1章 幼少期
第2話
「アラン、起きたの⁉」
あ、らん? 頭がまだぼんやりとする。えっと、何だっけ、自分はどうしたんだっけ。
「アラン、大丈夫?」
女性の声に続いて、女の子の声も聞こえてきた。安心できる声だ。そうだ、この声は。
「おかあ、さま?
おねえさま?」
「ああ、よかったわ。
倒れたなんて聞いたから心配したのよ」
「よかった、アラン!」
ギュッと抱き着いてきたのは姉さま。こうして抱きしめられると安心するなんて、すっかり弱くなってしまったな。
「もうだいじょうぶです」
本当に? と疑いの目で見てくる二人。むしろ、今はそっとしておいてもらえた方がありがたいな、なんて。
「坊ちゃまもそうおっしゃっております。
ここは私どもに任せてください」
そう言ってくれたのは専属の執事であるサイガ。いつも何も言わなくても、そうやってくみ取ってくれるんだ。その言葉に専属の従僕であるアベルもうなずいてくれた。その様子に二人はそれなら、とようやく部屋を出て行ってくれた。
「ありがとう、ふたりとも」
「いえ、お礼には及びません。
……、まだ熱が下がってはいないようですし、どうぞこのままお休みください」
後ほどイシュン様にも診てもらいましょう、というと優しく頭をなでてくれる。重くなってくる瞼には逆らえず、僕はそのまま目を閉じた。
ふと目が覚める。するとすぐ横にイシュン兄さまがいた。きっサイガが呼んでくれたんだろうけれど、なんだか申し訳ないな。
「目が覚めたのか、アラン」
「イシュン兄さま、ごめんなさい」
素直に謝るとなぜか困ったような顔をされてしまった。どうしてだろう。首をかしげていると、頭をなでられてしまった。
「体調が悪くなったら、いつでも呼んでいいんだよ。
倒れたと聞いてどれほど驚いたか。
こんなに高い熱を出して、また無茶をしたのかい?」
倒れた……。そうだ、最近は気候も穏やかだったからお庭で遊んでいたんだ。途中から頭が痛くなって、体が重くなって。でも、遊びたかったから無視していたら……。
「ごめんなさい」
自覚はあるのか、と頭を小突かれる。自覚は、あるはず。でももっと遊びたいのだ。そう、『前』はいくら動いても熱を出すということはなかった、し。
前?
「どうしたんだい?
また熱が上がってきた?」
「あっ、いえ、なんでもないよ」
もやっとする。こう、思い出せそうなのに思いだせないような。うーん。
「やっぱり休んだ方がよさそうだ。
薬持ってきたから、何か軽く食べた後に飲んでね。
決して丈夫なわけではないんだから」
本当は嫌だけれど、うなずかないとまた怒られちゃうよね。しぶしぶうなずくとそれが伝わったのか、疑うような目線をこちらに向けてきたけれどそれ以上は何も言わずイシュア兄さまは去っていった。これは明日また様子を見に来るだろうな。
にがーい薬を飲まされて、またベッドに横になる。もっと遊びたいけれど、起き上がるとすぐにサイガとアベルがやってきて用事があるのか聞いてくるんだ。で、結局ベッドに逆もどり。おとなしく寝てることしかできない。
なら、と布団の中うとうととしながら、先ほど頭に引っかかった『前』について考えよう。そう、確かに元気に走り回っていたはず。うーん……、もう、限界かも。眠い。
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