開始早々にエンドコンテンツを獲得してしまった生産プレイヤーはそれでもゲームを続ける
繊月庵
第1話 プロローグ
現在8月1日、朝の9時55分。
「準備完了!!」
新品のVR用ゴーグルを付けた
8月1日10時00分から正式サービスが開始するVRMMORPG『Fantasy in miniature garden online』。
通称“FMG”や“箱庭”と呼ばれ、数あるVRMMORPGの中でも、βテストの段階で高いクオリティを誇ったゲーム。
スマホや携帯用ゲームぐらいしかやったことがなかった誠人だが、友人から薦められ見たβテストの配信動画で、その魅力にとりつかれて一時ネットサーフィン状態だった。
「でも、ラッキーだったな」
前代未聞の完成度から動画配信やメディアで取り上げられ、数多の人が予約した結果。
発売半年前の段階で予約数が予想生産量を越して、予約者から抽選で決まるとなったゲーム。
サービス開始時からプレイできる権利得る第1世代と呼ばれ、平等に抽選で誠人は超倍率の中で見事に当選した。
当たった誠人は当選日から1週間は黒歴史レベルで、人生の中で一番と呼べるほど浮かれた。
その結果、ゲームのために高校入学してから絶対補習を受けないよう真面目に勉強し、異例の夏休み課題を7月中に終わらせる。
更に、勉強嫌いのぐーたらだった誠人が早起き、早朝の勉強とトレーニングする。
両親と友人たちから心配されるほど、誠人は生活習慣や生活態度が変わった。
「あっ、連絡しとこ」
浮かれていた誠人は、このVRゲームを薦めてくれた友人の
『お先に失礼』
『すぐに追い付いてやる』
祐介は同い年の小学生からの友人で、VRゲームに関しては先輩。
誠人より2週間後から第2世代として始める。
メッセージのやり取りで、開始直前まで初心者の誠人へ祐介のアドバイスが届く。
最後に、祐介から『行ってこい』とのメッセージが届き、誠人は『さらば』と返信した後FMGを起動させた。
◯
「こんな感じかな?」
白い地面に等間隔の黒線が引かれた仮想空間で、天井も壁は真っ白な場所。
中心に人の姿が存在し、周囲に黄色に光る球体がうろうろしている。
光球の姿の誠人は、空中に浮かぶパネルを操作しながらアバターを作った。
FMGでは人族やエルフ族など多くの種族が存在し、作成するアバターにはそれぞれ特徴が出てくる。
そんな中で誠人が選んだ種族は、尖った耳と子供姿のハーフリング。
設定できる最大の身長130センチと決め、紺色の髪と黒紫色の瞳を持つ男型のアバターを作った。
「完了っと」
『アバター設定が終わりました。次にステータス設定を行います。赤色の指定された場所を決めてください』
「名前は…レストかな」
誠人はアナウンス通りに進め、赤く点滅する名前の所に設定する。
レストは誠人がゲームの時に使う名前で、無関の無から~ないの意味を持つ“less”と、誠人の最後の文字を合わせて作ったのが“レスト”。
レストを“rest”と書くと、意味がひと時の休みともなるので、誠人が気に入っている名前だ。
「入力完了。情報通りハーフリングはHPが低くて器用と敏捷が初期から高いか」
FMGのはRPGによくあるジョブは無いがスキルやステータスは存在し、種族によって設定できる姿、初期の能力値、獲得できるスキルに影響がある。
例えば、人族だと一般的な姿にHPとMP以外の能力値が均一な初期値を持ち、得意不得意のスキルが存在しない。エルフ族だと長い尖った耳で、MPや知力が他より高く、スキルは魔法が得意で重量級武器の扱いが苦手など、βテスト段階で色々検証されてきた。
勿論、誠人は前もって集めたから情報から種族をハーフリングだと選んでいる。
「スキルは3つま…5つも選べる!!」
βテスト版では初期に選べるスキルは3つまでだったが、製品版は5つまで選べるようになっていた。
これは製作会社がサプライズで実装したもので、もし姿があったら誠人は嬉しそうに笑っているだろう。
他にもあるか調べた結果、初期から選べるスキルと、能力値を上げるAPが0から2ポイント増えていた。
誠人はAPは後でも振れると書かれてたのでせずに、始める前から決めていたスキルを選び、残りのスキルは悩んだ末に勘で決めた。
「これに決定!!」
【採集】
見える範囲で素材の入手可能な場所が分かる。
【調合Ⅰ】
薬品を作れる。
【使役術Ⅰ】
従魔を1匹連れて行動できる。
【投擲術】
投擲行動に補正。
【隠密】
モンスターに気づかれにくくなる。
上三つがもともと手に入れるつもりだったスキルで、下二つが新たに選んだスキルだ。
ちなみに、選べるスキルはハーフリングが得意とする育成系、生産系、斥候系のスキルだったりする。
「最終確認完了っと。いざ、ゲームスタート!!」
『チュートリアルを行いますか』
「……チュートリアルがあるの忘れてた。イエスっと」
誠人は高ぶった感情を抑え、チュートリアルでステータスの見方、スキルの使い方などを教わった。
『これでチュートリアルを終わります。ようこそFMGの世界へ』
その言葉を最後に視界が真っ白に染まり、次の瞬間にはFMGの舞台へ到着した。
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1時間毎に5話まで投稿します。
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