あずさの日記
しもうさ
私だけのネバーランド
あんまりにも秋晴れが素晴らしすぎるから、かえって憎々しい気分だわ。
窓の外を眺めつつ私は内心毒づいた。
机の上には勉強道具はおろか消しカスひとつなく、つけっぱなしの動画から延々とどうでもいい戯言が垂れ流されている。
半年前の私なら、「受験勉強!ラストスパート頑張るぞ!」と今頃意気揚々と勉強に励んでいたのだろうが、今の私にはそんな気力や体力なんててんでない。
最早大学受験なんて、どうでもいい。
どうでもいいのだが。
(私、何やってんだろ)
それでも、ふとした時に不安が脳裏を掠めていく。
そのあまりの不快感に顔を顰めつつ、モゾモゾと布団の中でころりと丸まる。
お布団の中は暖かい。
冷え込んできたこの頃にはうってつけのアイテムである。
『ねえ』
しかしそうしていると、どこからともなく声が聞こえてくるのだ。
『いつまでこうしているつもり?』
やめて。今はなんにも考えたくないの。
『家で寝てばかりなんて、恥ずかしいと思わない?』
やめて。そんなこと聞かないで。
『逃げてばっかりでみっともない』
やめて。あなたには関係ないでしょ。
『ねえ』
やめて。
『貴方は』
やめて、
『なんで生きてるの?』
「やめて!!!」
声を掻き消すように飛び起きる。
当たり前だが何もいない。誰もいない。
何の変哲もない、ただの私の部屋である。
そんなことはわかっている。
分かりきっている。
じゃああの声は誰の?
わかってる。
私の声だ。
はあ、と深いため息をつく。
(薬飲んじゃおっか)
枕元に置いてある睡眠薬を手に取り1錠水もなく飲み込む。
せっかく休んでいるのに、他ならぬ自分のせいで眠れないんじゃ話にならない。
ここはちゃんと寝て、気持ちをリセットしよう。
再度布団に潜り、目を瞑る。
程なく睡魔が私を夢の世界へと誘いに訪れる。
夢。
そこは、今唯一私が心安らげる場所。
私の居場所。
誰にも奪われない、私だけの、大切な宝物。
今はもうない、私の安寧。
私はそれを渇望するが故に夢の中へと堕ちていく。
大事なものを再び手に入れるために。
ぽっかり空いた胸の穴を埋めるために。
落ちて
墜ちて
堕ちて
どこまでも堕ちて嵌って沈んでいって、
そして私は、今日も
あずさの日記 しもうさ @Shimousa-15
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