第2話

お母さんと離れてからまたしばらくたって、私は気がついたら「ゆき」って呼ばれるようになった。同じ家に住むお友達もできた。もこちゃんっていうオレンジ色の女の子。お耳が垂れてて女の子らしいかわいい感じの子。最近はよくもこちゃんといっしょに遊んだりお話したりして過ごしているの。できれば寝る時も一緒にぬくぬくして眠りたいんだけどそれぞれケージに入れられちゃうからできないの。近頃はちょっと納得できないことでも仕方ないか、言う事聞かないといけないんだなって思うようになってきて、お母さんとお兄ちゃんの言っていた「人間のため」っていうことがほんの少しだけ理解できるようになってきた。


本当は出された分だけじゃなくておなかいっぱいになるまで美味しいご飯を食べたいしお外の原っぱでぴょんぴょん飛び跳ねて遊んでみたい。このあいだもこちゃんにこんなことを話してみたら、ゆきちゃんがいい子にしてたら将来できるかもねってなぐさめっぽいこと言われちゃった。


もこちゃんはゆきより2歳上の子だから色んなこと知ってる。この家がどういう場所なのかもなんのためにゆきたちがここで暮らしてるのかも、お世話してくれる人間たちのこともぜーんぶ教えてくれたの。


ゆきちゃんここはね、ちょっと嫌な言い方をしたらね、人間のために子供を産むための場所なの。私たちはこれからたくさんの赤ちゃんを産んで生まれた赤ちゃんたちはお金で売られて行くんだよ。


悲しみとか憎しみとか諦めとか色んな気持ちが混ざった顔でもこちゃんはおしえてくれた。もこちゃんはもう赤ちゃんを産んだことがあるけどみんな連れてかれちゃったんだって。だからきっともう少ししたらゆきちゃんも赤ちゃんを産むことになると思うけどきっとみんな連れてかれちゃうって覚悟しておくんだよ、ともおしえくれた。



「ゆき、こっちにおいで」

お世話係の人間に呼ばれて行くと知らない子が一緒にいた。この人がゆきの旦那さんなのかな?

仲良くするのよ、人間はそれだけ言って遠巻きにゆきたちを見てる。いきなりけんかしたりしたいように見張ってるのかな?知らない子にいきなりケンカしかけたりしないのにね。


初めまして、僕、れおっていいます。

初めまして、ゆきです。


お互いにお互いがどう言う関係にこれからなるのか分かっているからか若干きまづい空気が流れてる。ゆきはこれからこのひととの赤ちゃんを産むのかぁ。ゆきもれおくんも赤ちゃんを作るために今ここで生きてるんだから仕方ないね。


れおくんとの出会いからまた少ししてゆきは4つ子の赤ちゃんを産んだの。みんなかわいいゆきの赤ちゃん。。出産の直前までものすごくいらいらしててとにかく無事に赤ちゃんが生まれてきてくれることしか考えられなかったけど、いざ産まれてくるとかわいくて頑張ってよかったなぁって心から思ったんだよ。

もうすこししたらみんな連れていかれちゃうからそれまでの間たくさんかわいがってあげたい。

できるだけ小さい時から売った方が飼い主が見付かりやすいんだって。小さい時からお母さんと引き離すなんて人間って残酷だよね。

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