開始早々にエンドコンテンツを獲得してしまった生産プレイヤーはそれでもゲームを続ける

第123話 集中力が切れると別のことをしてしまう

「ふんっ！！」

　レストは低い姿勢で駆け抜け、手に持ったピッケルを掲げると同時に全力で振り下ろす。

　ピッケルから伝わる筈の衝撃がないことを攻撃と同時に理解し、ピッケルから手を離して後方へ跳び離脱する。

「ンゴ！」

　その直後、ソルトマンが腕をレストに向け、近接攻撃が出来ない所まで退避したレストに岩塩を放射。

　腹部に食らい、後方へ少し吹き飛ばされながらも体勢を保ったレストが腹を押さえながら顔を歪めせて言う。

「くっ、もう対応してきたか」

　爆撃後の銅球を除いた近接でナイフと斧に続いて三度目のピッケルの攻撃でも、ダメージを与えられなかった。

　砂のような塩の体で打撃、刺突、斬撃をものともせず、胴体に突き刺さった武器を抜こうとすれば、必ず攻撃してくる。

　あまつさえ、武器を放置して離脱する攻撃方法ですら、すぐに対処されて攻撃を食らった。

　チラッと空を見上げたレストは【宝物庫】から試作用の剣を取り出し、投げて牽制する。

「やっぱり、ゲームで良くある物理攻撃が効かないタイプか。なら、」

　【曲芸術】と【投擲術】のお陰で、刃の部分が上手く刺さったが、ソルトマンは滑るように変則的な移動してレストへ迫る。

　相手の動きを止める為に、表示した状態で待機させていた操作画面を移動しながら操作し、召喚した丸太20本をソルトマンに落とす。

　それを為したレストは、ソルトマンが丸太の隙間から出てきた瞬間叫ぶ。

「ンゴゴゴ…」

「今だテンリ！！」

「ガァァア！！」

　分かっていると言いたげに吼えたテンリは、風魔法【ウィンドボール】で風球を放つ。

「防御力が高いと見るか、それとも風属性と相性が悪いと見るべきか」

　ソルトマンの一部が吹き飛ばされた後、鑑定で結果を確認したが僅かなダメージだけ。

「こういう敵は大抵倒す為のギミックがあったよね。確か…セオリーなら何処かに核があるはず！」

　レストは銅球を取り出すと、丸太の隙間から現れたソルトマンを掠めるように投げ、一部の塩を散らせる。

「テンリ！！魔法で原型も無くなるぐらい攻撃して、塩を吹き飛ばして！フタバは回復魔法を頂戴！」

「あい！」

「フタバはテンリの支援を頼む！」

　透明な草を体に纏ったレストは、他の丸太に比べたら細めのを持つと、「おりゃあ！！」とフルスイングしてソルトマンの頭部を吹き飛ばす。

　さらに、振り切った状態でたたら踏んだ後、攻撃する暇もないぐらい何度も振って叩き飛ばした。

　丸太の上に出ている塩が無くなった直後、背後から音が聞こえると同時にレストの体を掴まれ、驚きのあまり丸太を手離した。

「ンゴゴゴォ！！」

「なっ！？うぐっ！！」

　体が塩に包まれていると認識した瞬間、レストは投げられ、叩きつけられた地面を転がる。

　ソルトマンが片腕をテンリに向け、岩塩を放つ。

「【挑発】【ショートカット】」

　負ったダメージを数秒毎に回復するフタバの魔法で直ぐに回復したレストは、時間稼ぎと自身を標的にさせる為、ソルトマンを爆散させた。

「そう言えば、爆発で全て吹き飛ばしているのにダメージ無かったな…と言うことは核じゃないってことか」

　レストは核が別の場所にある可能性も浮かんだが、探しても見つかるか分からないと判断して、攻略法を考える。

「他の方法は……塩って素材よね？」

　四方八方に散った塩を笑顔で集めるレストを、テンリは風魔法を一番大きな塊に当てながら呆れた様子で見ていた。

　素材集め病に掛かっていても流石のレストも、大量に集めたら爆散させた意味がないとことを理解している為、ポーション用のガラス瓶に入れる。

「生存したモンスターの体だし無理だよね。動く塩、コレクションにしたかったな…」

　残念ながらオブスキュアソルトマン入りポーション瓶は【宝物庫】に入れることが出来ず、インベントリにも入れることが出来なかった。

　それを残念そうにポケットへしまったレストは、爆裂玉でソルトマンが体を再構成させないようにさせて、考える時間を稼ぐ。

　途中で攻撃してきた普通のモンスターを迎撃したお陰で、忘れていたあれの存在を思い出した。

「【天魔波旬】」

　唯一効くであろう魔法攻撃は出来なくても、属性攻撃が可能なスキルの存在を。

「【ショートカット】」

　爆撃のダメージを食らわなくても、魔属性付与による魔属性の追加ダメージで、与えたダメージが7割に到達した。

「思ったよりダメージは入らないけど、魔法より効率良く攻撃は出来そう」

　攻略法さえ分かれば、相手に攻撃されないよう倒すには、自身と相性が良いことに気付いてほくそ笑むレスト。

　邪魔な丸太を一瞬で片付けて、近接攻撃に利用した武器を拾い、戦う場所を整える。

　レストは何となく、体の周りにある黒い粒子を集め、最後に拾った斧を黒き衣で持つと唐突に閃く。

「面白いこと思いついた…せっかくだし、纏わせてやったらもっと面白いかも。…っとその前に【ショートカット】」

　大きくなった塩の塊を再び爆散し、どうせならっと思って取り出した剣に、アリスの【退魔之剣】みたいに黒い粒子を纏わせる。

「できた…」

　アリスの方は聖なる光を放つ光剣とは対称的な、闇の力が溢れるみたいな黒剣が完成する。

　手元のそれをジーっと見つめたレストはぼやきながら、黒い手に持ち替えた。

「妙に悪役テイストだけど…まぁいいか。これを…」

　再び集まっている塩の塊に目を向けたレストが、黒き衣で武器を持って攻撃した。

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実はレストと相性が悪いボスモンスター。

でも、有効となる攻撃方法が魔属性付与だけなので、レストも相性が悪い。

そんな状況下と戦闘疲れで、集中力が切れてきたレストさんの回でした。