「秋山が立たされた理由」欄のある学級日誌 27冊目💍

如月 仁成

予告編 サガギクのせい


 ~ 十一月二十四日(日) 二メートル ~


 サガギクの花言葉 僅かな愛



 なんでちゅうしたのですか?


 わかんない。うれしかったの。


 しらないのですか? ちゅうしたら、こどもができちゃうのです。


 そうなの? なまえきめなきゃいけないの。


 うん、きめましょう。どうやってきめるのでしょう。


 すきなものとか?


 じゃあおれ、カボチャがはいってるのがいいのです。


 うん、いいの。


 ほっちゃんのすきなものもいれなきゃ。


 うーん……。じゃあ、どて。


 なんで?


 すべれるのがたのしいの。


 おれもたのしいのでそれにしましょう。


 あと、けっこんしきなの。


 どうやるのでしょう? スカートをこどもがもちあげてるのしかしらない。


 ぱんつみえちゃうの。


 だって、もちあげてたのです。


 じゃあ、ママのかっこいいぱんつにするの。あかいやつ。


 はけるの?


 かたんとこではけるの。


 ではそれがいいのです。ほかには?


 あれ。ぷろぽーずしないといけないの。


 いやなのですはずかしいから。べつのてだてをかんがえましょう。


 ないの? ぷろぽーず。


 うーん……。あ! いいのがあったのです!


 ぷろぽーずのかわりになる?


 はい。たぶんへいきなのです。げたばこにいれておくのです。


 ぷろぽーずを?


 かきかたはだれかにきいときますので。ほかにはなにがいるのでしょう?


 あとはね、しんきょがいるの。


 しんきょって、おたかいものだっておかあちゃんがいってました。


 へいき。うちのとなりのいえでいいの。


 おれのおうち?


 はんたいがわ。


 あそこ、いぬがいるからこわいのです。おれのおうちのおとなりがいいのです。


 あ! きれいなの。バラがさいてて。


 じゃあ、そうしましょう。おうちにかえるのもかんたんだし。


 ゆうがたまでいても、ごはんにまにあうの。


 ほかには?


 えっと、いってらっしゃいするんだから、おしごとするの。


 おしごと、いやなのです。あそんでたいのです。


 だって、いってらっしゃいできなくなっちゃうの。


 はたらいたらまけだとおもっているのです。


 じゃあ、あたしがおしごとする?


 いいの?


 だって、みちーさくんがいやならしょうがないの。


 なにやさんやるの?


 よるのまちにたってるとおかねもらえるってテレビでいってたの。


 たってるだけで? おれ、まいにちたたされてるのにおかねもらえないよ?


 あ! ゆびわがいるの。


 それしってます。さんかげつおしごとするともらえるやつ。


 そうなの? じゃあ、みちーさくん、さんかげつたってる?


 おによめなのです。


 でもそんなにまてないから、あたしがもってるのでいいの。


 もってるんだ。


 あ。


 どうしました?


 ゆびわ、どうしよう。なくしちゃったの。


 たいへんなのです。


 たいへん?


 おかあちゃん、ばれたらしかられるからないしょだっていってました。


 しかられるの、いやなの。どうしよう。


 なかないでほしいのです。おれもいっしょにさがしますから。




 ――男の子と女の子。

 無くした指輪を探すため。

 部屋をあちこちひっくり返し。


 そのうち楽しい散らかし遊びは。

 かくれんぼからおにごっこ。


 男の子と女の子。

 はてさてなにをしていたんだっけ?


 すぐに思いださないと。

 いそいで思い出さないと。


 ずっと忘れてしまいます。

 十年先まで忘れます。


 今はたったの二メートル。

 すぐそばにあるというのに。


 急がないと、指輪はどんどん。

 遠くへ行ってしまうのです。


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