第16話 暴獣戦②

 レストは新たな爆裂玉を手に持ち、赤色のエフェクトを纏ったマッドネスベアを警戒する。


「…えっ」


 しかし、マッドネスベアが取る行動は違った。

 攻撃してくると思ったレストが、気の抜けた声を漏らすぐらい。

 マッドネスベアは今までより速くへ移動した。

 そして、木へタックルして折り始めたのだ。


「いったい何を…」


 月光で照らされているとはいえ、レストがいる位置からではマッドネスベアが何をしているか見えず。

 ここで攻撃をする発想が出なかったレストは、マッドネスベアの行く末を見守る。

 一方、マッドネスベアはより高くなった筋力でどんどん木を折って行き、ある程度折ると一本の折った木を担ぐ。


「それで叩きつけるとか」


 レストは木が折られたことで、マッドネスベアが見えるようになり、その木を振り回し攻撃をしてくると予想し、動けるように構えた。


「グァア!!」


 またしても、マッドネスベアは予想と違う行動を取る。


「……マジか!!」


 レストはマッドネスベアの行動に思考停止し、戻りしだい全力で走った。

 どうにか回避できたレストは見る。

 先程自分がいた位置に縦回転で飛んできて木が地面へ刺さったのを。


「普通投げてくる!!」


 マッドネスベアが取った行動は、レストも言ったように持った木を投げてきたのだ。


「何であんな投げ方でここまで届くの!!」


 マッドネスベアの投げ方は両手で持った木を頭の上で構え、雄叫びを上げながら投げるというものだ。

 それも結構な精度で飛んでくる。

 木を横へ走って回避しつつ、地面に突き刺さらず別の場所へ飛んでいくのを見ながら、


「そんなもの投げるのは危な過ぎ!!」


 と爆発物を投げるレストが言った。

 それからレストは木を投げ続けられ全回避し、マッドネスベアがちょうど20本目の時。


「ハンマー投げって…」


 マッドネスベアは木を持ったまま回転し始め、ハンマー投げ選手が感心するような動きでレストの方へ木を放った。


「それぐらい避け…普通に投げれるんかい!!」


 ハンマー投げの放物線を描くように飛んでくる木。

 レストがそれに視線を外してマッドネスベアを見ると、で掴み木が投げてくる所だった。

 両手持ちで頭上から投げなくても、片手で投げれる事実にツッコミしながら、レストは全力で走り抜く。


「うぉりゃぁぁあ!!」


 マッドネスベアがハンマー投げした木はミスリードで、普通に投げられた木は最速の投擲速度で木がダーツのように5本飛んでくる。

 レストは雄叫びを上げながら、最後の1本を回避した。


「終わった…えっまだ続くの」


 マッドネスベアは再び木を倒し、2セット目の投擲が始まる。

 レストは同じパターンの攻撃だったので途中から新たな試みをして、


「よっしゃ!!全部当たったぁー!!」


 5セット目には投擲された木を投擲した爆裂玉で相殺できるようになり、満面の笑みで万歳した。

 マッドネスベアは相殺され、6セット目を行わず折った木を掴みレストの方へ移動する。


「グゥァア」


 唸り声を上げながら、疲弊していた様子のマッドネスベアは30メートルまで仁王立ちで近づく。

 そして、両手に掴んだ木をレストに投擲と同時に大きく口を開け息を《異物》ごと吸い込み、


「このときを待ってた」


 2度の爆発が起こる。

 投げられた2本の木とマッドネスベアの口内で。


 これはレストが生産する時並みの集中力を発揮させ、前もって練習投擲された木を投擲した爆裂玉で当てるして、この時がゾーンやトランスのような精神状態だったことで出来た絶技。


 投げる直前の口を大きく開けた瞬間、既に無表情のレストは動き始めていた。

 左側から右腕を振り払うように動かし、マッドネスベアが直線上に伸びた右手の指から挟んでいた3つの爆裂玉を飛ばすという投擲方法を。


 高い敏捷で高速に飛ばされた爆裂玉はそれぞれの場所へ進み。

 薬指と小指に挟まれていた右側の爆裂玉は投擲されるであろう右の木へ。

 中指と薬指に挟まれていた真ん中の爆裂玉はマッドネスベアの顔の方へ。

 人差し指と中指に挟まれていた左側の爆裂玉は投擲されるであろう左の木へ。


 まず、第1の爆発は左右の爆裂玉で起こった。

 左右に飛ぶ爆裂玉は真ん中に比べると、マッドネスベアへ直線上の真ん中の方が進み、左右の木の方は遅れ、ぶつかる直前の20メートル付近で前後は大きな差となって現れる。

 さらに、左右の差も進めば進むほど大きくなる。

 結果、真ん中の爆裂玉を爆発させずに木だけの爆発に成功させた。


 第2の爆発は真ん中の爆裂玉で起こる。

 真っ直ぐの爆裂玉は途中で、第1の爆発の風圧が爆裂玉に衝撃を与えないぐらいの推進力となり加速。

 マッドネスベアの咆哮するための吸い込みで爆裂玉は口の中へ入る。

 結果、加速した爆裂玉は吸引力でより強化されて喉へ当たり爆発した。


 こうして2度の爆発が起こった。


「グゥァ」


 爆発でHPが無くなった仁王立ちのマッドネスベアは地響きと共に倒れる。


「……勝った」


 そして、マッドネスベアは光の粒子になり、この戦いは幕を下ろした。

 ふぅーと息を吐いたレストの勝利という形で。

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