Fairy tale

司馬楽 みちなり

第1話 プロローグ

 ユラユラと、揺蕩う淡い光に、夕日の色が混じりだす。


 影が射したのか、不意に光が遮られたというのに、それを不快に感じる事もなく、寧ろ暖かく感じてしまうのは何故なのか。


 ブラブラと、ベランダの柵から出した脚を揺らしながら、少し遠くに見えている動く赤い光を眺めていると、声が聞こえてくる。


『ご飯だよ』


 ニコニコと、何時も話しかけてくれるあの人と、手を繋いでいるのが好きだった。


 もう繋ぐことの無い手の感触を求めて、光に手を伸ばしながら歩いていたら、いつの間にか明るい場所に立っていた。

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