ep18.『しつこい』
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尚、兵士がいるのでもっとたくさんいるけれど。
豊臣秀吉はなんでこんな愚行をしてしまったのか。その時の心情を窺ってみたい。
さて、こんなことはどうでもいい。これらの侵略は全て2回している。
理由は個人的な意見だけれども、言わせてもらうと落としやすいからだ。
1回目侵略して相手は疲弊する。その隙に2回目の侵略をすれば攻められた側は療法してないわけだから1回目より落としやすいわけだ。
だから彼女も二度目の攻めをしてきたのだろう。
♦︎
「今日もこんにちは。先輩!私が誰かわかりますか?」
「…」
「ちょっと、無視はひどくないですか?」
「…」
「いやですから、無視はちょっと悲しいんですけど」
「…」
「泣きますよ!?いいんですね!?泣きますからね!?」
「…」
「いいですよ!泣きますよ!泣けばいいんでしょう!うぅ、うぅ」
「…」
隣で、うるさいのはきっと微生物か何かだろう。いや、アメーバだ。
こんなに煩くて新種の微生物に近いストーカはアメーバだ。証明完了。
本気で隣で泣いているけれど、それでも無視。これで痛い目を今朝見たからだ。
今日は、4月12日水曜日。入学式から2日目。彼女の二度目の昼休み侵略だ。
「女の子が泣いてるのに、ここまで無視を続ける人はじめて会いました…」
「…」
「私何かしましたか?もしかして、先輩迷惑ですか?」
「とても迷惑している。よくわかったね。ご褒美に俺離れるね」
と言った途端!キンキラキンに目が輝いたように見えた。そのようなエフェクトを持ってる時点でアメーバ確定ですね。
「先輩!私今すごく嬉しいです!なんでですか?証明してください!」
「まず、材料が足りない。仮定も立てられないんだけど?何が等しいの?ねえ」
「それじゃ私の心境を語ります!頑張って証明してください!」
「いや、いい」
何が合同なのか。そもそも分野が国語。人の心理を証明しろだ?ノーベル賞取ってくださいと言ってるようなものだ。
「ところで今日、放課後付き合ってくれますよね?」
「…」
「付き合ってくれますよね?」
「…」
やはり無視が一番いいと思う。さて、ここで今の話に入る。現在、昼休みだ。
校舎の中をほっつき歩いている最中で理由は後ろのアメーバを撒くため。
「おい。アメーバ。俺は喉が渇いた。俺の教室に行って水筒を取ってきてくれたら放課後付き合うか考えてあげなくもない」
「わかりました!今すぐ行きます!」
そう言って瞬時に姿を消したアメーバをみて、ようやく一息つけた。
腐った人間と言われようがどうでもいい。一刻も早く落ち着くために。
「これだから、人と関わるのは疲れるんだ…」
額や頬が熱く、視界も覚束ない。今日は意図的にではなく症状的に濁っていて泥水をかき混ぜたような色だった。
ステンレス製の壁に手をつきながら歩く姿はさながら病人である。
そうでもしないと、今すぐにでも倒れてしまいそうで儚くも尽力を尽くしていた。
そうしてやっとの思いで着いた場所は、保健室だった。
♦︎
「失礼します。鳳先生、こんにちは…。ベッドで休憩してもいいですか?」
「こんにちは。どうしたの?具合悪いの?顔も真っ赤だし…ちょっと待ってて」
そう言って、体温計を持ってきて「計って」と言われて脇に挟んだ。
「ちょっとごめんね。わっ、あっつい。症状どんな感じ?」
「至っていつも通りです」
「いつも通りにできないから来たんでしょう」
「それは違います。いつも通りにしたくて来たんです」
些細な言葉の間違いでも譲れない。
「なんでこんなになるまで放置してたの?」
「昼休みになったので放置もクソもないです」
「昼休み?」
普通はそんな急に出ない。でも、薬が切れてるのだ。仕方がない。
ピピピピ。と計り終わった音がして出してみると「39.7ー!?」と大きい声で驚いた言葉を出した。
「先生、静かにしてほしいです。頭に響きます」
「ねぇ、これ早退よ。お家の人いる?電話するわね」
「やめてください。家に人なんかいません」
話が通じない人だ。と憤りを感じてその後ろ姿を睨む。
親に、母さんに電話をするのだけは絶対に阻止しなければならない。その一心で。
「でも、その高熱じゃこの後の授業は無理よ。早退」
「それまでには治します」
「治しますって、言って治せたら苦労しないのよ」
そればっかりはその通りと言うしかない。けれど、今の症状が出てる時は大抵落ちつけば治る。だから、早く寝かせてほしい。
「あとで、先生の言うこと聞きますから。なんでもは無理ですけど」
「…はぁ、わかった。けど、下がんなかったら即電話だからね」
「はい。下がらなかったら言う通り帰ります。下がらなかったらですが」
「言っておくけど、絶対に下がらないからね?」
「わかりましたよ。あ、すみません。ひとつだけお願いがあります。誰も僕の近くには寄らせないでください。それだけです」
それだけ言って、フラフラとする足取りでベットに潜り込む。
「それは当たり前。でも、今時、そんな高熱珍しいわね。何か心あたりない?」
「あったとしても、それはとてもプライバシーすぎて話せませんけどね」
「それは心当たりあるってことでいいのかしら?」
「さぁ?さて。僕は寝ます。昼休み終わりの時間は覚えてるので自分で起きます」
そう言って、すぐさま意識を手放そうとした。だけど、ふと思い出したことがあり最後にひとつだけこう言った。
「先生。最後にひとつだけお願いします。チビでうるさい女の子が黒い水筒を届けに来たら預かってください。でも、ここにいることは言わないでください」
「黒い水筒を持った子ね?わかったわ」
これでよし。明らかに疲れが溜まってるのか目を閉じる。
久しぶりに、黒い歪みを覗いた気がした。
そうして、遠い境界線の彼方に意識を手放したのだった。
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