こちら、アンチリア充委員会、カップル課です。

白楼 遵

第1話 死の境界で

「ほら、あったかいから。手、入れろよ」

「やだ~!もうトシったら~!」

(あーはいはい。朝からお盛んなこって。・・・リア充爆発しろ)

11月。今年も例年通り寒くなり、やる気、元気、全てが凍てつくような季節がやって来た。そして毎年恒例のカップルのポケット手つなぎが始まる季節だ。

(ったく、帰りにやれよ・・・。ああ朝から気分が最悪だ・・・)

俺 ― 相模さがみ そう ― は、とにかくリア充が嫌いだ。そしてその中でもカップルが嫌い。道を塞ぐ、細い路地では壁となり、イベントが来るたびにここぞとばかりにイチャつき、騒ぎ倒す。

ハロウィンとか意味分かった上で騒いでんのかあいつらは!

(ああ、もう一限は寝よう。あんなもん見せつけられたらやる気も失せる)

そう考えた途端、先ほどのカップルが工事現場の壁に当たる。

「いて!・・・この壁邪魔だな!」

男の方は壁を蹴りだし、女の方は「カッコイ~」なんていって調子に乗らせる。

(まったく、器物損害だと思うんだがっ!?」

いつの間にか声が・・・ってか頭いて・・・

当たったのは工事に使われる鉄骨。蹴った衝撃で落ちてきたのか?

(・・・なんで俺、カップルのせいでこんな目に・・・)

意識は、そこで途切れた。




「うう・・・?え、ここ、どこだ?」

目を開けると、そこはなんにもない空間。かろうじて廊下?のような物が認識できる。とりあえず、その通りに歩く。

「やっと来た。随分と遅いじゃない」

「・・・誰?」

長い黒髪、赤い瞳。セーラー服に身を包んだ俺と同年代くらいの女。なお胸はかなりの大きさ。

「あたしはアンチカップルの女神、アンナ。あなたに、ちょっとした事を頼みたいの」

「・・・何?」

「ほんっとぶっきらぼうね!ちゃんと文で話しなさい!・・・あなたは今、死にかけてるの。」

「は!?俺が!?」

「ええ。あの鉄骨、当たり所が悪くてね。・・・そこで提案よ」

「・・・手短に頼む。」

「ええ。あなたには、二つの選択肢があります。一つ目はこのまま死んで、もう一度ゼロから始める。そして二つ目は、このまま現世に戻り、あたしに協力する」

「協力?何をするんだ?」

「あなたにあたしの力の一端{破局能力}と「破局七つ道具」を与えるわ。それを使って、目に入ったカップル、あたしが依頼した人物を破局させる。どっちが」

「二つ目だ。」

是非もない。こんな好機チャンス、使わない手はない!

「分かったわ。なら現世へ戻りなさい。あなたが目覚めるまでの間に力の譲渡は済ませておくわ。・・・出口はあっちよ」

「ああ。・・・よろしくな、相棒」




「・・・ああ」

「爽!?大丈夫!?体に異常はない!?」

「母さん、心配しすぎだよ。俺なら大丈夫だからさ」

ちゃんと帰ってこれたらしい。ただ、力がちゃんと使えるかが心配だ。

「もう俺は学校に行くよ。なんともないしね。」

「え!?・・・気をつけてね。お医者さんには私から言っておくから」

「ああ」

さあ、手始めはどのカップルにしようかな?

そう思うと、自然と笑っていた。

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