第33話 コンちゃんをブン殴りたい 

 コンちゃんは白い髪に綺麗な顔した美青年でまつ毛も白く長いイケメンだ。

 瞳は金。顔には赤い線の模様が描いてある。


「貴様ら人間が我に何のようだ?まぁどうせ何か願いを乞うてきたか?この…欲しがり屋め…」

 と色気たっぷりにウインクして俺は引いた。


 フェリクスとヘンリックや兵士…男たちはほとんど白目を向いた。だって男にウインクとかキモいから。

 今でこそ布巻いてるけどその下全裸の変態だしな。


「…コンちゃん…とりあえず宝珠ください」

 俺はストレートに言った。

 コンちゃんはふむとうなづくと


「人間はそれが欲しい為に来たのか…。まぁ今はないけどな。前の奇跡の王子とやらもレベル上げが何のかのでその時やってしまったから宝珠は今持っておらんな」


「そ…そんな!折角山登ってきたのに!」

 前の奇跡の王子もそりゃさっさとレベル上げたいよなー!考えること一緒だよなー!


「だが上等な貢物を持ってきたことだしそれがあれば新しい宝珠もすぐできるな」

 とコンちゃんが言った。

 何だ?上等な貢物って?てか持ってきた貢物さっきコンちゃんが食べてかなかったか?俺しか気付いてないだろうけどさっきの気配はコンちゃんだと確信している。


「さっきの持ってきた袋のコンちゃんがもう食べちゃったよ?それが上等だってこと?」


「ん?あれはおやつだろ?」


「はあっ??おやつ!!?」

 するとコンちゃんはクラウディアに微笑み


「上等な貢物はそこの赤い髪の娘だ」

 と言う。


「えっ!?私がっっ!?」

 クラウディアも訳が解らない状況に唖然とした。俺はジロリとヒロインを睨んだ。


「どういうことかね。レーナ嬢?」


「だってさぁ…本来ならあたしに来るイベントだったんだよ。全部クラウディア様が持っていくもんこれ。ヒロイン取られたからあたしには用なくなったんだろね」

 聞いてねえんだが!?だからヤンデレもクラウディアに夢中だったの!?


「ともかくその貢物の娘と共に一夜を過ごせば我から宝珠が出来上がろう!」


「はぁっ!?」

 コンちゃんが信じられないことを言った。


「言ってなかったけど…本来こいつはめちゃめちゃ女遊びが好きな最低野郎だ。神獣とか見た目とかはイケメンだが頭の中は98%くらいエロいことしか考えてない。ヒロインにもちょっかいかけるが何とかメインの王子のお前が助けてやるんだよ。そういう話だったな。つまりこれからクラウディア様の前に現れるイケメンは全部お前のライバルになりうるよ。神獣だろうが何だろうが関係ない」

 おまっ…


「そういうことは早く言わんかい!!」

 しかも一夜ってなんだよ!?どういうことだよ!!訳がわからないよ!!?


「コンチャーン様…あの…一晩一緒にいるだけですか?」


「そうだ…朝までお前と共にベッドで過ごすんだ」


「おい殴らせろ!あいつを殴らせろ!神獣でも俺は殴る!」

 と俺が言うがレーナが必死に言う。


「アホか!あんなのでも神獣だぞ!?お前なんかすぐ殺される!」

 でもダメだから!例え神獣でもクラウディアと一夜とか何ふざけたことを言ってるんだ!


「コンチャーン様…申し訳ありませんが私、ジークヴァルト様と結婚してないうちから他の方と過ごすことなどできませんわ」

 とクラウディアはあっさりコンちゃんを振った。


「ほう…あの王子がお前の相手だと申すか……ふうん…あの王子…昔別の魂が入っていたな…今は違うようだが…」

 と俺を見た。こいつ…俺が転生したことに気付いたのか!流石神獣!


「ふうむ…大変に惜しいな…だが我もしばらく女と遊んでいなかったしこの機会に街に降り娼館で遊ぶか!その後なら宝珠も出よう」

 全員固まった。

 神獣が娼館で遊ぶってどういうことだよ!!

 そして宝珠どっから出るんだよ!!こいつから宝珠もらうの気持ち悪くなってきた!!神獣のくせに汚れてる!!


「言っただろ…あいつの頭の中はエロいことで一杯だって」


「ちなみにお前はどうなんだ?一応イケメンじゃないかコンちゃん」


「アホか!イケメンでも神獣でも奴は人ですらないし金もねぇ!つまりホームレスだ!そんなののとこにいけるわけねぇだろ??いくらイケメンでもダンボール生活は絶対に嫌だ!」

 ………銭ゲバヒロインはただのイケメンでも金がないと靡かない。家持ってないと論外だそうだ。


「それでは人型は少々疲れるし街に着くまで私は眠ろう…娼館に着いたら服と金を用意しておけよ?」

 言うだけ言ってこのエロ狐はまた綿毛に戻り俺の頭にモフッと乗った。

 このエロ狐ええええ!!服と金と女を用意しろとかほんと腹立つな!殴りたい。さっきクラウディアの胸に引っ付いてたし殴りたい。


 だが宝珠の為に俺は我慢した。

 折角満月の日だしさっさと山を降りてユリウスくんとローゼちゃんを途中でレーナ嬢宅に預け(流石に子供に娼館は見せられん!)休まず街へ行き適当に服と金を与えて娼館にコンちゃんを放り投げておいた。


 クラウディアと王都のタウンハウスで待っていると妙に艶艶したコンちゃんが真夜中に帰って来た。

 俺とクラウディアは眠い目でなんか気持ち悪い湿った宝珠を受け取った。


「うむ…いい満月だな…」

 うるせええええええ!!

 いい顔で言ってんじゃねぇよ!!


「で…この宝珠どうすればいいんだ?また祈るのか?」


「そうだとりあえず1時間な。その湿りが取れる頃が丁度1時間だ。10くらいレベルは上がるはずだ」


「また1時間かよ!!何でもっと早く帰ってこなかった!!」

 もう祈りの途中で寝そうだろうがっ!!


「だって……久しぶりだったから…」

 うるせええええ!恍惚な表情してんじゃねぇ!!もうこいつブン殴りたい!!

 さっさと山へ帰って欲しい!!そしてこいつからの宝珠は二度と受け取らんと俺は決めて祈り出した。

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