~じゃない、という時はだいたいそれ
今まで、記事のネタにしやすそうなのに不思議と扱わなかったもので、少年革命家と呼ばれているらしい「ゆたぼん」に関わるニュースがある。
彼は今までいろんなことでネット記事にされてきたが、筆者にはさして興味もなかった。どうでもよかった。学校行けよとは思ったが、支持している人はその人の判断において好きなんだろうから放っておけばいいし、そりゃ言動はツッコミどころ満載だが子どもだし。目くじら立てて批判するエネルギーももったいない。
どうも彼の父親がブレーンのようだが、話に聞く限りゆたぼんの良きマネージャーとは言えない。親子だが、二人の子どもに見えてしまう。
さて。最近の彼に関する情報で、クラファンでお金を集めて、全国を旅してまわるという企画のことが報じられた。最初、思うようにお金が集まらず「頼むからカネをくれ」的なアピールを連発していた。それもどうかと思ったが、結果として目標額は集まり、彼は出発した。その出発も、ずいぶんとのんびりしたものだったように思うが。その際、三百万近くする車を購入し(当然移動にフェリー代やガソリン代がかかってくる)あとあとで「カネが足りん! みんな投げ銭してくれ!」と訴える事態になっている。
不登校児を元気付けるという趣旨だったと思うが、肝心のそういう動画よりも遊んでいる場面(観光)のほうが多くアップされている。そこを突っ込まれると「実際はそういう活動をしているが、交流を動画として公表しないでくれという希望も多いのでそう見えるだけだ」という釈明をしている。
筆者は、ここまでのことだけならそりゃダメダメではあるが記事にはしなかっただろう。ゆたぼん(とその後ろにいる父)がどんなヘマをしようが、私が日々論じているような物事の本質を考える話には素材としてかすってもこないからだ。
でも、カネが足りなくなって追加の投げ銭を訴えるゆたぼんが口にした「物乞いじゃない」という言葉で、長らく扱ってこなかった彼の話題を記事にする気になった。筆者は彼についての他のどんなこともどうでもいいが、この言葉だけは引っ掛かった。この言葉で思ったのは、ゆたぼんが見た目ほど(動画で受ける印象ほど)強くもないということだ。
革命家と呼ばせたいらしいが、強くない革命家などお笑いだ。
●~じゃない、という言葉を言い訳に添える者は、たいていの場合そうであることを暴露しているものだ。
「物乞いじゃない」と彼は言う。
だが、そういう言葉が出てくる以上、彼の頭の中で一度は「自分のしていること=物乞い」と結びついたということである。で、そのすぐ次の瞬間にイヤな気分になる。で、オレは……じゃないんだ! という思考が湧いてくる。これは自己防衛本能。実は本当はそうなんだけど、認めたくないのだ。
自分には「世界に(教育界に)革命を起こす」という大義があるので、その大義をいらんことで邪魔されたくない。だから、「……じゃない」という言葉で予防線を張ることで、眼をそらさせるのだ。好意的なファンなら、彼が「違うんだ」と言えば「そうなのか」と思ってくれるだろうし。
筆者からすると、誤解されそうな内容に関して「~じゃない」という言葉で予防線を張ってくるような場合、十中八九「まさにそれ」だと思っている。
たとえば、無名だったが短期でものすごい数の登録者数を得たある人気ブロガーが、「登録者数~万人突破!」という報告記事の中で言っていた。
「うれしいですね。でも、大事なのは数字じゃないっすよ」
私はひねくれ者なので、彼のこの言葉を文字通りには受け取らなかった。
●ホンネでは数字が大事だと思っている。
でも、世間的に好印象を与えるのは「数字の実績を上げても、それを鼻にかけない(大事なのは数字じゃない)演出」である。そのような言葉を添えることで、謙虚で懐の深い印象を与えることができ、ファンも増える。
皆さんも覚えておくがいい。他人が自分の立場を守るために「~じゃないんだ」という言葉を使う時、たいていは「まさにそれだが、そう思われたくない」から必死で言ってるだけだということを。
本人の心の中で一度結びついたものを、「いやそれはちとマズい」という防衛本能から「それとは違うのだ」という言い訳をこさえているだけだ。
自身の投げ銭要求に関し「別に物乞いじゃない」と言ったゆたぼんは、ただ自分でも一度頭の中で「物乞い」と結びついた自らの行動を、「そう思われたら不利」と危機感を感じたからこその言い訳をしたに過ぎない。本当の強者は、そういう否定形を使った余分な言い訳をしない。する必要がないからだ。
結論。ゆたぼんのしていることは「物乞い」である。
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