気付いたら【人魚姫】でした。……あれ?みんなの様子おかしくないですか?

ゆなか

プロローグ……

私は幼い頃から『人魚姫』の物語が嫌いだった。

作者には悪いと思うが……『』。

……私の中で全てはその一言に尽きる。


人間の王子様に恋をした人魚姫。

美しい声と引き換えに手にしたのは……歩く度に激痛を伴う人間の足。

王子から妹の様に可愛がられながらも最後まで恋愛対象にはなれず、王子を助けた自分に成り代わった他の女に王子様を取られてしまった。

王子を殺せば人魚に戻れるのに、王子を愛しているが故にそれも出来ず……泡となって消えた哀れな人魚姫。

永遠に誰の物にもならない様に王子を殺すという選択はせず、自らの命と引き換えに愛する人の幸せを願った人魚姫。



…………私には全く理解が出来ない。


どうして、人魚姫は歩くだけで激痛を感じる足をもらってまで人間になったのに、もっと王子様にアピールをしなかったのだろうか?

側に居られるだけで幸せ?

声が出せなくて、自分の気持ちが伝えられない?

挙句の果てが、泡になって……消える?

泡になって消える運命を選ぶなら、最期に足掻いても良いんじゃないの?

みっともない所は見せたくない?……綺麗に消えたかった?

『一生に一度の恋だから』と覚悟を決めて人間になったんじゃないの?


足掻いて、足掻いて……一生消えない記憶を王子様に植え付けてやれば良かったのに……。

悲劇のヒロインぶりたいだけなら、海の底から出て来るな!


……と、人魚姫に私が身勝手な憤りを感じているのと同様に、王子にも嫌悪感を抱いている。


仮にも自分を助けてくれた相手を間違えるな!……と。

確かに……溺れて、死にかけて意識が朦朧としていたのかもしれないけどさ。

助けてくれた本人を妹の様に扱い……思わせ振りな態度を見せておきながら、自分は他の女と(!?)だなんて最低すぎる。


その他にも……

人魚の寿命は三百年で人間とは相容れない。人間は短い人生を全うすれば天に昇るが……人魚は泡になる。

風の精になってから良い事を三百年すれば天に昇り、次の生を人間として受けられる。

……なんてメチャクチャだ。

そもそも、愛した人がいない世界で人間に生まれ変わる意味って……何?

人間に憧れるのなら、王子様になんてさっさと見切りをつければ良かったのに。


作者自身が叶わぬ片思い中に書いた作品らしいが……端から人魚姫の恋を叶える気のない話なのだ。大人になった私が調べていたら、たまたまこの事を知った。

……解せぬ。


因みに、人魚姫を改変した『リ◯ルマーメイド』は好きだ。

理由は簡単だ。

私はお姫様が悲しむ様なストーリーが許せない!!

みんなに幸せになって欲しいと思う。



……え?

どうして、『実話でもないただの物語なのに熱くなっているんだ』……って?

そんなのは簡単だ。



【人魚姫】に生まれ変わってしまったからだ!!


……どうしてこうなった!?

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