第16話「『中戦車』であるッッ!!」
ボッボッボッボッボッボッボッボッボッボッボ…………。
(ぐ……? 成功した───この感覚は、なんとか重戦車化できた、のか?)
猛烈な吐き気に苛まれながらも、アルガスの意識は徐々に覚醒していった。
その耳に届く重々しいエンジン音に、無事(?)重戦車化できたことを知る。
だけど……。
な、なんか体の感覚が違う様な──────?
「う~~~……せーまーいー!!」
ミィナ?
『どうした、ミィナ?!』
ミィナも無事(?)に搭乗できたようだが、いつもと様子が違う。
喜々としてティーガーの装填手席に座っていたミィナがいつもと違うように戸惑ったように声をあげている。
「あ! アルガスさん?!…………うぅ、なにこれ? 狭いし、油くらいし、狭いし、狭いー!」
狭いらしい……。
うん?
せ、狭い───?
っていうか……あれ?
なんか体が小さいような……??
いや、普段よりデカいけど──────ティーガーってこんなに小さかったっけ?
ボッボッボッボッボッボッボッボ…………。
エ、エンジン音、こんなに軽かったっけ!?
いや、いやいや。おかしいぞ────!!
なんか、おかしいぞ?!
『み、ミィナ? ちょっと、聞くが……?』
「むぅ? う、うん?」
ゴクリ……。
『
「違うよ───」
ち、
ちが───?
「違う──────だ、とぉぉおおおお?!」
「な、なんか、ちっさくて軟らかそうな感じだお?」
ち、
『───ちっさくて、軟らかい?!』
ちっさくて……。
軟らかい……。
え?
そ、それって戦車として──────大丈夫なの、か?
ドックン……。
ドックン……。
妙に鼓動が響く…………。
そして、アルガスの目の間には、茫然とした男爵がいて───。
男爵の軍勢も、勢いよく迫って来たかと思うと、男爵の様子に気付いて、徐々に足を緩め───……ついに進軍停止。
そして、
しーーーーーーーーん。
全員無音。
な、なんだ?! いったい何が起こってる??
『…………そうだ!! ステータスだ!!』
ステータスをみれば、何かわかるはず──。
すぅ、
『──ステータスオープン……!』
ブゥン……。
名 前:アルガス・ハイデマン
職 業:
体 力:1202(- 601)
筋 力: 906(- 453)
防御力:9999(-4999)
魔 力: 38(- 19)
敏 捷: 58(- 29)
抵抗力: 122(- 61)
※ 状態異常:中戦車化
うん???
───じょ、状態、異常………………。
『ちゅ、中……』
──中戦車化ぁぁぁあ?!
なんだそりゃ??
重戦車じゃなくて……中戦車?
うん……──────。
うん、うん。
うんんッ?!
『……テ、ティーガー……じゃ、ない??』
ステータス確認中……………………。
職業「
中、中戦車??
え?
なにこれ?
ち、中戦車って………………。
『……………『中』くらいの───戦車?』
ボッボッボッボッボッボッボッボ……!
……って。
まてまてまてまてまてー-----い!!
『───中戦車ぁぁぁああ?!』
ええええええええええええええええええ?
な、なんなんんんんななななんなな、なんじゃこりゃあああああ?!
中、中?!
重じゃなくて、中───?!
いや、アカンやろ!
アカンて! 中はアカン!!
重!!
重──────!!
だって、俺は元重戦士やで?!
中戦車だと、元、中戦士みたいになっとるやん!
そんな職業ないわ!!
なんやねん、中戦士って?!
全てが中途半端なイメージしかないぞ!?
中くらいの剣に、中くらいの重さの鎧に、中背中肉。
中年で、中堅。中学生の娘がいる。
あかん、あかん!!
アカンて──────!!
「あ、アルガスさん、お、おおおおおお、落ち着いて!? アルガスさんのは、おおおお、おっきいお?!」
ミィナもたいがいテンパってるし。
何が大きいねん?!
口に出して、詳しく説明したらアカンやつとちゃうんか!?
『み、ミィナ! ちょ、ちょっといいから、外に出てみろ!』
「う、うん──────あ、あれれ?」
キューポラの開け方が分からず四苦八苦。
「あ、あああ、開かないおー!!」
びぇぇぇええええん!!
『うるせぇ! 反響するからやめろ!!』
アルガスの中で半べそをかくミィナ。
アルガスにはなんとなく体の構造が変わるので、ミィナを解放してやるが……、泣かんでもええやん?!
『ほら! 早く確認してくれ』
カコンッ!
そして、なんとかキューポラから顔を出した彼女と同時に、自らの体を眺めてみる。
砲塔には、申し訳程度に突き出した主砲が一門。
同軸機関銃はない。
主砲の口径も、かなり小さそうで57mm程度──────しかも短砲身。
足回りは、と言えば。
キャタピラ幅は狭く、超伸地旋回を繰り返せばたちどころに切れてしまいそうだ。
おまけにこの装甲…………。
────え? なにこれ?
う、うっす!?
薄くねぇぇぇえ??
───え?
えええええええええええ?!
これ正面の一番固いとこで25mmくらいしかないんだけど?
防盾で50mm??
いや! まぁ、装甲としてみれば、十分に厚いと言えば厚いけど……。
戦車だぞ? これ、腐ってもぉ!!
「わ、わぁ、凸凹してるぅ」
『ほんとだな……なんか不格好だぞ、これ』
なにこの装甲のブツブツ……。
それは、装甲板を、まるで釘打ちでもしたかのような武骨さだ。
ブツブツの正体はどうやら、『リベット』というものらしい。
「へるぷ」で出てきた。
そのリベット留めされた装甲なのだが、いかにもブサイクで、リベットのそれと合わさって、手作り感を漂わせた。
───そして、砲塔!!
え?…………なにこれ?
は、
え?
なんで砲塔が鉢巻しめてるの??
ええええ?
こ、これは一体───。
ちょ、ちょちょちょ!!
ちょい、待ちぃ!
こ、この戦車はなんなのだ?!
へ、ヘルプ!!
ヘルプぅぅううう!!!
どんなときでも、ヘルプぅぅぅうう!!
職業:
(九七式中戦車 チハ)←「ヘルプ」
ヘルプ、ぽちー
※備考欄※
重量14、3t。
正面装甲25mm。
三菱製150馬力エンジン。
最大速度38km/h
主砲、
九七式五糎七戦車砲を搭載(57mm)
副武装、
九七式車載重機関銃2丁を装備
大日本帝国陸軍の古強者────。
後継の開発が遅れたため、終戦まで前線を支えた………………。
『九七式中戦車───ち、
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