれは良かったじゃないか…」


「殿下!殿下がやったのでしょう!?あの夜の光りは!!もう街中の噂ですよ!一体何をしたらあんな事になったんですか!?各国からもどうぞうちの国に来て魔物などを浄化して欲しいと沢山の書状と寄贈品に復興の手伝いに足りない職人まで派遣してくる始末です!!うちの国わっしょいです!!」


「わ…わっしょい…」

 直前に何をしたって…そんなの…クラウディアとキスしたことしかねぇわ!!!

 そんなこと言えるわけないだろうがっ!!


「お兄様…隣のアルデン国のリヒャルト王子がお詫びに訪れておりますわ!訓練が終わったら挨拶をお願いします」

 とエリーゼちゃんが言う。


「何?リヒャルト王子が!?まさかうちのエリーゼちゃんを…」


「違うと申しておりますのに…」

 エリーゼちゃんは溜息をつく。

 フェリクスが


「そう言えばあの殿下が助けた奴隷の美少年はとりあえず良い家の養子に貰われたそうでお礼に来ています。訓練が終わったら殿下とクラウディア様にお礼をと」

 うん、俺だけで対応してもいいだろうか?

 しかし…他国へ行き奇跡を起こしてくれと言われても無理だな…。


 先日夢であの神殿で女神に聞いてみた。


 *


「あらあらはいはい!そうですはい!可愛いクラウディアと想いが一つになりキスするとあのように国丸ごと浄化されるわけですねっ!はい!まぁ同じ国で何回しても最初の一回だけで光りませんけどねっ!」


「それって…他国でクラウディアといちいちキスしないとその国から魔物は消えないと言うことかな?」


「当たり前ですはい!しかも!光りに包まれた国は私の加護国となるのですはい!貴方は同時に女神ザスキア信仰にさらなる貢献をしているのですはい!国を丸ごと救うので貴方のレベルも相当上がり、世界を制すればいずれ神にも等しき力を持つでしょうね!はい!」


「ええーっ…でもその為にクラウディアを連れてくのも…なんかさぁ…嫌だよ…。それにさぁ…そういうのって戦争の火種にもなりかねなくない?例えば右の国と左の国が俺の力求めて戦争とかになってさあ…」


「まぁふつーにあるでしょうねはい!そして!うちのブッシュバウムを負かした帝国魔法兵士供は私と対立している女神信仰の国!奴等の国にも奇跡の聖女なる転移者がいるのです!はい!」


「うわぁ…ライトノベルかよぉ…」


「ライトノベルですよっ!はい!まぁぶっちゃけその聖女とヒロインが本来火花散らす第二巻のライバルなのですがっ!!今の貴方のヒロインはもちろんクラウディア!これはいつかは避けられないのですっはい!!」

 うわあああ!!二巻来たあああ!!また女の戦い始まるんかい!!


 キスして奇跡の国が爆誕したのは確かに奇跡だしロマンチックだけどなっ!

 どっか行く度にキスで国を救うなんかロマンスの安売り過ぎる!流石恋愛ジャンルつえええな、おい!!


「そりゃもう仕方ないんじゃない?はい!…ということで諦めて他国行って奇跡起こしまくれーい!他国のイケメンもいっぱいいますでーー!」

 といつもみたく視界は白くなりました。

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