第16話「対人戦闘開始(後編)」
バババッバァァァアアン!!
中空で炸裂した
「ぎゃぁぁぁああ!!」
「うぎゃああああ!!」
「あーあーあーあー!」
一瞬にして全身を穴だらけになった暗殺者達。
直撃したものはボロボロ、掠めただけで大量出血して大怪我ないし、即死。
だが、ティーガー自身もその子弾を受けたというのに、傷一つない。
それどころか、跳ね返った子弾がまた周囲にぶちまけられ、倉庫の中にいたほとんどの者が負傷していた。
「ひぃぃいぃい!! 抜いて、抜いてぇぇえ!」
「いでぇぇえ、うげぇぁぁぁあ!!」
暗殺者ギルドの頭領ですら、「行けぇえ!」の格好のまま、全身穴だらけになって死んでいた。
生き残ったのは僅かばかりの盗賊どもと、そのカシラ──────そして、ギルドマスターだった。
「ひぃぃぃい! ば、ばばば、化け物ぉ……!」
筋骨隆々の偉丈夫───ギルドマスターが、腰を抜かしていた。
『───よぉ。テメェ、見た顔じゃねぇか』
「あ、あああ、アルガスか?! なんで生きてる!? つ、つつつ、使えん暗殺者どもめ!!」
アワアワと腰を抜かしたギルドマスターが、ズリズリと逃げ出そうとする。
だが、それを見逃すアルガスではない!
『ほーう? やっぱり、お前が送り込んだ刺客か……。大方、金の回収を目論んでいたみたいだが。おう、ごら───冒険者ギルドのマスターがこんなことやっていいのか? ああん?』
ごらぁ?!
オラオラ口調で追い詰めていくが、ギルドマスターも諦めの悪い人物だったらしい。
「お、おい! 盗賊ども、さっさとガキを盾にしろ───」
「ふっざけんな! 何人死んだと思ってる! 端た金じゃ割に合わねぇ、このガキは俺達が代官に売り込んでやるぁ」
あっという間に見捨てられるギルドマスター。
そして、盗賊どもは檻ごと担いで逃げ去るところだった。
『お、おい、待てテメェら!!』
すかさず追撃しようとしたアルガスだが、ミィナに命中しそうで銃撃できない。
『くそ!!』
逡巡している隙に連中はスタコラサッサと逃げ出した。
大量の負傷者を放置して……。
「あ、あの野郎ども!! 俺を置き去りにしやがって───!」
『おう、ゴラ! 待てや!!』
ドルドルドルドルドルドル……!
エンジンを猛烈い空ぶかしして、アルガスは怒り心頭!
クソボケのギルドマスターに、ジリジリ迫ると、キャタピラで無残に轢断してやろうとする。
「ま、まっままっま、待てアルガス! お、俺を殺したらお尋ね者だぞッ! 街の代官だって黙ってはおらんぞ」
む……。
ピタリと止まるアルガス。
明らかにギルドマスターの方が犯罪者なのだが、奴の言うことにも一理ある。
こんなやつでも、一応街の名士だ。
そのギルドマスターが口を割ることなく、アルガスの手でブチ殺してしまえば真相の究明には程遠くなり、無残に死んだギルドマスターの死体が残るのみ。
事情が分からないものが見れば、アルガスの非にも見えるかもしれない。
「ぎひひひひ……! そうだ。それでいいんだよ! 代官にゃ高い税金と賄賂を納めてんだ、お前なんか鼻息ひとつで、ポンッだぜ!」
アルガスが動きを止めたことに気を良くしたギルドマスターは、厭らしく笑うと、よっこらせと立ち上がる。
懐から一枚の紙を引っ張り出すと、高々と指し示す。
…………なんだ、ありゃ?
───告、代官府!
アルガス・ハイデマン。この者、勇者殺しの容疑で追跡中。賞金は金貨500枚。生死問わず!───
『なんだそれは? お尋ね者───俺が?』
「そうとも!! これは明日にでも街中に張り出される高札よ! 代官殿に密告して、作ってもらったのさ!」
は?
なんで俺が勇者を殺す? 意味分からん。
っていうか、これ……ジェイスのことを言ってんだよな?
『………………ジェイスなら逃げたぞ? 軍団を放置して、街の反対にな。
「知るか、そんなこと。ひひひ、保険をかけといてよかったぜ───。今頃、セリーナが代官府で準備している頃だ。そのうち、お前を捕縛しようと代官様が動きだすぞ! ついでに、あのガキを手土産にすれば代官様もお喜びに、───って、指ぃぃぃぃいい!!??」
ギャラギャラギャラギャラギャラ!!
───プチッ。
「あーーーーーーーーーーー!!」
なんかムカついたので、キャタピラで足の指を引き潰してやったぜ。
っチ、それにしても街の代官まで抱き込んでやがるとは……。
しかも、ミィナを売るとはな───最初からそれが目当てか。
無駄に政治力のある奴は面倒くさい。
そう言えばここの代官は俗物で、街の民衆からスゲー嫌われていたな。
しかも、ロリコン………………。
軍団が迫っていると聞いても、代官は迎撃に向かうどころか、自分の財産を避難させるのに必死だったとかなんとか……。
ったく、どいつもこいつも腐ってやがる。
───まぁ、いい。
『だったら、代官の前で
足の指を押さえて、ヒーヒー言っているギルドマスターを冷たく見下ろすアルガス。
容赦する気なんて、全く起きない。
ミィナを奪っておいて、そのうえ俺がお尋ね者とはな……。
どうやら街の御代官様も俺と戦争がしたいらしい。
いー度胸だ。
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