第5話:準備運動
「テイヤァァァッス!!」
まるで巨大なハサミがシャトゥ=ツナーの身体を切り刻むかのように迫りくる左右の大鎌を彼は右手に持つ白銀色の光を放つ
「あんたはん、やりますなあ? ほな、これも切り落としてほしいんやで!?」
創造主:Y.O.N.Nはさも感心したとばかりに喜色を顔に浮かべていた。いくら受肉を果たしたばかりの身で、
創造主:Y.O.N.Nが行った攻撃はもちろん、直径1ミャートル程の太さを持つ破城槌をシャトゥ=ツナーの真正面からぶつけることであった。これをどうにか出来ないような相手なら、殺してしまおうと思っていたのである。
「本当にそれはやめるッス!」
シャトゥ=ツナーはまたもや、自分の腹に目がけてすっ飛んでくるぶっとい破城槌に辟易してしまう。単純なエネルギーの塊を真正面から力任せに繰り出すのは間違ったことではない。だが、それに対処しろと言われて、はいそうですかとも答えにくい。
だが、シャトゥ=ツナーは回避するという選択肢は頭の中には存在しなかった。これをどうにか出来ないようなら、創造主:Y.O.N.Nとまともに戦うことなど出来ようはずがないこともわかっていたからだ。
覚悟を決めたシャトゥ=ツナーの勇気を褒めたたえたのか、彼の胸にある亀裂だらけの獅子の顔がガオオオン!! とたくましく吼える。それと同時にシャトゥ=ツナーの身を包む
その途端、シャトゥ=ツナーの動きが光の速度を超えることになる。シャトゥ=ツナーはその速さを持ってして、真正面から破城槌に
しかし、それでも破城槌の表面に細かい傷がつくのみで、勢いを落とすことは出来なかった。だからこそ、シャトゥ=ツナーは10連撃を10連撃したのである。延べ100連撃が破城槌に叩き込まれる。
だが、100連撃を叩きこんだのに、先ほどよりマシな亀裂を表面に入れれるだけで、破城槌を破壊できない。
「ちっくしょうッス! 俺のありったけの力を持っていけッス!!」
シャトゥ=ツナーは自分の内側から沸き上がる力全てを連撃に乗せていく。彼は連撃に連撃を重ね、ついには10連撃を100連撃したのだ。そう、延べ1000連撃を破城槌に叩き込んだのである。
破城槌はビシビシッ! という音と共にそれ全体に亀裂が走り、ビキビキバッコンーン! という盛大な破砕音を奏で、ついには細切れとなってしまうのであった。
「おっほぅ! すごいんやでっ! あんたはんのアホさ加減には拍手喝采を送らせていただくんやでっ!」
創造主:Y.O.N.Nが宙に浮いたまま、パンパンパーン! と両手を打ち合わせて、シャトゥ=ツナーに拍手を送る。拍手を送られた側のシャトゥ=ツナーは眼や鼻の穴、そして耳の穴から血を流す。それだけではない。口から大量の血反吐を吐き、ついには地面に片膝つく格好となる。
さらには
「おやおや。やっぱり真の勇者じゃなくて、勇者のたまごの殻つきやったか。あんたはん、
「うっさいッス! 鎧はどこかに消えていっちまったけど、盾と剣はまだ残っているッス!」
「まあまあ、そないに気張らんでもええんやで? わいは満足したさかい、キミらにはこれ以上の危害を加える気は、この時点ではないんやで?」
シャトゥ=ツナーがどういうことッスかっ! と問う前に創造主:Y.O.N.Nが動く。彼は宙に浮くのをやめて、2本の足を地面につける。そして、両手を自分の眼の前に持っていき、印字を切り始める。
「リンピョウトウシャ・カイジンレツザイゼンやで!」
創造主:Y.O.N.Nが印字を切りながら、魔術詠唱を
「準備運動は勇者のたまごの殻付きくんのおかげで終わったんやで。というわけで、わいは本番の始祖神:S.N.O.Jとの対戦を楽しんでくるわ。あんたらはそこの紅色の渦に入ってくれれば、地表に戻れるんやで? ほな、さいなら~~~」
創造主:Y.O.N.Nは言いたいことは言ったとばかりに、左手をひらひらと振って、身体全体を蒼色の渦の中にすっぽりと入れてしまうのであった。それと同時に彼がその身から発していた神気もまた、ドーム内から急速に消えていくのであった……。
創造主:Y.O.N.Nがドーム内から去った数分後、完全に危険が去っていたことを認識したナナ=ビュランたちはほっと胸を撫でおろし、安堵することになる。
「創造主:Y.O.N.N、恐ろしい相手だったわね……。まさか、あたしが
ナナ=ビュランにはどうすることも出来なかった。自分の発した力を利用され、シャトゥ=ツナーが死にかけたのだ。どうしても、そのイメージが脳に焼き付き、シャトゥ=ツナーが復活した後も、彼女は満足に彼の援護が出来なかったのである。ナナ=ビュランが創造主:Y.O.N.Nに何かすれば、またしても自分の力を利用されるのでは? という疑念を拭いきれず、彼女は何も出来なかったのだ。
「ごめんね、シャトゥ。あたし、あなたを傷つけるつもりは一切なかったの……」
「気にしなくても良いッス。誰もあいつがあんなことが出来るなんて、頭の片隅にもなかったんッスから。それよりも、ナナはこれからどうするッスか? あいつの後を追うんッスか?」
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