◆第3話 なんで香南ちゃんはあの人達と一緒にいるのでしょうか?
本鈴が鳴り、陸、アンパン、桃子は自分たちの席に戻っていく。
ホームルームのために教室に入ってきた担任を見やりながら香南は深くため息をついた。
また面倒くさいことになってしまったなと。テーマパークなんて、はっきりいって自分のガラじゃないと思う。どうしても嫌だったら断ればいいものを。
桃子にセクハラまがいの方法で迫られたといえ、結局は了承してしまった。
あんなに人がいっぱいいるところにいる自分を想像するとうんざりしてしまう。
例えるなら自分は色彩鮮やかな風景の中に一滴ぽたりと落した灰色の染みのようなものだ。
決して混ざり合うことはなくいびつに浮き上る。
香南はいつだって一人でいることを望んでいる。それは生まれた時から今日までずっと漠然とあった思い。宿命にも似た感覚。
なぜなのかはわからず説明のつかない思いなので自分は孤独を好む人間なのだと考えるようにしていた。
ただ救いがあるとすれば、一人であることをこれまで寂しいと思ったことは一度もないということだ。
香南とは違い仲間がほしいくせに、孤独な人間はさぞ辛いことだろうと思う。
そんな一人きりで過ごすことが好きな香南が自分以外の他人と交流、しかもテーマパーク。
最近の自分はどうしてしまったんだろうと、つくづく思う。
これまでも四人でボーリングやカラオケ、映画、ショッピング、一緒にご飯を食べに行ったりした。
そうやって彼らに振り回されて、自分でも気がつかないうちに何らかの影響を受けてしまったんだろうか。
一人でいることは香南にとって当たり前、スタンダード、自然なことだった。
それなのに時が経過した今では三人の人間達に囲まれて日々を送っている。
幼き頃から一緒にいる陸だけでも奇蹟に近いことなのに、高校生になってからは更に二人。自分が望んだわけでもないに、どうしてこんなことになっているのか香南は不思議でならなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます