84%のアンケート

ぺんぎん

第1話

 84%のアンケートに何の意味があるのか。

 子どもながらに、そう思った。


 授業の最中、私達はアンケートを記入した。

 学校生活を普段どう思っているのか、「はい」と「いいえ」で答えるアンケート。


「学校生活は楽しいですか?」


 私はいいえと答えた。

 名前は無記名でいい、そんなアンケートだったから。

 素直に答えていた。


「なんで『いいえ』に丸をしたの?」


 数日後、先生に呼び出された。

 氏名が無記名でも、席順で誰が書いたか分かるらしい。

 責めるような言い草で、先生は私に問い質した。


 理由はない。

 ただ、学校生活が楽しくなくて、つまらなかった。

 だから、いいえに丸をした。


 だけど、それを伝えれば、先生はため息を吐きながら、

 私の目の前で、私のいいえを消しゴムで消していく。


「理由もないのに、いいえなんて書いたら駄目じゃない」


 そんな指導を受けながら、私は私の「いいえ」が消され、

 先生の手で「はい」にされていく様を呆然と見つめていた。


 後日、生徒総会でアンケートの集計結果が発表された。


 84%。

 84%の生徒が学校生活が楽しいと答えていた。

 その中に私も含まれていた。


 意味ないな、このアンケート。

 冷めた眼差しで、見つめていた。


 「いいえ」と書けば、指導を受け、「はい」にされていく。

 先生たちの自己満足を満たし、体裁を取り繕うためなら、

 いっそこそこそ指導なんかせずに、

 授業中に、堂々と言えばいい。


 学校生活が楽しいとだけ書け。

 素晴らしいと記入しろ。

 はいしか許さない。


 そうやって従わせればいい。

 保護者にも説明すればいい。

 それが正しいと思うなら、できる筈だ。


 意味ないな、このアンケート。


 84%のアンケートを見つめながら、私は思った。

 このアンケート、実際どれだけの生徒が『本当に』楽しいと感じて、

 「はい」と答えているのだろうか。


 以来、私はアンケートを記入しろと言われたら、

 はいしか書かなかった。

 めんどくさい。


 適当に丸をした。


 それでも、

 無性に、アンケートを破り捨てたくなってしまうのは、

 きっと気のせいじゃない。


 そう思った。

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84%のアンケート ぺんぎん @penguins_going_home

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