希望のあとの希望
自分で思うが、筆者が今後大きく売れたりメジャーになったりすることはないだろう。
引き寄せ好きな人なら「あなたがまず意識そう思っているのだから、その通りの現実になるのは当たり前だ!」と言ってくるかもしれないが、そんな助言はいらない。そんなことくらい織り込み済みでものを言っている。
たとえばあなたは日常生活の中で、何にしょっちゅうお世話になっているか?
思い出せば、一日のうちコンビニに何度も入っている人もいるかもしれない。
いや、それは長期的に高くつく。そう思って、できるだけスーパーで買い物をするようにしている人もいるだろう。テレビも毎日見ることを思えば、TV局や出演している芸能人などにはお世話になっている。ちょっとした休憩や勉強ごとに、スタバやマックを多用している人もいるかもしれない。
でも、例えば葬儀屋とか。
水道の修理とか。
そういうのは、人生でかなりまれにしか縁がないのではないか?
人によっては、平和な人生だったら「探偵業」や「弁護士」などとかかわる機会はそうないだろう。警察だったら、善人でも免許の切り替えや拾った財布を届けるなどでどうしても関わることになるが。(笑)
田口ランディの小説で「コンセント」という作品がある。
作中に、自殺して発見が遅れたために腐敗した死体を処理したり、汚れた部屋に特殊な清掃を施する「消毒業者」というのが登場する。
そのプロフェッショナルな人物は、ハエや蛆虫などに微塵も動揺せず、粛々とその部屋を「また人が住める」ように修復していく。それも、人によっては生きているうちに関わることのない人もいるだろう。
筆者のやっていることは、そういう「人によっては関わることのない」活動だと思う。どういう人が私を要らないかというと、『希望に生きている人』である。やりようによって、なんだって実現できるという人である。
そういう人に、私は害にしかならないだろう。意識によって、意図的に人生を変革できるという可能性を否定しているから。そうなるのなら、そのこと自体がシナリオとして決まっていた、という身もふたもない話だから。
希望をもって生きようというメッセージを発信することは、ほとんどの人がよいことだと確信してやっている一大マーケティング市場である。そこに焦点を合わせない宗教・スピリチュアル・自己啓発は干される。
希望を持ちたがっている人に希望を与えないと、お金にならない。世のニーズに応えていかないと、サービス業は立ち行かない。
そういう意味合いで、この本書や筆者の動画配信メッセージは「人々の第一義的な希望を奪っている」。そりゃ人気も出ない。
じゃあ、筆者の主張である「起きることはすべて決まっている」にはまったく希望がないか? いいや、ある。
やればできると極限までやって、結果傷付きどん底まで落ち込んだ人。
一旦は、「どんなに頑張ったってできないことがある」と暗澹たる気分になる。
でも、その事実を受け入れ、我力で「すべてを何とかする」という姿勢を手放せた時、そこに「やればできる」と思っていた時に持っていた希望とは違う、新しい「希望」が芽生えることに気付ける。
それこそが、『第二の希望』と呼ばれるものである。
●やればできる、あきらめなければ必ず希望はある(逆に失敗するなら自分の頑張りがたりなかったのだ)と思っている段階が『第一の希望』。
その努力をし尽し、それでもうまくいかないことがあると認めた時。ただのあきらめではなく、受容した時。
その先にうまれる静かな希望が、『第二の希望』。
第一の希望を赤い炎だとすると、第二の希望はガスの火に近いような青白い炎。
見た目に熱そうなのは赤だが、実は青い炎のほうがはるかに高温なのだ。
だから、今の世界はまだまだ赤い炎の人が多く、青い炎を分かるのは少数派だ。
筆者がたいして儲からないのは、そういう事情による。(もちろん、私がキライな人はいくらでもバリエーション豊かに欠点を挙げつらうことができるだろうが)
私は、今の世ではまだまだ必要な人が少ないメッセージを発している。でも、逆に言えば数は少ないが必要としている人はいる。
だから、大ヒットではなくとも本はそこそこ程度売れ、本書や動画配信のアクセスも少なくともゼロではない。なんとかかんとか他者と双方向性のあるやりとりができている。
これからも、人気は気にせずにこの発信を続けていく。
腐乱死体処理業者のように、筆者を必要とする人はたとえ少なくとも——
その人たちのために、私はこの道で生きていく。
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