第18話 奇跡の王子は妹バカです

「クラウディア!!」

トントンと部屋を叩くとメイドが扉を開ける。


「あれ?お兄様!」


「エリーゼ!お前も来てたのか」

エリーゼも可愛い俺似の髪を振り


「お姉様とお茶をしてたの!美味しいクッキーを隣国の王子に貰ったから」


「な、何?うちの可愛いエリーゼちゃんに手を出すのはどこのバカ王子だ!まだエリーゼちゃんは嫁にやらんからなぁ!!」

とバカ兄貴ぶりが発揮される。


「お兄様も人のこと言えませんけど…ってそれは何ですの?」

とエリーゼがクラウディア人形に気付いた。


「まぁ!これは!」

クラウディアも驚いて見ている。


「お姉様だ。小ちゃいお姉様!!可愛いー!!」

エリーゼが感嘆している。


「この人形の髪の毛は私の??それによくこんな人形を…どこの職人に作らせたのですか?」


「え?俺が作ったんだけど…」

と言うと2人とも目を丸くした。


「これを…お兄様が…」

「ジークヴァルト様が!!」

おいおい!やっぱり引かれたか!?フェリクス話が違うし!!


「ごめんなさい…気持ち悪い?」


「なんて精巧な!!ビスクドールより小さく愛らしい!!」

そりゃフィギュアですからな。


「絵具しか無かったから職人に頼んだらなんかもっと良くなりそうだけど…そうしたら鮮血姫の人形として売り出せるかも!!」


「お兄様凄いですわ!!これは!売れますわ!!」

エリーゼも興奮した!


「職人に話して私の髪を提供すれば量産できるかもしれませんわね…」

クラウディアもふーむとうなづく。


「そうだ!お兄様!!エリーゼの髪切っていいから!お兄様のお人形も作ってこれと飾ろうよ!!」


「ええっ!!?俺の人形ーーっ!?自分で作るのなんか嫌だわ!クラウディアのだけは楽しかったけど!」


「ならお兄様のは職人に頼みましょう!このお姉様人形を見本に作って貰いましょう!!」

おいおいままごとにも使うっての?

しかもフィギュアだし。髪は本物だけど。


「どうせお姉様のお人形を売り出すなら【魔物避け人形】とかお守りの意味合いを込めるといいかも。うちの国の特産にしてもよし」

いつの間にかユリウスが部屋に入ってきて提案した。


「んん…んー…、そうか…俺が湖に入った時魔物の血は浄化したよな?ならこの人形にも祈りを捧げたら少しは本当に浄化作用があるんじゃないか?」

と俺が言うとユリウスが


「何の話ですか?兄上…?浄化?それは伝承の奇跡の力のことですか?」

あ、しまった。ユリウスくんにはまだ話してなかったよ!


ユリウスくんに事情を話すといつものクールな彼は珍しく興奮した。


「そうですか!!兄上が!!体型が豚から美形になったのも奇跡だったんですね!?」


「いやそれ違う。それ完全に俺の努力です」


「あ、そうなんだ…。でも!凄いや兄上!!奇跡の力を宿されるなんて!!この国は安泰ですね!奇跡の力を持つ王族が現れた時代はこの国が繁栄するって言われてますし!」


「…うーん、でもな、俺の奇跡レベルまだまだ低いからさあ、悪いけどこのことはまだ内密にしといてくんない?もうちょっとレベル上がってからにしたいよ。まだかすり傷とか何か肩凝りとか腰痛とか?そういうのしか治せないみたいだし…」

と言うとクラウディアもユリウスもあんぐりした。


「女神様が次のお力を授けていただいたのですね?凄いですわジークヴァルト様!肩凝りと腰痛まで治せるとは!!」

ええーっ!それショボくね?

でもよく考えたらこの世界にはマッサージ機もなかったな…。


「とりあえず祈ったら魔物避け効果つくのか今度女神に聞いとくわ」


「随分女神様に軽口なんだね兄上…」


「えっ!?いや…まぁ夢ん中で何度か会ってるし…なんかほら親戚のおばちゃんみたいな感じだよ…」


「「し…親戚のおばちゃん……」」

クラウディアとユリウスは目が点になった。


「兄上記憶失ってから変わられたけど…この国は女神ザスキア様の加護があるから生きてるんだよ?だから敬わなきゃダメだよ?」


「え…あ、はい…」

なんか弟に説教されたわ。


「力が使えるのは次の満月でしたわね、満月もまたあの森に新しい力を求めに行かれます?」


「うん、まぁ…祈らないとレベル上がんないしなぁ…でもまたクラウディアに力を使わせるのか…」


「兄上…満月は逆に魔物の出現が弱まるはずだよ?新月は沢山出てくるらしいけど」


「へえ…そうなのか!」


「ええ、満月でしたら私一人でも護衛は可能でしてよ?強い魔物…ダモンも出るわけありませんわ」


「いやいや!いるよ!流石に!!」

と俺は無謀な婚約者に釘を刺す。

そこでザクリと髪を切る音がして皆振り返るとエリーゼが髪を切っていた!!


「エリーゼ!!何やってんだ!!」


「あっ!エリーゼ怪我したな!!」

切る時にナイフで傷つけたみたいだ!

俺はエリーゼが泣き出したので慌てて駆け寄って血の滲んだ指先に手をかざし

【痛いの痛いの飛んでけ…!!】

と叫んだらまた身体が白く光り、エリーゼの指の傷が塞がった!


「凄いや…本当に奇跡の力だ…兄上疑ってすみません」

疑ってたんかい!!お前っ信じてるフリして疑ってたんかい!!


「お兄様…ありがとう…お人形さん作ってお姉様の人形と並べたかったの…」

ぐすんとエリーゼが言う。


「わかったよ…エリーゼ…俺の人形もすぐ作るから泣くんじゃないよ?…そしてこのクッキーの送り主の隣の王子と仲良くするのは早いから一定の距離間をとるんだぞ?」


「妹バカですか!」


「いやユリウス…お前の妹でもあるだろ?妹が隣の王子にこんな早くから目をつけられてみろよ!」


「くっ…それは確かに!僕としても妹に相応しい男と幸せになってほしいです!」


「だろぉ!?」

それを見ていたクラウディアは半目で


「どっちも妹バカですわね…」

と呟いた。

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