第111話 違いと成長
レストがフタバとテンリのレベリングを開始した後、様々な問題が発生した。
爆弾の爆発距離やモンスターによっては一撃で倒せる問題、木が邪魔になって爆裂玉を落としても攻撃が届かない問題、フタバが寝るとテンリが普通に戦い始めた問題、テンリが無茶な戦いを続ける問題、擬態していたトレントに捕まったテンリの救出問題。
その都度、レストは試した時と同じように砂浜まで連れてきて倒したり、モンスターの数を減らしたり、ライフポーションを掛けたり、伐採して倒したりして解決した。
もちろん合間合間の素材回収も忘れずにである。
だが、レストではテンリの暴走を止められず。
眠りから起きたフタバが頬を膨らませて怒ると、テンリの暴走が止めた。
そんな、思った通りにことが進まない経験を積み、不甲斐なさを噛み締めて、ゲーム内で夕刻の時間帯になった頃。
「フタバ」
「あぅ?」
テントと焚き火がある砂浜で、夜も近いのでレストとフタバが一緒に釣り釣りをしながら休息を取っていると。
【天魔波旬】を発動させ、コンパクトチェアに座っているレストが、膝に乗せているフタバへ聞く。
「次釣れたら釣り止めるけど良い?」
「あぃ?」
「また、すぐにやるから」
楽しそうな表情を浮かべるフタバの頭を撫で苦笑したレストは、メジナを釣った後、細長い木と糸と針だけのシンプルな釣竿を横に起き、フタバのステータスを開いた。
その直後、レストはフタバに気づかれないようため息を吐いて、心の中でぼやく。
(分かっていたけど、レベル7になっても筋力上がってないか…)
実はレストが仲良くなって間もないのに、フタバとテンリのレベリングを強行したのには理由がある。
それが、自分では殆ど動けないフタバのレベルを上げて、歩き回れるようにしたいと言ったものだ。
レストはステータス見て装備で能力値を上げる方法に気づき、「自力で歩くフタバちゃんが見たいから」と苦し紛れの言い訳した後。
フタバのステータスを開いた本来の目的である項目を見た。
「これが
従魔と使い魔の違いは様々な所に存在する。
それが最も謙虚に現れ、使い魔の方が人気がある要因のレベルアップした時のスキル獲得の仕組みだ。
両方ともレベルアップ時の能力値は自動で上がるのは同じ仕様だけど、従魔はスキルも自動獲得で、使い魔はスキルツリーの中から任意で決めることができる。
つまり、状況に応じて召喚する個体を変え、スキルも状況に合わせたものに出来る強みを持つのが使い魔だ。
だが、その欠点として従魔は装備が可能で食事も含めた回復アイテムが使えるけど、使い魔は装備(フタバ以外)も回復アイテムも使用不可能である。
ちなみにレストが従魔を選んだ理由は、従魔に装備や回復アイテムが使用可能という点と、β版時代にプレイヤーホームで一緒に過ごせるのが従魔だけだったから従魔を選んだ。
今はプレイヤーホームに使い魔も遊びに来るようになっているけど。
自分のスキル獲得画面を表示させる時のように、フタバのスキルの部分を押すと現れるスキルツリーに、レストは頬がピクピクと痙攣する。
『スキル(+6)』
【精霊魔法Ⅰ】
>【MP回復速度上昇Ⅰ(未)】
>【プラントバインドⅠ(未)】
【草の加護】
>【草属性強化Ⅰ(未)】
>【草属性耐性Ⅰ(未)】
【共存共栄】
>【自然の息吹】
>【開墾Ⅰ(未)】
>【畝立てⅠ(未)】
【指揮統率】
>【仲間強化Ⅰ(未)】
【現身】
(未)と表示されているスキルは灰色で、それ以外の獲得しているスキルは黒色で表記されている。
フタバのスキルツリーを見たレストは、やっぱり戦闘に向いてないと納得し、どのスキルを獲得するか考え始めた。
すると、フタバが服を引っ張って自己主張してくる。
「あぅ~」
「……見たい?」
「あい!」
それにどうして欲しいのか気がついたレストはフタバを抱え、スキルが見える高さに固定した。
ついでとばかりに、ジーと見ているフタバに冗談混じりで聞く。
「なんか気になるスキルでもあった?」
「あい!」
その返答に嬉しそうな声で頷いたフタバは、とある場所を指した。
「【仲間強化】?」
「あい!!」
「……よし、獲得するか。スキル説明はっと」
レストはまだまだスキルポイントがあるし、と考えて獲得することに決める。
だが、レストの知識に【仲間強化】がなかったので、どんな効果を持つか確認して、思わず反射的にフタバを見た。
【仲間強化Ⅰ】
同じ主を持つ仲が良い自分以外の従魔、使い魔の全能力値を1上昇する。
フタバが示したスキルは、その場に存在するだけで使い魔だけでなく、従魔も全能力値を上げるスキルだった。
「こ、これが従魔3体分の力…」
侮っていたレストは激しく動揺した様子でスキル獲得して、再び戻ったスキル獲得画面に目頭を押さえる。
「これ、本来プレイヤーが持つスキルなんだけど…」
「あぅ…あい!」
左腕で抱えられるフタバは頭を傾けた後、再び小さな人差し指で示した。
そこには【仲間強化Ⅰ】を獲得したことでスキルツリーが変化し、【指揮術】を持つ者のみ習得できるスキルが表示されていた。
【指揮統率】
>【仲間強化Ⅰ】
>【アタックコマンドⅠ(未)】
>【スタミナコマンドⅠ(未)】
>【マジックコマンドⅠ(未)】
>【タフネスコマンドⅠ(未)】
>【アクセルコマンドⅠ(未)】
>【センサーコマンドⅠ(未)】
それぞれ上から、従魔と使い魔に対して筋力、体力、魔力、耐久、敏捷、器用を一時的に上昇させる効果を持つスキルだ。
このことからレストは、
「フタバちゃん、これ完全に。戦闘するタイプじゃなくて、戦闘させるタイプじゃん」
「あぅ?」
フタバが従魔と使い魔限定を強化することに特化したバッファーだと気づいた。
それでフタバのステータスを一度、獲得できるスキルと見比べて、レストはさらに思い至る。
「そういうことか…。【指揮統率】と【共存共栄】は幾つかのスキルが複合したスキルで、【指揮統率】が従魔と使い魔に関するスキル。そして、【共存共栄】は【栽培】と【育樹】を合わせた、植物を育てるスキル…の可能性が高いな。【開墾】と【畝立て】を見た限り。フタバでこれなら従魔5体分のテンリって、どうなるんだ…。それにレベル26~30だったけど、それなりの数を狩ったはずなのにレベルの上がり幅が低い。つまり、使い魔3体分の経験値ということかな?…いや、従魔と使い魔を持った者のデメリットの、経験値が四分の一が原因…か。あっ、減った経験値が分散して、さらに必要とする経験値が「あぅ~」多、く…」
レストがフタバの考察にブツブツと言いながら没頭していると、服を引っ張る感覚と子供特有の高い声が聞こえた。
それにゆっくりと視線を下げ、こちらを見上げるフタバと視線が合う。
レストは少し恥ずかしそうに頬を掻いた後、もう一度聞いた。
「なんか気になるスキルある?」
「あい!」
「これと…」
「あい!」
「これと?」
「う~」
「これじゃないなら、【精霊魔法Ⅱ】?」
「あぃ!」
「……もしかして、次はこれ?」
「あい!!」
レストはフタバが気になるスキルを片っ端から獲得していくと、あることに気がつく。
そして、思わず目を見張るレスト。
スキルを選び終わると、フタバが大きな欠伸をして、目を擦る。
「ありがとなフタバ。おやすみ」
「ぁぃ…」
レストはお礼を言いながら、フタバに布地を掛けて連れていき、テントの中の布団が敷かれたテンリの横にそっと置いた。
この後、次の夜まで頑張ったお陰で、
「あぃ!あぃ!あぃ!」
「おめでとうフタバちゃ~ん!」
フタバはハイハイが出来るようになり、
「グヴゥゥ…」
「おぉ、お、おめでとう?テンリ」
テンリは大きくなった。
『ステータス』
名前:フタバ
種族:ドライアド
レベル:14
アビリティ
HP:25/15(+10) MP:375/375
筋力:1 体力:1
魔力:21 耐久:1
敏捷:1 器用:9
スキル
【共存共栄】【指揮統率】【現身】【草の加護】【精霊魔法Ⅱ】【自然の息吹】【仲間強化Ⅱ】【タフネスコマンドⅠ】【アクセルコマンドⅠ】【プラントヒールⅠ】【MP回復速度上昇Ⅰ】【アタックコマンドⅠ】【スタミナコマンドⅠ】【マジックコマンドⅠ】【センサーコマンドⅠ】【開墾Ⅰ】【畝立てⅠ】
装備
頭:【空欄】
体:【空欄】
両手:【空欄】
足:【空欄】
靴:【空欄】
装飾:【火避けの指輪付きレザーネックレス】
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